Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES昨年創刊35周年を迎え、関西の女性たちを元気にする情報と誌面を届け続けている月刊誌『SAVVY』の編集長、竹村匡己さん。特集でスイーツを取り上げることも多い雑誌の編集長として、今注目しているのはどのようなお菓子か? 地元を始めさまざまなおいしいショップが集まる本館地1階の食品売場をめぐりました。
スイーツはしごをスタートする前にまずは本館5階にある「SALON de thé VORIES(サロン ド テ ヴォーリズ)」に。ここは、昨年、本館がグランドオープンする前にもあったカフェで、かつて竹村さんもよく訪れたそうです。
「中2階にあったのですごく天井が低くて、穴蔵的な雰囲気が好きでした。確か、エレベーターの裏側だったかなあ……入り口もわかりづらい隠れ家的なお店でしたよね。窓から1階の売場や人を眺めながら、コーヒーを飲むのが気持ちよかったです」
竹村さんと同じように以前のお店に通っていたお客様が、本館グランドオープンとともにお店が復活してから懐かしそうに来店されることも多いようです。
当時の「サロン ド テ ヴォーリズ」は竹村さんにとって待ち合わせ場所でもありました。編集者になる前、会社の先輩たちとここで落ち合って鰻谷や南船場の酒場めぐりへの起点になっていたのです。
「今、なんばで店を出されている『バー梅木』の店主、梅木一豊さんが、20年ぐらい前、大丸心斎橋店のすぐ近く、今は『Bar Jazz』が入っているビルで、『鰻谷酒店』というバーをされてたんですよ。そこで呑んでから、梅木さんに連れられて、鰻谷のバーをぐるぐると回ってました。『ジュール』や『グランカフェ』など、クラブにも行きましたね。そういえば心斎橋の街を歩いているときは、“大丸から1本南の通りを東にちょっと行ったところ”というふうに、大丸心斎橋店をランドマークにしていたので知らぬ間にお世話になってますねえ」
さて、今回のテーマはスイーツめぐり。「サロン ド テ ヴォーリズ」でも名物のシフォンケーキを食べていただきました。
「おっ、結構わんぱくなポーションですね!」とそのボリュームに驚く竹村さん。「でもあっさりしていて、ふわっと軽い食感なので、1人でも食べきれそうです」
パーティションや壁など、店の各所にあしらわれている、ヴォーリズが残したデザインを愛でながらシフォンケーキをゆっくりいただいたあと、本館地1階に向かいました。
※2024年8月をもって閉店いたしました。
本館地1階に下りて、まず向かったのが「Delicius(デリチュース)」。箕面に本店がある、チーズケーキで有名なお店です。
「8月号の北摂特集の取材でお世話になったばかり。本店のほかには、梅田周辺にいくつかお店があるのですが、ミナミではここ大丸心斎橋店が初めての直営店なので、大阪南部の人にとっては嬉しかったんじゃないですか」と竹村さん。
店名と同じ名を持つチーズケーキが看板商品で、チーズケーキでは珍しい白カビタイプの「ブリー・ド・モー」という高級チーズを使用しています。上に杏のジャムが乗っているのも、なかなか見かけない組み合わせです。
さらに、今年の4月に新しく発売された「マスカルポーネ オランジュ」は、同じチーズケーキでありながら、まったく違った食感と味わい。二層になっていて、上層部はマスカルポーネを使ったクリーム、下はスフレのようなベイクドケーキで、間にオレンジを挟んでいます。
「オレンジの代わりにレモンを挟んだりする予定はありませんか? 実は『SAVVY』でいつかレモン特集をやりたいなと思っていまして。今年の春に初めてのいちご特集をやったところ好評で、今店頭を見ていると、レモンを使ったお菓子がすごく多いので、次にくるんじゃないかと睨んでいます」と竹村さん。
スタッフの磯田さんは、「オレンジの代わりにレモンですね…本店に聞いておきます(笑)」と。
「デリチュース」と「マスカルポーネ オランジュ」、2種類のカットケーキのアソートは大丸心斎橋店でしか販売していないので、それを買って帰り、あとでいただくことにしました。
「今、焼き芋ブームですよね。スーパーでもよく置いてますし」と竹村さん。ならばと向かったのが「蜜香屋TISOU」です。百貨店に焼き芋屋? ちょっと意外な感じがしますが、デパ地下でちゃんと芋を焼いているのです。
店長であり、芋男爵と名乗る宮本篤さんは、ポップでカラフルなキャップ、デニムのエプロンにはチェコのもぐらのキャラクター、クルテクのアップリケという、こちらもかなり百貨店では異色(?)のいでたちです。
