Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES大丸心斎橋店の注目トピックスにフォーカスして紹介する「FEATURE」。今回は、大丸心斎橋店本館地下2階「心斎橋フードホール」で定期的に行われているジャズライブ「SATURDAY NIGHT JAZZCLUB」で演奏する魚谷のぶまささんと加納星子さんにインタビューを行いました。ライブの模様と併せて、この7月から新しく「心斎橋フードホール」で食べられるようになった、夜限定のスペシャルメニューも試食していただきました。
※この記事の内容は2024年7月10日に公開された時点のものです。
「このライブには、外国の方もたくさんいらっしゃって、たまにお話をするんですが、あるアメリカ人の男性が、『宿泊しているホテルでは演奏がまったくないので、ここで生の演奏を聞けてうれしかった』と言ってくださって」
2023年3月から始まった「SATURDAY NIGHT JAZZCLUB」に当初から関わってくださっている魚谷さんは、印象に残っているオーディエンスについて、そう話してくれました。
「アメリカなんかでは、生活に音楽が転がっている感じがあって、小さなバーとかでも、おっちゃんが一人で楽器を弾いたりしてますもんね」
日本でも、昔はホテルなどで必ず音楽を生演奏していた時代もあったけれど、最近は減ってしまったと言う魚谷さん。もっと身近に音楽を、ジャズをということで、「心斎橋フードホール」で続けられているのが「SATURDAY NIGHT JAZZCLUB」です。
6月22日の土曜日、午後5時からライブが始まりました。この日の演奏はベースを担当する魚谷さんに加えて、サックスの加納星子さん、ピアノの安次嶺悟さんのトリオ。これまで約30回以上のジャズライブがここで行われてきましたが、毎回出演者は変わり、さまざまな楽器やテイストの音楽を、回ごとに違った形で聴くことができます。
演奏される場所は、地下2階のエスカレーターを降りたあたり。大丸心斎橋店がウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計によって建てられた、1922(大正11)年ごろの時代を彷彿させるような、レトロで大きなスタンド時計が印象的なスペースです。
「私の知り合いで、大阪市の西区に住んでらっしゃる方がいまして。散歩がてら大丸心斎橋店まで買い物にきて、一杯飲んで帰るというのが日常コースになってらっしゃるんですが、その方がライブ中に偶然私を見つけてくださったことがあるんですよ」
そう加納さんが話すように、この場所は、エスカレーターを上り下りするお客様が、頻繁に行き来する場所。この日のライブ中も、エスカレーターを降りてきた子どもが、演奏に興奮してはしゃぐ姿も見られました。
この日の演奏は、ヴォーカルが入らないインストルゥメンタル。ボサノヴァのレジェンド、アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲『ノー・モア・ブルース』をジャジーに演奏するなど、アルトサックスの軽やかな音色にベースとピアノの音が絡みながら、ライブはゆるやかに進んでいきます。ホールにゆったりと配置されたテーブルでは、周りの飲食店からテイクアウトしたフードやドリンクを楽しみながら、JAZZに聴き入る人たちもいました。
演奏するミュージシャンの傍を見ると、「専用チップ紙幣投入れBOX」と書かれた箱が置かれています。「SATURDAY NIGHT JAZZCLUB」では、大阪ゆかりのジャズミュージシャンが出演していますが、これは、2024年に心斎橋のお隣り、道頓堀でJAZZが発展し100年を迎えることを受けて、地元のミュージシャンが演奏する機会を設け、さらには投げ銭で応援してもらおうという想いのもとに生まれた試みです。
ライブ当日の午後4時から午後7時まで、「心斎橋フードホール」で税込1,000円以上のメニューを注文すると、オリジナルのチップ用紙幣がもらえ、投げ銭としてミュージシャンに渡すことができます。紙幣の枚数に応じてミュージシャンたちの出演費にプラス。演奏を楽しみながら、ミュージシャンを応援できる、参加する楽しみをもたらしてくれますね。
約40年のキャリアがあり、さすが安定したリズムが聴き心地いい魚谷さんのベースと、ちょっとジャッキー・マクリーンの演奏を思い起こさせるようなメリハリとキレと色気のある加納さんのサックスがフードホール全体に響きわたり、百貨店に音楽がある幸せな空間が生まれていました。
