2023.04.28

フロインドリーブのミミパイは、ドイツの暮らしの中にあった「平日のおやつ」。

フロインドリーブ

目次

フロインドリーブのミミパイは、ドイツの暮らしの中にあった「平日のおやつ」。

ミミパイは平日のおやつ

大ミミ、小ミミ。おおみみ、こみみ、みみぱい。

おまじないではなく、神戸っ子がこよなく愛する焼き菓子、ミミパイの愛称です。

「ミミパイは昔からドイツにあって、平日のおやつなんですよ」

そう教えてくださるのは、幼少期をドイツで過ごしたヘラ・フロインドリーブ 上原さん。

フロインドリーブ3代目のヘラ・フロインドリーブ 上原さん
フロインドリーブ3代目のヘラ・フロインドリーブ 上原さん

「昔はなんでも平日と休日にわけてたんです」

ドイツには小売店の営業時間について定める法律「開店法」があり、日曜日は休息日としてお店が閉まっているけれど飲食店は営業しているところがあるため、家族でゆっくりお茶や食事に出かける習慣があるのです。

「だから、日曜日になると大人たちはケーキにさらにこってり生クリームをのせたような、とっておきのスイーツを食べるんですよ。だから、素朴なミミパイは平日のおやつなんです。」

日本に置き換えるとハレとケの習慣。ミミパイは、昔ながらの生活に根付いた日常のおやつ。「そうね。日本のお菓子にたとえると、おはぎかしらね」と、ヘラさん。

フロインドリーブのミミパイ。大きさごとに、大ミミ、中ミミ、小ミミの愛称で呼ばれる。
フロインドリーブのミミパイ。大きさごとに、大ミミ、中ミミ、小ミミの愛称で呼ばれる。

「田舎で、贅沢なことはできない暮らしでしたが、わたしも小さいころからよく食べてました」

ドイツ語では「Schweinsöhren」と呼ばれるこのお菓子を、なぜ「ミミ」と名付けたのでしょう。ヘラさんが茶目っ気たっぷりに、ハートの形をクルッと逆さまに持ち変えました。「こう、垂れ下がってね、、、」

「ほら、豚の “耳” の形でしょう?」

フロインドリーブ

神戸っ子が贈りたいお菓子

とくに、ヘラさんのお気に入りは、手のひらサイズの大ミミ。パイ生地がふっくらサックリしていて、軽やかなのにひとつでしっかり食べ応えがあります。

「ミミパイなら、やっぱり大きいのがいいわね」と、愛を語ってくださるヘラさん。壊れやすい繊細さもファンにとっては愛すべきポイント
「ミミパイなら、やっぱり大きいのがいいわね」と、愛を語ってくださるヘラさん。壊れやすい繊細さもファンにとっては愛すべきポイント

「もとは、大と小しかなかったんですよ。でもある時、主人の知り合いの方が、半分くらいのサイズはないのか?といってくださって、それから中ミミもつくるようになったんです。大ミミは、おいしいけど、持ち運ぶときにちょっと壊れやすいのよね」

こうして、神戸っ子にこよなく愛される手土産、大ミミ、中ミミ、小ミミがそろい踏み。同じミミパイでも、サイズによって少しずつ食感が異なり、それぞれに長年のファンがいます。「それぞれ食感が違うのは、父がそういう風にしたみたいね」。

フロインドリーブは、日本にドイツパンの文化を広めたベーカリーでもある
フロインドリーブは、日本にドイツパンの文化を広めたベーカリーでもある

フロインドリーブのお菓子とパンは、今も変わらずひとつひとつが手作り。ショップ&カフェの隣に併設した工場で生産され、毎日できたてがお店に並びます。神戸の手土産としても定評があるミミパイですが、フロインドリーブがいつの時代も愛される理由は、焼き菓子だけではありません。

「まだ各家庭に冷蔵庫がなかった時代は、夏になるとアイスクリームも販売していましたね。いまでも覚えてくださっている方がいらして、あの時は美味しかった、といってくださいます」

また、今のように個人がケーキを食べる文化がない時代は、五十日(ごとび:関西で月々の決済日のこと)やお正月のごあいさつ用にも、ケーキが飛ぶように売れたといいます。

「だから12月はクリスマスのデコレーションケーキだけでなく、大晦日もケーキをつくり続けて、毎年、紅白歌合戦を観る余裕もなくソファで眠ってしまう(笑)。そんな時代でしたね」

