2023.09.20

桃好きが惚れぬく、ア・ラ・カンパーニュのガトー・オ・ペッシュ・ソワイユ。

ユーハイム

目次

桃好きが惚れぬく、ア・ラ・カンパーニュのガトー・オ・ペッシュ・ソワイユ。

家族をつないだ桃のショートケーキ

小さくて素敵なお店が並ぶ、神戸・三宮の繁華街。かわいい緑のドアを開けて、ア・ラ・カンパーニュ三宮店店長の本田祥大(よしひろ)さんを訪ねました。本田さんの偏愛スイーツは、ガトー・オ・ペッシュ・ソワイユ。桃のショートケーキです。

「初めて食べた時、オイシイをはるかに超えた衝撃がありました。『何、これ?!!!!!!!』って感じですよ」

ア・ラ・カンパーニュ三宮店店長の本田祥大さん
ア・ラ・カンパーニュ三宮店店長の本田祥大さん
ガトー・オ・ペッシュ・ソワイユ。みずみずしく甘い旬の桃をふんだんに使った、桃のショートケーキ
ガトー・オ・ペッシュ・ソワイユ。みずみずしく甘い旬の桃をふんだんに使った、桃のショートケーキ

入社してちょうど半年経った夏のこと。初めてガトー・オ・ペッシュ・ソワイユを食べたときの印象は、とにかく鮮烈だったといいます。

幼いころから桃が好物で、桃の季節になるのを楽しみにしていた本田さん。「家族にも味わってほしいと思い、このケーキを手に、博多の実家に帰省しました」。その日はふたつ上のお姉さんもそろい、久しぶりの家族の団欒。桃のショートケーキを囲んで、思い出話に花が咲きました。

「子供のころ、近所に桃の木があったよね、と。よく父に肩車してもらって、姉と競うように桃をもいでいた記憶を思い出したんです」

底のキャラメリゼがおいしさのポイント。砂糖を焦がして香ばしさと食感をプラス
底のキャラメリゼがおいしさのポイント。砂糖を焦がして香ばしさと食感をプラス

それは、熊本の阿蘇山近くでの思い出。「そういえば、どうしてあんなに自然豊かな場所に住んでたん?」という本田さんの素朴な問いに、家族が答えてくれました。

幼いころの本田さんが喘息持ちだったので、少しでも空気のいいところへと、大阪から自然豊かな熊本に引っ越すことを選択してくれたこと。偏食で何も食べなくて、心配が尽きない子供だったこと。それなのに、あの桃だけは好んで食べたから、家族みんなの記憶に残っていることーー。

「ぼくは、それまでそんな事情を全然知らなくて。ガトー・オ・ペッシュ・ソワイユが、家族のありがたさを改めて感じさせてくれた瞬間でした」

ありがとうのメッセージを添えて

本田さんがア・ラ・カンパーニュに入社したのは、地元で九州新幹線の鹿児島ルートが全線開業したタイミングでした。

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ア・ラ・カンパーニュは、1991年に神戸で生まれたタルト専門店
ア・ラ・カンパーニュは、1991年に神戸で生まれたタルト専門店

「カフェでゆる~くはたらけたらいいな」という甘い思いを裏切って、駅直結の博多店は大繁盛。ホールでの接客を任されたいた本田さんが、辞めずに続けれられた理由は「タルトがほんとにおいしかったから」。

「とくにスイーツが好きだったわけでもないし、ケーキといっても、それまではひとくくりにしか考えたことがなくて。今でもスーツを着た男性のお客さんからはしょっちゅう『タルトってなんですか』と聞かれますが、ぼくもそんな感じでしたから」

本田さんには「スーツを着た男性のお客さん」との、忘れられない思い出がもうひとつあるといいます。それは、ホールからテイクアウトの担当に変わって、初めて接客したお客さんのこと。

「オススメはなんですか、と聞かれたので、ガトー・オ・ペッシュ・ソワイユをご提案したんです。そうしたら、『プレートもつけてください、結婚記念日なんです』とおっしゃるんです。何かいいメッセージありますか?と相談されても、20代のぼくには、ベタに『結婚記念日おめでとう』くらいしか思いつかなくて……」

いい案が思い浮かばないままケーキをショウケースから出し、ボックスを準備している間、しばらく頭を悩ませていたお客さんが「じゃあ、これでお願いします」と紙に書いて差し出したのは「いつもありがとう」という短いメッセージ。