「SATURDAY NIGHT JAZZCLUB」は毎月不定期で土曜日に開催しています。7月は、20日(土)、27日(土)に行うことが決定!各日午後5時、午後6時、午後7時にライブがあるので、買い物がてら、飲食がてらにぜひ聴きに来てください。
ジャズライブが土曜の夜を盛り上げる「心斎橋フードホール」ですが、7月からは、さらにおいしい魅力が加わりました。
フードホールでは、フロアにある約20軒の飲食店で買ったフードやドリンクをテーブルでゆっくり食べることができます。だいたいのお店は、昼も夜も同じメニューを提供しているのですが、この7月から、ちょっとお酒のアテに気軽に食べてもらえるものをということで、500円〜1,000円前後でいただける夜限定メニューを用意しているのです。※以下すべて税込価格。
ジャズライブを聴きながら、サク飲みのアテに、女子会で、みんなで食べるフードにと、いろいろ楽しめる夜の限定メニューを、魚谷さんと加納さんに食べていただきました。
まずはビールで乾杯!と、「世界酒BAR セカサケ」のクラフトビールをいただきます。こちらのお店は専用のバーカウンターがあり、フードホールの別のお店で出している料理を食べることも可能。ソムリエや唎酒師のスタッフもいるので、料理に合ったさまざまなお酒を楽しむことができます。
「私は食べるのも飲むのも好きなので、ライブ中はちょっとお客様が羨ましかったりするので(笑)、今日は飲んで食べることができてうれしいです」と加納さん。
「白ワインはちょっと苦手だけど、ほかのお酒はなんでも好きです」という魚谷さんに、大阪の堀江に醸造所がある「MARCA BREWING」のヘイジーIPAを飲んでもらいます。
「うわー、このIPAはすごいですね。飲んだあとに喉元にズシッとくる感じ」という加納さんに対して、「僕はこの独特の味好きやな」と魚谷さん。
ライブ終わりにお酒を召しあがることも多いという加納さんは、「ミュージシャンはお酒好きな人が多いので、しょっちゅう飲み会がありますね(笑)」
対して魚谷さんは、「僕が弾く楽器は大きなウッドベースなので、ライブのときは車で動くことが多いんですよ。だから演奏終わりには飲めないんですけど、この『心斎橋フードホール』の生鮮食品売場はいいものを置いてますよね。ライブが終わる頃には少し値段も下がっていることもあるので、いつもいくつか買って帰って、それをアテにして家で飲んでます」
フードでまず最初にいただいたのは、「スパイスカレーオオサカ Shall We Spice Produced By 王様のスプーン」の彩り野菜とロースカツの盛り合わせ。このお店は、南森町にあるスパイスカレー専門店「王様のスプーン」プロデュースで、体にやさしい薬膳カレーを提供。夜用にと酒のツマミになるようなメニューを用意してもらいました。
ロースカツを一口食べた魚谷さんは、「スパイスが利いていますね。ビールにぴったり」。
「みんなでちょっとずつシェアできるので、大人数の飲み会などにもいいですね」と加納さん。
ふだんはジャズクラブやライブハウスで演奏することが多いお二人ですが、「そういう場所でも食べたり飲んだりして聴いてくれているお客さんは多い」と魚谷さん。「SATURDAY NIGHT JAZZCLUB」でもリラックスして聴いてくださっているお客さんが多いのでうれしいのだと言います。
「音楽を聴く場所では、なぜかカレーは多いですよね。ミュージシャンでカレー店をやっている人も多いし」と加納さん。スパイシーな味は、音楽との相性がいいのかもしれません。
続いて食したのは、「北新地とんかつ epais(エペ)」のヘレカツサンド。こちらのとんかつは、全国各地から厳選した豚肉を、2種類のラードで揚げ、オーブンでじっくり低温調理するという手間暇かけたもの。スペシャルメニューのヘレカツサンドも、同じように低温調理しています。
「お肉がとてもやわらかくて、これもビールに合いますね。ボリュームも十分。」と加納さん。
「カツサンドって僕は日常ではあまり食べないんですけど、二切れ入って1,000円はお得感ありますよね」と魚谷さん。
「衣が薄くて食べやすいです」と加納さんは、パクッとおいしそうに平らげました。
カツが続いたところで、次はあっさりめの出し巻き玉子を。1946(昭和21)年創業の「道頓堀今井」は言わずと知れたうどんの名店。多くの人の舌を満足させるおいしいダシは、天然の真昆布を使い毎日引いています。そんなうどんのダシをベースに夜限定メニューとして出し巻き玉子が登場です。
「最近は和食が好きなので、こういう料理はうれしい。ええおダシですね。普通は玉子の中にダシに入っていますけど、こうやってダシ汁に浸されているのは珍しいんじゃないですか」と魚谷さん。
聞くと、玉子の中と外のダシは同じものだそう。大阪を代表するダシを堪能できる逸品をワンコインでどうぞ。
