秋を詠む70のうた

■9月4日(水)→10月1日(火)

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大丸東京店は今年の10月で開店70周年を迎えます。
東京店の70周年にちなんで、平安時代の和歌から現代の短歌・俳句まで、
秋にまつわる70のうたを集めました。
期間中は大丸東京店内にもうたの数々が登場!
色とりどりの秋を感じられる70作品をぜひお楽しみください。

大丸東京店は今年の10月で
開店70周年を迎えます。
東京店の70周年にちなんで、
平安時代の和歌から現代の短歌・俳句まで、
秋にまつわる70のうたを集めました。
期間中は大丸東京店内にも
うたの数々が登場!
色とりどりの秋を感じられる
70作品をぜひお楽しみください。

たらればさん撰 和歌30首

秋はその豊かな色彩と深い情感から、古来より歌人たちの心を捉え、数多くの和歌に詠み込まれてきました。
今回、平安文学をこよなく愛する編集者たらればさんと国文学者の谷知子先生をお迎えし、秋を題材にした和歌を30首をお選びいただきました。
和歌の並び順と現代語訳にもこだわり抜いた、秋を詠む30の和歌をお楽しみください。

  • 撰・現代語訳

    たられば さん

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    編集者。X(旧Twitter)にて大型犬と本(書籍/雑誌)、平安朝文学への愛(特に清少納言と枕草子)を呟き続けてフォロワー数は約23万人(2024年7月末時点)。だいたいニコニコしています。講談社、集英社、新潮社、KADOKAWA、朝日新聞など各社媒体に書評、エッセイを寄稿。

    「秋」というお題で和歌を三十首選ぶ、初めての経験でしたが、めちゃくちゃ楽しかったです。まず「秋と言えば」で頭に浮かんだ和歌を片っ端から探して十五首、あとの半分は「この人は外せない」という歌人、「秋といえばこれ」の景物でピックアップしました。こんなに楽しいとは…たぶん紀貫之や凡河内躬恒が『古今和歌集』を編むときも、すごく楽しかったんだろうなあと実感しました!

  • 監修

    谷知子 さん

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    フェリス女学院大学教授。専攻は和歌文学。大阪大学国文学科卒、東京大学大学院博士課程単位取得。博士(文学・東京大学)。著書に『和歌文学の基礎知識』『古典のすすめ』『天皇たちの和歌』(角川選書・kadokawa)、『ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 百人一首(全)』『カラー版 百人一首』(角川ソフィア文庫・kadokawa)、『百人一首 解剖図鑑』(エクスナレッジ)など多数。

    王朝和歌において、秋は重要な季節です。繊細な風の音の変化から始まって、月の光、鹿の鳴き声、紅葉の彩り、そして「秋は夕暮れ」。古典文学をこよなく愛する、たらればさん撰秋の和歌30首を読むと、日本の秋が推移していくさま、秋の情緒を体感できます。重要な歌人も網羅していて、ほんとうに素敵。みなさまの秋の友となること間違いありません。

秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども
風の音にぞ おどろかれぬる

藤原敏行 [ 古今集 ]

秋が来た、とはっきり目に見えているわけではないけれど、風の音にはっと気づかされた。 

秋風の 吹きにし日より 久方の
あまのかはらに たたぬ日はなし

読み人知らず [ 古今集 ]

秋風が吹き始めた立秋の日からずっと、私(織女星)は天の河原に立ち、あなた(牽牛星)がいらっしゃるのを待ち続ける日々です。

八重葎(やへむぐら) しげれる宿のさびしきに
人こそ見えね 秋は来にけり

恵慶法師 [ 拾遺集 ]

つる草が何重にも生い茂り重なっている、さびれて誰もいない宿にも、秋はやってくるのですね。

木の間より もりくる月の 影見れば
心づくしの秋は来にけり

読み人知らず [ 古今集 ]

木の枝の間から漏れてさす月の光を見ると、物思いの限りを尽くす秋がいよいよ来たのだなと実感する。

月みれば ちぢにものこそ 悲しけれ
わが身一つの 秋にはあらねど

大江千里 [ 古今集 ]