「今、店では基本的に金時、紅遥、金茶、紅絹の4種類を置いているのですが、芋によって味わいが違ってきます。たとえば金時って、一般的によく耳にするのは鳴門金時なんですけど、土づくりからこだわっている農家さんの、その時に出回っているいい芋だけを仕入れているので、いつも違った個性が味わえます」と宮本さん。
4種類のサツマイモを観察していた竹村さん、ふと何かに気づいたようです。
「芋のとことどころから液体のようなものが出ているのですが、これは蜜?」
「蜜ですね。芋が自分自身から溢れ出させるんですよ。フレッシュな芋はハリがあってまた違った味わいがあるんですけど、熟成されると蜜がよく出てきます」と宮本さん。
秋や冬に新物が出て、それを専用の倉庫で保管して熟成させるそう。旬から外れてもしっかり管理すれば、通年美味しく食べられるのが焼き芋の魅力と宮本さんは言います。
「蜜香屋TISOU」で焼き芋と二枚看板なのがニューケンピです。
「ニューケンピは、ハリのあるシャキシャキタイプの芋を揚げています。シンプルにうまいですね。リピーターさんがめちゃくちゃ多くて、甘すぎなくていいねとおっしゃいます」と宮本さん。
とろりと熟成された焼き芋とパリポリとフレッシュなケンピ、両方を食べ比べてみましょう。
※2020年12月をもって閉店いたしました。
続いて訪れたのが、昨年の大丸心斎橋店の本館グランドオープン時に、初めてブランドとショップを立ち上げ、全国でもここに1店舗しかないという「BUTTER ROUEN(バタールーアン)」。
店内装飾からパッケージ、スタッフが身につけるシャツ、帽子、手袋まで品のあるパープルでコーディネートされ、上質な雰囲気を醸し出しているお店では、さまざまなフレーバーの発酵バターと、それを使ったパンケーキサンドとビスケットを販売しています。この発酵バター、実は神戸に本社を置く、昆布の「ふじっ子」で有名な「フジッコ」がつくり出しています。
「『フジッコ』では、2004年から『カスピ海ヨーグルト』を販売しているのですが、その独自の乳酸菌を使ってつくったバターなんです」と、ブランド責任者の江見武志さん。
ケースの中には、「シシリーグリーンピスタチオ」、「ハニーレモン」、「ゲランドの塩&トマト」など9種類のフレーバーのバターが並びます。
「家では僕がごはん担当で毎日料理してるんですけど、このバターがあれば、バリエーションづくりにいいですね。カシス、フランボワーズ、ストロベリーの3種類が入った『トリプルベリー』なんかは、肉料理に合いそう」と竹村さん。
江見さんも、「パスタやリゾットに使ってもいいし、マンゴーやパインが入っている『トロピカル』のバターはエビチリに入れるとおいしいですよ」
店頭では、白身魚のソテーやサンドイッチなど、フレーバーバターを使ったさまざまな料理のおいしそうな写真やレシピが掲載されている冊子「ROUEN KITCHEN」が無料配布されているので、ぜひ手に取ってみてください。
パンケーキサンドは、ちょっと甘みのあるパンケーキの生地にフレーバーバターをサンドしています。
「バターサンドというと、バターにいろいろクリームに混ぜてバタークリームにすることが多いのですが、どうしても重くなりがちなんですね。『バタールーアン』では軽やかな発酵バターだけをサンドしているので、すごく口当たりがやさしく、あっさりしてると思います」と江見さん。
ルーアンとは、パリの北西部にある都市の名前。ジャンヌ・ダルクが最後を迎えた街とも言われていますが、バターをランプの燃料にするなどバターを愛する街だったそうです。
「パッケージもかわいいいし、バターやスイーツをギフトにしたら喜ばれると思いますね」と竹村さん。
紫色に包まれた、他にはないここだけのギフト。贈られると嬉しくなるに違いありません。
『SAVVY』では、これまでバレンタインデーの時期に、何度かチョコレートを特集していますが、最後に訪れたのが、「LE CHOCOLAT ALAIN DUCASSE(ル・ショコラ・アラン・デュカス)」。フランス料理の大御所、アラン・デュカス氏が手がけるショコラトリーです。
「ル・ショコラ・アラン・デュカスは関西ではここしかないんですよ。チョコレートの世界では、今カカオ豆からチョコになるまでを一貫してつくる“ビーン・トゥ・バー”がすっかり定着しているのですが、ここもそうですね」。
