2023.07.20

生まれた時から身近にあった。本髙砂屋のエコルセは「365日毎日食べたい」お菓子

本髙砂屋

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生まれた時から身近にあった。本髙砂屋のエコルセは「365日毎日食べたい」お菓子

365日毎日食べているお菓子

「エコルセは本髙砂屋3代目、つまり、私のおじいさんの代に生まれ、2020年で販売50周年を迎えたお菓子です」

中学生の頃、そのおじいさんが会社の話をしてくれたことで興味を抱き、家業に就く決心をしたという杉田全(あきら)さん。「何より、もともとお菓子が大好きだったんですよ」と破顔する。

本髙砂屋5代目の杉田全さん。現在は社長である父のもとで専務をつとめ、次世代のリーダーとして注目されている
本髙砂屋5代目の杉田全さん。現在は社長である父のもとで専務をつとめ、次世代のリーダーとして注目されている

「みなさんがポテチを食べる感覚で、子どものころからエコルセを食べていました。逆に、友だちの家に遊びに行って、なんでエコルセがないんや?という感じ。すごく大好きで、幼いころから身近にありました」

エコルセは、空気のように軽い食感の焼き菓子。1箱に、三角、短冊、丸型2種類がセットになっています。ただ形が違うだけでなく、巻き方の違いで食感の違いが味わえる、楽しいセット。なかでも、全さんが一番好きなのは「三角」。

エコルセは、薄い生地を焼き上げて層にした、サクッと軽いお菓子。 1970年の発売以来変わらない緑・赤・金・銀の包み紙がトレードマーク
エコルセは、薄い生地を焼き上げて層にした、サクッと軽いお菓子。1970年の発売以来変わらない緑・赤・金・銀の包み紙がトレードマーク

「味は短冊とほぼ一緒なんですけど、食感が全然違うんです。短冊は空気の抜けがあってホロっとしていますが、三角は仕上げに思いっきりプレスしているので、中の生地にまで熱がしっかり加わって香ばしくなるんです」

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薄いけれど存在感のある堅さ。堅いけど脆い食感。思わず「もう1枚」と手が伸びて、飽きがこないのが最大の魅力です。

「そうそう。先日は、妻と一緒に家で映画を1本見てる間にこの缶が空っぽになりましたね。こうやってポップコーンみたいに抱えてふたりでパクパクしてたら、2時間ぐらいでほぼなくなってましたよ!」

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エコルセが紙包装にこだわる訳

エコルセがふんわりと身にまとうのは、昭和レトロを感じさせる、緑、赤、金、銀、の紙包装。

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食べ終わったあと、つい手なぐみに折り紙にしたり、しばらく眺めていたくなるような愛おしさがあります。紙包装の理由を全さんに教えてくれたのも、3代目のおじいさんでした。

「堅いけど脆いという性質をもつエコルセは、食べるとちょっとバラバラしちゃうんですよ。でも、開いた紙をこうしてお皿代わりにして欲しいんだ、というんです。多少こぼれても、紙に集めればくしゃっと小さく丸めて捨てられますからね」

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紙1枚に多様な役割を持たせる美しいしぐさは、日本人が生活の中で長らく大切にしてきた生活文化。「懐紙」の発想かもしれません。ただし、時代に即してないところもあるのは重々承知。

「こだわりではあるんですが、一度封を切ったら湿気やすいというデメリットもあります。だからフィルムの個包装にして欲しいというリクエストも少なくない。それでも今も紙包装にこだわるのは、開封したらできるだけ早く食べていただきたい、という想いがあるんからなんです。賞味期限が長い焼き菓子も、やっぱり鮮度が命ですからね」

六甲アイランドにある工場にて 六甲アイランドにある工場にて 六甲アイランドにある工場にて
六甲アイランドにある工場にて

全さんが一番好きな三角は、緑の紙包み。「この緑の三角は、木をイメージしてるんじゃないかな」と全さんはいいます。

「エコルセはもともとフランス語の “écorus” エコルスが語源になっているんですが、樹の皮、樹皮っていう意味なんですよ。他の色がなぜこの組み合わせなのかは誰も知らないかも(笑)」