月を見上げると、たくさんの想いが心をめぐって悲しくなる。わたしだけに秋が訪れたわけではないのだけれども。

おほかたの 秋のあはれを 思ひやれ
月に心は あくがれぬとも

紫式部 [ 千載集 ]

あなたに飽きられてしまったわたしの秋の悲しさを、どうか思いやってください。あの月のように美しい方にあなたが心を奪われているとしても。

秋風に たなびく雲の 絶え間より
もれ出づる月の影のさやけさ

藤原顕輔 [ 新古今集 ]

秋風に流されて、たなびく雲の隙間から漏れてさす月の光の、なんと明るく澄んでいることよ。

海のはて 空のかぎりも 秋の夜の
月の光のうちにぞありける

藤原家隆 [ 玉葉集 ]

海の果て、空の境界までも、この世のすべては、この美しい秋の夜の月の光に包まれているのだなあ。

いつまでか 涙くもらで 月は見し
秋待ちえても 秋ぞ恋しき

慈円 [ 新古今集 ]

いつの頃までだったろうか、涙に目がくもらないで月を見たのは。待ち望んだ秋をいざ迎えても、月の曇ることのない秋が恋しい。

憂きことを 思ひつらねて 雁がねの
鳴きこそわたれ 秋の夜な夜な

凡河内躬恒 [ 古今集 ]

つらい思いを抱えながらも、雁は夜な夜な、秋の空を鳴きながら(泣きながら)渡ってゆくのだなあ。

起きもゐぬ 我がとこよこそ 悲しけれ
春帰りにし 雁も鳴くなり

赤染衛門 [ 後拾遺集 ]

病に伏せて起き上がれないわたしの「床(とこ)」こそ悲しいことだ、春に常世に帰って秋にまた戻ってきた雁の鳴き声を、またこの病床で聞くことになるとは。

夕されば 野辺の秋風 身にしみて
鶉(うづら)鳴くなり深草の里

藤原俊成 [ 千載集 ]

夕暮れになると野辺に吹く秋風が身にしみて、鶉(うずら)が寂しげに鳴いている深草の里よ。

奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の
声聞く時ぞ 秋はかなしき

猿丸太夫 [ 古今集 ]

奥山に紅葉を踏んで分け入り、鳴く鹿の声を聞くとき、まさに、秋の悲しみを感じるなあ。

人もがな 見せも聞かせも 萩の花
さく夕かげの ひぐらしの声

和泉式部 [ 千載集 ]

誰かいませんか、誰かに見せたいし、聞かせたいのです、見事に咲いたこの萩の花や、夕影に響く蜩(ひぐらし)の鳴き声を。

おきあかし 見つつながむる 萩の上の
露吹きみだる秋の夜の風

伊勢大輔 [ 後拾遺集 ]

一晩中起きて眺めている萩の葉の上の露を、一瞬ではかなく吹き散らしてしまう秋の夜の風の強さよ。

色かはる 秋の菊をば ひととせに
ふたたび匂ふ 花とこそ見れ

読み人知らず [ 古今集 ]

秋に咲く白菊は、冬が近づくと薄紫に色を変える。1年で2度美しく咲く花と見ることだなあ。

秋ふかみ 黄昏時の 藤袴
匂ふは名乗る心地こそすれ

崇徳院 [ 千載集 ]

秋も深くなるころ、黄昏時に藤袴の香りが匂ってくると、花が自分の名を名乗っているような気分になります。

寂しさに 宿を立ち出でて ながむれば
いづくも同じ秋の夕暮れ

良暹法師 [ 後拾遺集 ]

ふと寂しさが極まって、家を出て外の風景を眺めてみたら、世の中はどこも同じ、寂しい秋の夕暮れだった。

心なき 身にもあはれは 知られけり
鴫(しぎ)立つ沢の 秋の夕暮れ

西行法師 [ 新古今集 ]

わたしのような「もののあわれ」が分からない者にも、鴫(しぎ/水辺にすむ鳥)の飛び立つ沢に訪れる秋の夕暮れの風情は身に沁みるものだなあ。

見渡せば 花も紅葉も なかりけり
浦の苫屋の 秋の夕暮れ

藤原定家 [ 新古今集 ]

