Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES大阪の土佐堀と東京で料理教室を開き、日本料理の奥深さや楽しさを知ることができると人気を呼んでいる料理家の吉田麻子さん。TV出演や料理本の上梓など幅広く活躍する彼女が、いつも使っている食材や調味料、暮らしの中の愛用品とは? 大丸心斎橋店とは、浅からぬ縁もあったようで……。
吉田家は、麻子さんの祖父祖母の代から大丸心斎橋店とのゆかりが深く、麻子さんが赤ちゃんの頃から、日用品をはじめ雛人形などの特別なものまで、大丸で揃えていたそうです。
「私の子どもの頃の遊び相手は、大丸心斎橋店の外商さんだったぐらい(笑)。深いつきあいでしたね。ほうき1本でも大丸心斎橋店で買うような家族で、母の嫁入り道具もほとんど大丸。私も成人式の振袖もここでつくったし。思い出がたくさんありますね」
そんな大丸心斎橋店とゆかりのある吉田さんだから、日本料理にとってとても大切な味噌も自然と「大源味噌」に慣れ親しんだのは当然かもしれません。なぜなら、江戸時代末期に創業し、200年近くの歴史を持つ老舗ですが、日本橋の本店以外で直営店があるのは大丸心斎橋店だけだからです。
「昭和48年から大丸心斎橋店に出店させていただき、ずっとここだけで50年近くやってます」とは代表取締役の安齋善行さん。
吉田さんは、阿倍野にある辻調理師専門学校出身。学校でも「大源味噌」を使っていたそうですし、大阪の名割烹などでも使うところが多く、大阪を代表する味噌と言えそうです。
「味噌には種類がいろいろあるので、料理によって使い分けてますね。魚の西京焼きでしたら甘口の特白荒。そこに甘酒を入れて伸ばして味噌漬けにするんですよ。味噌汁なら、松風や麦こうじ。毎日飲んでも飽きない、お上品な感じなんですが、力強さもあって」と吉田さん。
料理教室でも、「大源味噌」をよく使うという麻子先生。生徒さんにもファンが増えたそうですが、中でも特に人気がある味噌があります。
「みんな大好きなのが、超特ぞうに味噌。うちの教室では、年内最後のレッスンで大源さんの超特ぞうに味噌を使って雑煮をつくって締めくくるのが恒例になっています」
大丸心斎橋店でも、これを買いに年に1回だけ来店するお客様もいるという、絶大なる人気の超特ぞうに味噌。今年も11月25日頃から年内いっぱいまでの期間限定で販売予定です。
「その他、店からのおすすめは宝香(300g・1,425円)です。プレミアム醸造シリーズで、魚沼産の無農薬の原料を使って、天然醸造しています」と安齋さん。
「この味噌は無添加で体にいいと思います。ちょっと値ははりますけど、調味料は材料や作り方を見て選びたいですよね。だしや味噌、醤油などはいいものを使ったら、材料がグッとおいしくなると思います」と吉田さん。
“おいしい”への近道は味噌にあり、ですね。
続いて訪れたのは、同じ地下1階にある「鶴屋八幡」。こちらの和菓子も吉田家では欠かせないもののようです。
「母と祖母はお茶をしているので、主菓子とか、きんとんも好きですし。季節ごとに和菓子を買います」と吉田さん。
節分には枡に見立てた生菓子、端午の節句には柏餅など、「鶴屋八幡」の季節のお菓子を楽しみにしているという吉田さん。中でも春のみたらし団子は特にお気に入りです。
「和菓子がすばらしいなと思うのは、材料が同じで味や香りもそれほど変わらないのに、一目見ただけでその時の季節がわかるということ。色や形だけで季節を表現するところがすごい。きんとんなどでも、色だけでこれは桜で、そろそろ春だなってわかるわけですよ」
「鶴屋八幡では、今なら秋のきんとんとして、栗きんとん(453円)などが用意されています。「ウサギの形になっている月うさぎ(388円)も置いています。お月見の時はすごく人気でしたね」と店長の池田遥奈さん。
文久3年創業で150年以上の歴史を持つ「鶴屋八幡」。当時の資料が残り、今でも創業時のお菓子がそのまま再現されているものも多いそう。一方、今の時代に合った生菓子もつくられています。
「今なら、ハロウィンにちなんだ生菓子もあります。中にこし餡が入ったカボチャと白あんが入ったゴーストです」と池田さん。
小さい頃から、どら焼きといえば「鶴屋八幡」の舞鶴(1個216円)だったという吉田さん。こちらで使われている餡は国産の大納言小豆を炊き上げるなど、「鶴屋八幡」ではあんこにこだわりがありますが、吉田さんは、粒あん、こし餡、どちら派?