サードウェーブとして一時ブームとなったコーヒーのように、チョコレートも豆を厳選し、カカオの度合いも20%から70%以上など多様化しているという竹村さん。「ル・ショコラ・アラン・デュカス」でもカカオ100%のタブレット(板チョコレート)を売ってたりもします。
「人気なのは、ガナッシュやプラリネのボンボンショコラの詰め合わせのタイプ。ドライフルーツやナッツが散りばめられたチョコも人気です」とスタッフの野々村さん。
「産地別に食べ比べられるのが面白いですね」と竹村さんが注目したのは、コフレ・カレ・デギュスタシオン オリジン3種詰め合わせ(24枚入り2,700円)。マダガスカル、ペルー、ジャワの3つの産地の味が楽しめます。
野々村さんいわく、「マダガスカルが少し酸味があって、ペルーは華やかな風味、ジャワはスモーキーですね」。
大丸心斎橋店の「ル・ショコラ・アラン・デュカス」では、チョコレートを使ったデザートとドリンクをいただける「ル・サロン」があります。人気商品のクープ・グラッセ・オ・カフェをいただくことにしました。
「それほど甘くないですね。そして思ったより冷たい。かなり大人の味で、これはウイスキーなどど合いますね」と竹村さん。
中にはコーヒーとチョコレートのアイス、コーヒーのグラニテが入っていて、コーヒー風味の生クリームをオン。温かいチョコレートソースは、ル・ショコラ・アラン・デュカスのオリジナルブレンド75%です。
「ル・ショコラ・アラン・デュカス」では、オープン 1周年を記念して、特別メニューのマカロン3個セットを販売します。
「中にチョコレートのガナッシュを挟んでいますが、3種類味が違っていて、カシスとプラリネとシトロンヴェール・ジャンジャンブルです」と野々村さん。
期間限定のマカロンセット、先に購入したスイーツと合わせて、別室で食べることにしました。
別室に移動して、本館地1階で購入したスイーツを食してみました。甘いものの特集が多い『SAVVY』ですが、竹村編集長、ふだんからスイーツをよく食べられるのですか?
「仕事柄食べますね。一日にいちごパフェ5つ食べたり(笑)。1年前の大丸心斎橋店本館グランドオープンの時も、地下1階は全店回りました」。
テーブルの上にたっぷり置かれた色とりどりのスイーツに目移りする竹村さん。まずは、1周年期間限定メニューの「ル・ショコラ・アラン・デュカス」のマカロン3個セットからいただきます。
「チョコがズシっときました。カシス味ですけど濃厚ですね。すごく上質なチョコの味は、ヨーロッパのクラシックなお菓子という感じがします」。
高級チョコレートに続いては庶民的な焼き芋と、華麗なる(?)展開。大丸心斎橋店スイーツの幅、奥の深さを見せつけてくれます。
「これは、めちゃくちゃ軽い。金時ですけど、芋そのものが素直にすごくおいしくて甘ったるくない」
ニューケンピは、硬いけどクセになる味で、酒のつまみにもいいとのこと。
「バタールーアン」のパンケーキサンドは、ハニーレモン、ピスタチオ、プレーン、イチジク、トロピカル、トリプルベリーの6種類をいただきました。
「お店で江見さんがおっしゃてた通り、確かに軽いですね。あれ、僕、さっきから軽いか重いかしか言ってません?(笑)。でもしつこくなくて、食べやすいです」
最後に、「デリチュース」のチーズケーキをいただきます。
「北摂特集のスイーツ取材でたくさん食べたのですが、安定の味ですね。ケーキ自体はそれほど甘くないのですが、杏で甘さをカバーしている感じ。全体的に味がやさしくて、子どもでも年配の方でも食べられる飽きない味ですね。新作の『マスカルポーネ オランジュ』はふわふわの食感で軽いです」。
それぞれ個性的ないまどきのスイーツを味わってくれた竹村編集長、次のスイーツ特集はどのようなものになるのか? 今から楽しみです。
月刊誌『SAVVY』編集長。1975年生まれ。京都市出身。大阪市立大学卒業後、保険会社のSEを経て、2000年に京阪神エルマガジン社入社。『Lmagazine』、『SAVVY』、『リシェ』などの編集部を転戦し、2014年から『Meets Regional』編集長。2019年8月から現職。
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/コーダマサヒロ 取材・文/蔵 均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVESProfessional's Eyes Vol.4
Professional's Eyes Vol.2