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かつて、冠婚葬祭用として特別に、薄いピンクやブルーの包装紙も存在したと聞くとちょっ心がときめきます。またそんな遊び心が復活する日もくるのでしょうか。

「会議の時も、机の上にエコルセが並んでいたら、こうしてモグモグしてますね」と笑う全さん
「会議の時も、机の上にエコルセが並んでいたら、こうしてモグモグしてますね」と笑う全さん

お菓子で世界に笑顔の伝染を

本髙砂屋の始まりは、瓦せんべい。堅焼きの甘い素焼きのせんべいは、神戸の郷土菓子でもある。

「今でも、うちの職人さんみんなこの生地のことをせんべいと呼びますよ。原材料は、小麦、卵、砂糖、油。クッキーとほぼ同じですが、それをどう配合するのか、どう熱を入れるのか、どう成型するのかによって変わるんです。うちの場合は、それを薄く伸ばせる技術と機械、せんべい生地のように硬くする技術があった。それでも、柔軟性のある生地を焼成して、それが安定するとかたく脆くなる生地というのをつくるのに何年もかかかったと聞いています」

エコルセの前身は「クリームパピロ」という商品だったとか
エコルセの前身は「クリームパピロ」という商品だったとか
機械生産だが、脆いお菓子なので、最後は人間の手で仕上げる 機械生産だが、脆いお菓子なので、最後は人間の手で仕上げる
機械生産だが、脆いお菓子なので、最後は人間の手で仕上げる

ごく薄いのに存在感のある硬さ。かたくて脆い食感という、相反する性質を持った生地。素朴なお菓子のなかに、よそにはない、本髙砂屋ならではの経験と技術が詰まっています。

「エコルセは、小麦のおいしさ、味、風味を最大限生かしていること、それに口溶けのよさが身上だと思ってます」

洋菓子のエッセンスを取り込みつつ、和菓子の技術とこだわりが存分に生かされたエコルセという唯一無二のお菓子を、これから全世界にも届けていきたい。きっと世界にも通用する味だと、全さんは確信しています。

モこうやって食べても楽しいんですよ。エコルセの味わい方、楽しみ方を存分に語ってくださいました
「こうやって食べても楽しいんですよ。エコルセの味わい方、楽しみ方を存分に語ってくださいました」

「お菓子を食べる時、誰かと食べる時、渡す時、もらう時。そこには笑顔があると思うんです。笑顔になれて、身体にもいいお菓子を世界中に届けることができたら、最高だと思いませんか?」

本髙砂屋

【神戸スイーツ ノオト/本髙砂屋】 本髙砂屋初代・杉田太吉は、大阪の和菓子屋「髙砂饅頭」で奉公ののち、18歳の時に独立。明治10(1877)年、菓子仲間5名と「瓦せんべい」を開発し、これを主力商品とする「紅花堂」を神戸・元町に創業しました。屋号を髙砂屋と改め、明治30(1897)年には、従来の「江戸きんつば」に改良を加え、神戸名物「髙砂きんつば」として売り出します。2代目杉田政一は、屋号を「本髙砂屋」と改め、フランス菓子「クリームパピロ」を改良、新発売。昭和25(1950)年に在阪の百貨店との取引を開始、以降全国に販路を拡大します。洋菓子の看板商品「エコルセ」は、昭和45(1970)年生まれ。半世紀を超えて愛されるロングセラーです。

本髙砂屋

〈本高砂屋〉

エコルセ(47包) 税込3,240円
エコルセ(16包) 税込1,080円
エコルセ(8包) 税込540円

大丸神戸店 地1階 洋菓子売場

〈本高砂屋〉の一部の商品は
大丸松坂屋オンラインストアでもお買い求めいただけます。

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