「どっちも好きなんですけど、最近はわりとこし餡派ですかね。あんこをつくるだけで時間と手間がかかるし、和菓子文化はもっと見直されてほしいなあ……。ケーキやマカロンも好きですけど(笑)」
主張しすぎないところが日本らしくて和菓子が好きだという吉田さん。脈々と受け継がれてきた文化は、今も大切にしたいものです。
「ここのお洋服は何年も長く着られるのがいいですね。上質な日常着という感じで、主張しすぎないけど、ちゃんとつくっていて、おしゃれだし、着心地いい。尊敬する素敵な友人に『麻ちゃん、ここの服似合いそう』と言われて着てみたらすごくよくて、それ以来よく買って着ています」
そう言って吉田さんがお気に入りなのは、大丸心斎橋店本館5階にある「PLAIN PEOPLE(プレインピープル)」。今年で11年目を迎える日本のブランドで、関西のショップは3店しかありません。
「衣食住のコンセプトストアとして、洋服はシンプルで上質なもの、食品は体に優しいものなど日常をワンランクアップさせてくれるアイテムをトータルで揃えるライフスタイルブランドです」と店長の田中典子さん。
グレーの壁にアートが飾られ、ゆったりした空間の店内を巡っていた吉田さんが、「これかわいい」と手に取ったのは、「Intoca.(イントゥーカ)」のニットのワンピースです。
ワンピースに合わせたネックレス (13,200円)は「MATERIA DESIGN(マテリア デザイン)」というイタリアのブランドで、「女性2人で作っているのですが、軽い素材のアートなものが多く、金属アレルギーの方も身に着けやすいです」と田中店長。
金属アレルギーで悩む人にとってうれしいアクセサリーは他にもあります。
「このイヤリングはいいですね。金属じゃないから軽いし挟むだけでいいし、ピアスホールを空けてない方はいいと思いますよ」
そう吉田さんが注目したのは、「acrylic(アクリリック)」のイヤリング。シンプルな形のリングやチャームをいろいろ組み合わせられるスタイルです。
「ここは洋服も素敵ですけど、食まわりのアイテムもいいんですよ。私が好きな『WASARA』のうつわも置いていて。紙製で使い捨てなんですけど、このワインカップもかわいいでしょ?」と吉田さん。
その他、雑賀 吟醸赤酢(608円)や、お手間とらせ酢(660円)、柚子寿司召し酢(407円)など、「プレインピープル」で知って、料理教室で使っているものも多いそう。料理家として、やはり調味料が気になったところで、次は、海外や全国各地からさまざまな食材や調味料を集めるグロッサリーヘ向かうことにしました。
大丸心斎橋店本館地2階、心斎橋フードホール内にある「おあじお」は、全国から集めた珍しい食材や調味料を置いているグロッサリー。麻子先生、早速広い店内を真剣な眼差しで見て回ります。
「この『フレスコバルディ』のオリーブオイル、ヌオヴォ・ラッコルト(500ml・5,724円)。めちゃくちゃおいしいですよ。バゲットにかけたり、サラダなどと和えたり、冷ややっこにかけたりもしています。和食にも合うんですよ」と吉田さん。
少々値が張る商品ですが、贈りものとして使われることも多いそう。素敵な箱入りで、いただくときっとうれしいですね。
「あと湯浅手造り醤油(300ml・648円)を使いますし、千鳥酢(360ml・550円)と純米富士酢(500ml・756円)は使い分けて、坂元のくろず(360ml・1,058円)も好きで、鹿児島の工場にも行きましたよ。三福海苔の佐賀海苔 香味干し(20g・1,458円)もめちゃくちゃおいしい。海鮮丼にかけたりパスタにかけたり。おひたしにちょっとかけたり……」
さすがは食のスペシャリスト。おすすめの調味料が次から次へと出てきます。そんな麻子先生でも初めて出合うものはあるようで……。
「この舟形マッシュルームの乾燥マッシュルーム(10g・432円)は初めて見ますけど、面白いですね。ドライポルチーニや乾燥しいたけは聞きますけど、これは珍しい。スープやパスタに入れるとよさそう」
先生、さすがお目が高い。この商品は、10月に入ったばかりの新商品で、こちらの商品を使用したクリームスープの素も大人気だそうです。その他、コーナーからコーナーへとめまぐるしく動きながら、商品を見ていく吉田さん。しばらくすると、食材を絵選ぶ際、ある一つの基準を持っていることがわかってきました。
「できるだけ、大阪のものを使いたいとは思っていますね」
そうした視点で、麻子先生が使っているのが、大阪市生野区に本店がある鴻商店の砂糖や、堺のやまつ辻田の七味や山椒、八尾の旭食品の旭ポンズなど。
「鴻商店の生砂糖はめちゃくちゃいいです。お正月に黒豆を炊く時などに使うのですが、えぐみが全然なくて、すっきりした味わいに仕上がります。波照間産特等純黒糖だったら深みが出るし、嫌味がない味と言うのかな」
全国でここにしか店舗がない「おあじお」だけに、大阪の味、関西の味はなるべく置くようにしているそうです。
大阪愛が強い吉田さんですが、ドリンクコーナーでは、全国のご当地ドリンクにも反応。「私、結構こういうの好きなんです!」と食いついたのは関東栃木レモンや、飲むみかん、みかぽんなど。店長いわく「先生が今見てらっしゃたのは、全て売れ筋です!」と。さすがですね!