「ジーンときたんです。お客さんはこういうふうにいろんな思いを込めて、ケーキを買ってくださるんだな、って」
うれしい時だけでなく、悲しい時にも食べたくなる。ケーキが、お客さん一人ひとりの人生に寄り添っていることに気づかせてもらえたという、あたたかいエピソードです。

プレートのオーダーが入ると、チョコペンでメッセージを書く。あの初めての日を思い出しながら、心を込めて
プレートのオーダーが入ると、チョコペンでメッセージを書く。あの初めての日を思い出しながら、心を込めて

主役は目利きが選ぶ旬のフルーツ

ア・ラ・カンパーニュは、旬のフルーツを使用したタルトの専門店。開店前になると、毎朝つくりたての11種のタルトがショーケースにずらりと並ぶ。

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本田さんの偏愛スイーツ、ガトー・オ・ペッシュ・ソワイユと同じ時期には、爽やかな酸味のサワークリーム入りカスタードに旬の桃をふんだんに飾った、タルト・オ・ペッシュ(桃のタルト)も登場します。

「どちらも好きですよ。でも、桃のショートケーキって、実は珍しいんですよね」

桃が繊細で痛みやすいからか、旬の季節が真夏で、一般的にケーキの需要が低いシーズンだからか、そういわれてみると、確かに珍しい。

こちらは、タルト・オ・ペッシュ(桃のタルト)
こちらは、タルト・オ・ペッシュ(桃のタルト)

「工場長に尋ねると、だからこそ、桃そのものの素材の味を引き立てたいと、生クリームとカスタードでできるだけシンプルに考案されたそうです」

ただし、実はひっそりとスポンジの底がキャラメリゼされていて、これがとてもささやかな仕掛けながら、しっかり存在感のあるアクセントになっています。

桃にかぎらず、フルーツは基本的に産地やブランドが「どこの」と決まっているわけではなく、その日、その時期にいちばんおいしいフルーツを見極め、仕入れて使う。それがア・ラ・カンパーニュのケーキづくりの「こだわり」です。

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「もうひとつ、時代を読んで、常に新しいものを生み出そうとしているのが強みなのかな、と思っています。オープンから30年以上。当時からの長いファンもいらっしゃるので、過去のラインナップからの復刻フェアみたいなことも考えているところです」

と本田さん。過去のラインナップは150種類を超え、今もなお、常に月に1~2種類の新作ケーキをつくりつづけているそうです。

「秋になると登場するモンターニュ(栗のタルト)が、今とは違うスタイルだったと聞いていて。ぼくは個人的にそれを食べてみたいと妄想しているところです」

その季節にしか味わえない旬の喜びがいくたびも繰り返し、まるで螺旋状にぐるぐると時代を駆け上りながら、ア・ラ・カンパーニュの未来を描いていくようです。

【神戸スイーツ ノオト/ア・ラ・カンパーニュ】 ア・ラ・カンパーニュは、1991(平成3)年に神戸で生まれたタルト専門店。運営するのは、1984(昭和59)年に輸入雑貨商としてスタートした、ハットトリック。神戸・三宮の高架下に輸入雑貨・古着を扱う店「ハットトリック」をオープンしたのち、1990年代に入ると「シュビドゥビダイニング」や「ザ・ライスガーデン」「柊屋」など飲食事業にも進出。1991年、神戸市北区藤原台にパティスリー「ア・ラ・カンパーニュ」がオープンしました。ア・ラ・カンパーニュとは、フランス語で「田舎風の」という意味。「南フランスの田舎で、お母さんが庭で採れたフルーツを使って素朴で大きなタルトを家族へのおやつとして手作りする風景」が、ブランドの原点となっています。

ア・ラ・カンパーニュ

〈ア・ラ・カンパーニュ〉

ガトー・オ・ペッシュ・ソワイユ 税込918円

販売期間:7月中旬~8月末ごろ(予定)
※仕入れの状況により販売時期が変動する場合がございます。

大丸神戸店 地1階 洋菓子売場

〈ア・ラ・カンパーニュ〉の一部の商品は
大丸松坂屋オンラインストアでもお買い求めいただけます。

※ガトー・オ・ペッシュ・ソワイユは店頭での販売のみ、オンラインストアでのお取り扱いはございません。あしからずご了承くださいませ。

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