~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

2022/5/5~5/20[

祭り情緒の
ご馳走絵巻。

王朝絵巻さながらの優雅な行列で知られる葵祭。
正式には賀茂祭といい、平安朝の時代、祭といえば賀茂祭をさしました。
行列巡行は中止ですが、色とりどりのご馳走を並べて、祭り気分の華やぎと京都らしい風情を卓上へ。

2022/05/06

ハレときどきケ?

ハレは年中行事や冠婚葬祭などの“非日常”、ケは日々の生活である“日常”をさします。昔は食事もハレとケで大きく異なり、庶民にとって米、餅、魚、肉、酒などはハレだけのご馳走でした。現代は米食が日常化し、おいしいものが手軽に味わえて、いわばハレ続き。本来ならケときどきハレなのですが、逆転して区別が曖昧に。お祭りや年中行事が暮らしに息づく京都。ハレとケを大切にし、日々のめりはりを楽しみたいものですね。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈下鴨茶寮〉

趣向を凝らしたご馳走が
味わい多彩に華やかに。

一品ずつ丁寧に手をかけた料理を少量ずつ彩りよく、12升に仕切った折詰に。まんなか2つの升目には色鮮やかな有頭海老とにしん昆布巻き、しっとり柔らかい合鴨くんせいと鯖塩焼き。そして、写真上の角から時計回りに、鶏と野菜の信田巻き、湯葉とおくらのあんかけ、粟麩や椎茸煮、煮しめ大豆、栗甘露煮と巾着餅、茄子煮あんかけ、筍の梅ドレッシング和え、花麩と飛龍頭煮、ほうれん草胡麻和え、蒲鉾と甘藷レモン風味煮。味つけや食感のバラエティーに富んでいて、どれから箸を伸ばそうかと目うつりするのも楽しみのうちです。

〈下鴨茶寮〉

料理盛合せ 十二絵巻(1折)税込1,944円

〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
 
 
 

料理をぐっと引き立てる
豊かな醤油の風味。

調味料は料理の良し悪しを決めると言っても過言ではないほど大切なもの。シンプルな料理ほど、その違いを実感します。写真の料理は、名残、走りの焼野菜とステーキ。召し上がる際のつけだれとして、右の小皿に「柚子もろみ」、左の小皿に「うま味醤油」と辛子を用意しています。「柚子もろみ」は大豆や大麦を発酵させた醤油もろみに柚子皮を加えたもの。粒々感が残った、とろりと濃厚な風味に、柚子が香り、野菜や肉はもちろん、魚介や豆腐にもよく合います。「うま味醤油」は京都?兆 嵐山本店で使用しているお造り用醬油と同じ素材と製法の万能醤油。国産丸大豆の天然醸造濃口醤油に本枯かつお節と真昆布を漬けこんだ、まろやかなうまみをもち、いろいろな料理に使えます。

〈京都?兆〉

柚子もろみ(120g)税込864円
うま味醤油(200ml)税込1,296円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら

〈天ぷら八坂圓堂〉

薄衣をまとってサクッと、
初夏~夏の旬をいち早く。

旬の走り、出始めの頃は甘みがあって瑞々しさひときわのアスパラガス。ふわっとした口当たりとクセのない淡白な味わいをもち、夏場に向けて脂のりが増す白身魚 きす。そして、名物とうもろこしの天ぷらは、弧を描く絶妙な切り方によって一粒一粒がぷりっと弾ける食感です。熟練職人が揚げる温度や時間を見極め、一瞬の技によって食材の持ち味を最大限に際立たせています。

〈天ぷら八坂圓堂〉

天ぷら各種(1個)
アスパラガス 税込150円
とうもろこし 税込160円
きす 税込380円

〈老松〉

■地階 和菓子売場
日本原産の夏みかんで作る、
ぷるんと涼やかな夏柑糖。

毎年待ち焦がれているファンが多い季節限定の名品。夏みかんの中身を丁寧に取り出し、皮を器にして、搾った果汁と寒天を冷やし固めた涼菓です。上七軒に本店を構える老松が、戦後の物資が少ない時代、花街に通う旦那衆のために、店の庭にあった夏みかんで作ったのが発祥。最初は夏みかんの強い酸により寒天がなかなか固まらずに苦労したそうですが、今も当時と同じレシピで作り続けられています。主原料の夏みかんは数少ない日本原産の柑橘。1970年代、グレープフルーツの輸入自由化、甘夏への作付け転換によって、夏みかんはほとんど姿を消しましたが、老松は原産地の山口・萩の農家を回って働きかけ、夏みかんの復活、種の保存にも一役買いました。現在は和歌山の産地にも協力を得ています。心地いい香りが広がり、ほどよい酸味とほろ苦さがあり、さっぱりとした上品な後味。他の柑橘類とはひと味もふた味も違います。切り分けて、スプーンですくって召し上がってください。年ごとに収穫量が異なるため、材料の夏みかんがなくなり次第終了になります。

〈老松〉

夏柑糖(1個) 税込1,404円
※6月中~下旬頃までの期間限定販売(なくなり次第終了)

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。