まちの人の声と時代のニーズに、フロインドリーブのお菓子がやさしくたのもしく、寄り添ってきたことがわかります。

フロインドリーブ

100年の時の向こうへ

2024年で創業100周年を迎えるフロインドリーブ。ヘラさんも、今年に入って娘の岡崎三葉さんに当主のバトンを渡し、100周年に向けてのさまざまな準備に勤しんでいます。

「親子3代、時代の流れに助けられてきました。お客様のおかげで100周年を迎えられます」

100年の長い歴史の間には、大きな戦争や災害によって失われたものもたくさんありました。

古いアルバムを見せてくださいました。看板には、「ホームメイドキャンディ」「ドイツパン洋菓子」の文字が
古いアルバムを見せてくださいました。
看板には、「ホームメイドキャンディ」「ドイツパン洋菓子」の文字が

「おじいさんとおばあさんのことは、よくわからないんです。戦争で全部焼けてしまいましたから」

ヘラさんの祖父にあたる初代のハインリッヒ・フロインドリーブが、神戸市内に約10店舗のパン・洋菓子店、レストランを展開するまで事業を拡大した矢先、1940年に第2次世界大戦が勃発。神戸大空襲を受けて、市内全体が焼け野原となります。

それでもたくましく製造を再開した初代に呼び戻されるカタチで、ヘラさん一家はドイツから日本に渡ってきました。今とは違い、汽車と客船を乗り継ぐ相当な長旅。

「両親に連れられて日本へ来ることになって、マルセイユ行きの汽車に乗る時に、地元の人たちがないお金をはたいて板チョコを買って持たせてくれました。それがうれしくて、幼いころのお菓子にまつわるいちばんの思い出ですね」

日本にやって来て2代目である父の家業を手伝ううち、毎日お店に赤いバラを持って現れる青年と出会い、結婚。結婚式を挙げた思い出の神戸ユニオン教会が、今のフロインドリーブです。

現在のフロインドリーブは、ヘラさんが結婚式を挙げた思い出の教会
現在のフロインドリーブは、ヘラさんが結婚式を挙げた思い出の教会

「大変だったかって?うーん、どうかしら。わからないわ(笑)」

禍福は糾える縄のごとし。大きな震災の爪痕も世界的パンデミックの不安も、ヘラさんの前では、パーンと弾け飛んで、明るい幸せを招く未来のピースに変わってしまうみたいです。垂れた豚の “耳” のカタチも、クルッと逆さにすれば大きなハートに見えるように。

「みなさんがハート型でかわいいって言ってくださるなら、ハートでもいいのよ!」

フロインドリーブ

【神戸スイーツ ノオト/フロインドリーブ】 1924(大正13)年創業のフロインドリーブは、ドイツ出身のパン職人・ハインリッヒ・フロインドリーブが神戸の中山手にオープンした、ジャーマンベーカリー。1940年頃には、神戸市内に約10店舗のパン・洋菓子店、レストランを展開。現在の店舗は、3代目のヘラ・フロインドリーブ 上原さんが、阪神淡路大震災後の1999(平成11)年に移転。
旧神戸ユニオン協会(1929年、ヴォーリズ建築)を改装、ショップにカフェを併設して、美しい空間の中でおいしいサンドウィッチや洋菓子を味わえるように。神戸のパンとスイーツの文化の歴史を語るうえで欠かせないパン屋さんのひとつであると同時に、日本でドイツパンの文化を広めた歴史あるお店としても知られています。

フロインドリーブ

〈フロインドリーブ〉

大ミミ 税込427円

スイートハートプレーン5枚入 税込1,188円
スイートハートプレーン10枚入 税込2,538円
スイートハートプレーン20枚入 税込4,860円
スイートハートプレーン14枚入 税込3,564円
小ミミ50g(袋)税込594円

大丸神戸店 地1階 洋菓子売場

〈フロインドリーブ〉の一部の商品は
大丸松坂屋オンラインストアでもお買い求めいただけます。

※大ミミのみの販売は店頭のみ、オンラインストアでのお取り扱いはございません。
 あしからずご了承くださいませ。

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