「全部買って帰りたくなりました。こういうグロッサリーは、よくリサーチをされていて新しいものをたくさん置いている。だから店を歩いて、こういうのが流行ってるんだ、こういうのがあるんだと勉強するんですよ」と吉田さん。
楽しみながら学ぶ。食への探究心の一端が垣間見えました。
たくさんの調味料や食材を吟味した後は、それらを使った料理を盛り付けるうつわを見に、大丸心斎橋店8階の「ROYAL COPENHAGEN(ロイヤル コペンハーゲン)」へ向かいます。
「『ロイヤル コペンハーゲン』のうつわといえば、白にロイヤルブルーのカラーリング。この色の組み合わせって和食にも合うんですよ。私は、煮物や焼き魚をのせています。造りもいいですよ」と吉田さん。
確かに、この美しい皿に刺身が盛りあわされているのを想像すると、とても合うような気がします。
「柄が主張しすぎないから、毎日使っても飽きない。伊万里などで昔から染付になじんでいますし、日本人が好きな色合いだと思いますよ」
そう言う吉田さんが、昔から時間をかけて集めているのが、ブルーフルーテッド・フルレースという柄のうつわ。これは、どんな柄なんでしょうか? 石橋祥子ストアマネージャーに伺いました。
「1775年創業の『ロイヤル コペンハーゲン』で、一番最初にできたデザインがブルーフルーテッドという柄です。その中でうつわの縁取りにレースがあるのがフルレース。本来レースの部分は一つ一つ手で穴を開けるのですが、カップ&ソーサーは、穴を開けると飲み物がこぼれたりしますので、レースの部分をペイントで表しまして。これをハーフレースと言います」
フルレースのティーポットやシュガーボウルも所持しているという吉田さんは、大の紅茶党。朝、昼、晩にと毎日飲むそうです。
「母も紅茶が好きで、『ロイヤル コペンハーゲン』のカップ&ソーサーをいつも使っています。私は忙しさにかまけて、ついついマグカップを使ってしまうことも多いのですが(笑)」
「こちらは、しっかり握りこんでいただいても本体に指が当たらないつくりになっているので、熱々のミルクを注いでいただいても「アチっ!」とはならないんですよ」と石橋さん。
丈夫で飽きがこず、長く愛用しているという吉田さん。
「口当たりやテクスチャーもよくて、これを使っていると生活が豊かになりますね。クッキー一つを食べたり、朝に食パンをのせるのでも全然違うと思います。子どもの頃からそんな環境で育ったので、やっぱり食器がよくないと落ちつかないですね」
おばあさまやお母さまとの暮らしから、長く使い続けることができる良質なものを知る吉田麻子さん。これからも、いつまでもずっとおいしく食べられる料理をつくってくれるに違いありません。
大阪出身。「安全でおいしいお料理を食卓にお届けしたい」をモットーに日々料理を作っている。料理本の執筆、企業のレシピ開発、食育、料理教室、料理イベントなど多岐に渡り活動。NHK『きょうの料理』に出演するなど、特に確かな技術に裏打ちされた日本料理に定評がある。主宰する教室は予約の取れない料理教室と評判に。2018年、2019年、料理レシピ本大賞料理部門に連続入賞を果たす。2020年3月27日に新刊『吉田麻子の簡単、おいしい魚料理』を出版。
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/岡本 佳樹 取材・文/蔵 均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
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