和食の次は中華の注目フードを。フカヒレと中華食材の専門店「日本橋 古樹軒(こじゅけん)」がプロデュースする心斎橋店は、「フカヒレを身近に、さらにおいしく」をコンセプトにオープンしたお店。夜のスペシャルメニューは、気仙沼産のサメ、ピーチシャークを使った、さめさめコンボセットです。※ピーチシャーク…宮城県気仙沼に水揚げされた鮮度抜群のヨシキリザメ。
バーガーを頬ばった加納さんは、「なかなか辛いですね。大人の味という感じ」
サメのカツには、自家製タルタルソースと熟成ピリ辛ソースの特製2種ソースをオンし、中華料理ならではの刺激が感じられるひと皿になっています。※辛いものが苦手な方は、ピリ辛ソース抜きも可能。
1952年、大阪阿倍野の昭和町にオープン。洋食店、ハンバーグ専門店として70年以上愛され続ける「大阪ハンバーグ 昭和町ボストン」からは、エビフライを。おいしそうに食べるお二人に、再び「心斎橋フードホール」でのライブの話をしていただくことに。
「僕らはジャズクラブやライブハウスなど、基本的に僕らを目当てに観に来てくれるお客さんの前で演奏することが多いんですけど、ここでは、そうではない方々がほとんど。そういう方の心をつかめるかつかめないか、自分の音楽の腕を確かめるのにもいい場所になってます」と魚谷さん。
「ライブハウスと違って、音響さんは大変だと思います。何もない空間から音づくりをしなければならないので。そのおかげで、とてもいい音を出していただいていますね」と加納さん。
フランス北部の街・リールで生まれて、今では世界54カ国820店舗を展開する世界的人気のブーランジェリー「PAUL(ポール)」も夜のスペシャルメニューをご用意。クロワッサンやハムサンドイッチなど、人気商品を盛り合わせたアソルティです。
「これだけ入って1,100円はお得感がありますね。ハード系のパンが大好きなんですけど、さすが『ポール』、おいしいです」と笑顔の加納さんに、「これは赤ワインがほしくなるな」と魚谷さん。
「心斎橋フードホール」は、ビールはもちろん、ワイン、日本酒、ウイスキーなど、ありとあらゆるお酒が豊富にそろい飲めるのも魅力。ジャズライブを聴きながらお酒を飲むと、まったりと気持ちよくなること間違いなしです。
「ジャズクラブとかだと飲んで食べるとチャージと合わせて10,000円ぐらいいっちゃうことも多いけど、ここなら1,000円のフードをつまみながらお酒を飲んでもそれほどかからないのでいいね」と魚谷さん。
ちょっとお腹がいっぱいになってきたなあというお二人に、締めとしてたこ焼きを食べていただきました。
「昔ながらたこ焼きという感じで旨いですね。そんなに上品すぎないというか。」と魚谷さんに、「確かに。最近はカリっみたいなやつ多いですもんね」と加納さん。
「外はふわっで、中はとろっみたいな上等な感じのやつね。このたこ焼きは、わりと粉感が残っているというか、僕はこっちのほうが好きですね」と魚谷さん。
大阪のミナミでジャズを演奏できるところは減ってきているという魚谷さん。だからこそ、百貨店での演奏の機会は貴重だとも言います。
「お客さんは、わざわざミュージックチャージを払わなくても、気軽に聴いてもらえるので、ジャズの入り口にしてもらえるといいですね」
スペシャルなフードとドリンクを食べながら、心地いい音楽に浸る夜。百貨店の新しい楽しみかたが増えたかもしれません。
1964年広島県尾道生まれ。幼少期に大阪に移り。12歳からギター、14歳からエレキベースを弾き始める。21歳で西山満氏に師事し、エレキからウッドベースに持ち替え、1987年からプロ活動を開始。関西を代表するユニットにレギュラーベーシストとして参加するほか、自ら魚谷のぶまさトリオを率いる。ラジオDJからイベントコーディネートまでをこなすし、多岐にわたって関西ジャズ界で活躍中。
大阪音楽大学音楽学部器楽科NITEクラシックサクソフォンを学ぶ。卒業後本格的にジャズを学び始め、音楽教室で講師を務める傍ら、京阪神のジャズクラブやライブハウスでライブ活動をしている。ジャズサクソフォンは、土岐英史氏に師事。
※この記事の内容は2024年7月10日に公開された時点のものです。
写真/エレファント・タカ(ジャズライブ)、香西ジュン 映像/上球音(FrameBird) 取材・文・編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 編集・プロデュース/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVESProfessional's Eyes Vol.66
Professional's Eyes Vol.65