見渡してみると、美しい花も紅葉も見当たらない。ただ、苫葺きの小屋だけが点々と見える、浜辺の秋の夕暮れよ。

村雨の 露もまだ干ぬ まきの葉に
霧立ちのぼる 秋の夕暮れ

寂蓮法師 [ 新古今集 ]

村雨(にわか雨)がひとしきり降り過ぎて、その露がまだ乾かず濡れている槇の葉に、霧が立ち上っている。ああ、秋の夕暮れであるなあ。

秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ
わが衣手は 露にぬれつつ

天智天皇 [ 後撰集 ]

秋の田を守るための仮小屋は、苫で編んだ屋根の目が粗いので、着物の袖が夜露に濡れてしまった。

つねよりも 照りまさるかな 山の端の
紅葉をわけて出づる月影

紀貫之 [ 拾遺集 ]

いつもよりひときわ照り輝いているように見えますね、山の端の紅葉を分けて夜空にのぼる月の影は。

誰がための 錦なればか 秋霧の
佐保の山辺を 立ち隠すらむ

紀友則 [ 古今集 ]

美しい佐保の山辺の紅葉の錦を、秋霧が隠してしまっている、いったい誰のためなのだろうか。

神なびの みむろの山を 秋ゆけば
錦たちきる 心地こそすれ

壬生忠岑 [ 古今集 ]

神奈備の三室の山を秋に歩いてみれば、まるで錦(豪華な衣服)を裁ち切って自由に着こなしているような、最高の心地になる。

ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川
からくれなゐに 水くくるとは

在原業平 [ 古今集 ]

さまざまな奇跡が起こっていた神々の時代でさえも聞いたことがない。竜田川を紅葉が流れて真っ赤に括り染めにするなんて。

秋の夜も 名のみなりけり 逢ふといへば
ことぞともなく明けぬるものを

小野小町 [ 古今集 ]

「秋の夜は長い」と言われているのに、そんなものは名目だけだった。いとしいあなたと逢っていたら、あっという間に夜が明けてしまうのだから。

人はこず 風に木の葉は 散り果てて
夜な夜な虫は声よわるなり

曾禰好忠 [ 新古今集 ]

人は来ずに、木の葉は風で散り果てて、虫は夜ごとに鳴き声が弱まってゆく。

いづかたに 秋のゆくらむ 我が宿に
今宵ばかりは 雨宿りせよ

藤原公任 [ 詞花集 ]

秋はどこへ去ってしまうのだろうか。今夜くらいは我が家に雨宿りにでも寄って、留まってくれまいか。

おもへども 今宵ばかりの 秋の空
ふけゆく雲にうちしぐれつつ

式子内親王 [ 続拾遺集 ]

どれだけ名残惜しく思っていても過ぎていってしまう、今夜かぎりの秋の空よ。更けてゆく夜空の雲も泣いているのか、時雨が降っているよ。

現代作家による書き下ろし 短歌・俳句 32作品

現代作家による書き下ろし
短歌・俳句 32作品

気鋭の歌人・俳人を4名お迎えし、「秋の訪れ」と「秋の百貨店」をテーマに歌を詠んでいただきました。瑞々しい感性で詠まれた32作品をぜひお楽しみください。

  • 歌人

    岡本真帆 さん

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    1989年生まれ。高知県、四万十川のほとりで育つ。2022年に第一歌集『水上バス浅草行き』、2024年に第二歌集『あかるい花束』をいずれもナナロク社から刊行。

  • 歌人

    天野慶 さん

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    「ラジオ深夜便」出演や「NHK短歌」テキスト連載、小中学生向けワークショップの他、『ちはやふる』(末次由紀/講談社)93首目・95首目に短歌を提供するなど、様々なメディアで短歌の魅力を伝えている。近刊に『見て楽しむことば図鑑』(共著・みっけ/幻冬舎)。

  • 俳人

    黒岩徳将 さん

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    1990年、兵庫県神戸市生まれ。「いつき組」所属。今井聖主宰「街」同人。第5・6回石田波郷新人 賞奨励賞。2017年度「街未来区賞」。第3回俳句大学新人賞特別賞。2023年度「街賞」。アンソロジー『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』入集、共著に『新興俳句アンソロジー』。現代俳句協会青年部長。第一句集『渦』(港の人)を2024年5月上梓。

  • 俳人

    原麻理子 さん

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    1987年生まれ。コピーライター、イラストレーターとしても活動する。受賞歴に、第5回円錐新鋭作品賞白桃賞(俳句)、2022年度TCC新人賞(コピー)など。コピーの仕事に「気持ちいいのはなぜだろう。」(無印良品)、イラストの仕事に『金曜日の川柳』(左右社)がある。

秋の風 心より素肌が先に
永遠なんてないことを知る

岡本真帆

東京に来て東京の⚪︎⚪︎⚪︎

黒岩徳将

[ヒント] 秋を感じる瞬間を切り取った作品です。少し寂しさも感じさせます。
※本作品は「だいまるのうた巡り」で展示されております。
詳細はこちらよりご確認ください。

⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎はいつもうれしい ぼくたちは
知らない秋の入り口にいる

天野慶

[ヒント] 「秋の入り口」という言葉がヒントになります。新しい季節ってなんだかうれしいですよね。
※本作品は「だいまるのうた巡り」で展示されております。
詳細はこちらよりご確認ください。

今のあとすぐ今が来る 千年の
秋が来たならやりたいことは?

岡本真帆

紅葉ははじまっている ラックから
ショーケースから零れだす赤

天野慶

⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎外すピアスや小鳥来る

原麻理子

[ヒント] ピアスを外すときのしぐさが入ります。小鳥の様子とも似ているかも。
※本作品は「だいまるのうた巡り」で展示されております。
詳細はこちらよりご確認ください。

パンケーキ買ふ台風の目の中に

黒岩徳将

夏ならばはっきり分かり合えるのに
秋はたくさん答えがあるね

岡本真帆

うれしくてかざす木の実もブローチも

原麻理子

グリーンとブルーの世界が待っている
週末に向け電車は走る

天野慶

秋雲にゴルフボールがぽんと乗る

黒岩徳将

ほしいのは秋服じゃなくあたらしい
季節を駆けてゆくための服

岡本真帆

はつあきの試着室出てすこしまはる

原麻理子

見れば着たく着れば会ひたくなる秋は

原麻理子

ささやかな⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎を忍ばせて
塗り替えていくわたしの今日を

岡本真帆

[ヒント]「塗るコスメ」を言い換えた言葉が入ります。一文字目は漢数字です。
※本作品は「だいまるのうた巡り」で展示されております。
詳細はこちらよりご確認ください。

差す色に閉ぢる瞼や渡り鳥

原麻理子

一房の葡萄は銀河めいている
星は蛇口に冷やされながら

岡本真帆

小倉あん栗あん半分ずつ食べる
秋の日の午後あこがれている

天野慶

ごめんつて、ほら てつぺんの栗あげる

原麻理子

つやつやの夜のケーキの上の栗

黒岩徳将

秋果みな地下の光を弾きけり

黒岩徳将

すこしだけさみしい夜についてくる
わたしのことだけ見てる満月

天野慶

猫が目を見開く月の客となり

黒岩徳将

あたらしいあなたの明日があかるくて
あたたかであれ 秋空仰ぐ

天野慶

星月夜転勤すこし旅に似て

黒岩徳将

この星に梨の涼しさ 新しい
靴で出かける、どこまでもいく

岡本真帆

秋生まれだけ知っていてイチョウ舞う
並木を歩く靴を探しに

天野慶

ランチクロスに花野の風も包みけり

原麻理子

窓開けて眠れる秋の始まりに
金木犀の浅瀬で泳ぐ

岡本真帆

長き夜の花瓶に水の満たされて

黒岩徳将

ポストまでスキップしたくなるような
手紙が君に向かってるとこ

天野慶

便箋の二枚目の文字透けて月

原麻理子

一般公募 短歌・俳句 入選8作品

一般公募
短歌・俳句 入選8作品

7月末から2週間募集をした「秋を詠む」短歌・俳句の応募総数は851点でした。
たくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。851の作品から厳選された、珠玉の8作品をご紹介いたします!
また、選ばれた8作品はイベント期間中、大丸東京店のデジタルサイネージでも放映いたします。

撰者のお二人からの総評

短歌撰者

天野慶 さん総評

季節が二極化して、「暑い」か「寒い」かしかないこの頃。「秋の訪れ」を感じている間もなく、季節が移り変わってしまっているのでは……?募集を始めたときはドキドキしていましたが、予想をはるかに超えるたくさんの歌が届き、拝見してそのレベルの高さに驚きました!
百貨店のファッションやスイーツで胸をときめかせたり、まあるい月を見上げながら考え事をしたり……。平安時代の歌人たちと、違うところも同じところも、歌に浮かび上がってきて面白かったです。
素敵な歌が多くて、入選作を絞るのが大変でした!大賞はじめどの入選歌も「秋の訪れ」が嬉しくなる、わくわくとお出掛けしたくなる歌でした!
たくさんのご投稿、ほんとうにありがとうございました!!

俳人撰者

黒岩徳将 さん総評

季節を迎える喜びを色彩豊かに詠う作品に溢れていました。まだまだ私たちの生活の周りに「秋」はありますね。その中でも、受賞作は一つ一つ丁寧に置かれた言葉の調子やリズム感が快いもので、つい口ずさみたくなりました。
ご覧いただき、五感で秋を感じていただけると嬉しいです。

短歌

【 大賞 】

オム列

ウォーキングシューズの紐を締め上げて
駆け抜ける風駆け上がる秋

[ 撰者からのコメント ]

いつの間にか移り変わってゆく季節を、新しいシューズを履いて自ら迎えに行くような、明るく前向きな気持ちが光る一首です。下の句の躍動感もいいですね!素敵な秋になること、間違いなしです!

【 準大賞 】

沓沢游

この夏も君を花火に誘えなかった
それでもいいと思えれば秋

[ 撰者からのコメント ]

せつない上の句と、それを受け止める穏やかな下の句。「それでもいい」とすっきりした思いで見上げた秋の空は、きっと透き通るような青ですね。

【 入選 】

かしくらゆう

伸びていた背中がくるっと丸まって
秋を抱いてる猫の寝姿

[ 撰者からのコメント ]

溶けてしまいそうだったこの夏。人間ももちろんですが、毛におおわれた動物たちはさぞかしつらい季節だったのでは……。だからこそ、秋の訪れには敏感で、全身で秋を感じているのですね。

【 入選 】

玉家屋

スカーフに番の鹿の睦まじく
手にとる秋を買う百貨店

[ 撰者からのコメント ]

短歌で「秋」といえば、パートナーを求めて鳴く鹿がよく歌われてきました。令和の今、百貨店のスカーフの中の鹿のカップルに、秋を見つける。素晴らしい発見です!

俳句

【 大賞 】

弥栄弐庫

パーラーに和栗や夕のプロポーズ

[ 撰者からのコメント ]

「和栗」の秋の華やぎ、プロポーズの時間帯の新鮮さ、パ行の音韻を駆使した全体的なリズムの跳ね具合のよろしさ、見どころ満載の句です。

【 準大賞 】

沖野晶子

草雲雀レモンイエロー色の声

[ 撰者からのコメント ]

クサヒバリの鳴き声を、作者自身の言葉でずばっと色の比喩で表現しました。「レモンイエロー」は秋の装いを間接的に想像させます。

【 入選 】

山月恍

私がスネアドラムよ梨食へば

[ 撰者からのコメント ]

しゃりしゃりとした梨の食感や音の感じを、自分を楽器になぞらえて表現する思い切りの良さに感服です。梨を食べる時にドラムの音が出るように試してみたくなります。

【 入選 】

太村星子

鳩も店内に残暑のビール飲む

[ 撰者からのコメント ]

ガラス戸からひょっこり入ってきたふてぶてしい鳩が見えます。季語「残暑」「ビール」と二つありますが、都会のだるさをさりげなく表現している「残暑」が主の句です。

入選された皆さま、おめでとうございます!

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