Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES「歌ネタ王決定戦2019」の王者に輝くなど、若手漫才師のホープとして脚光を浴びるラニーノーズの洲崎貴郁さんと山田健人さん。共に「よしもと漫才劇場オシャレ&ダサイ芸人ランキング2019」のオシャレ芸人ランキング上位者で、ファッションにも注目が集まるお二人ですが、プライベートではカジュアルな洋服が大半だそう。これからキャリアを重ねるからこそ試してみたい大人のスタイルを学ぶべく、大丸心斎橋店をめぐりました。
※2021年7月をもって閉店いたしました。
「僕らにとって大丸心斎橋店といえば、大丸心斎橋劇場。よしもとNSCが主催するお笑い賞レースの会場で、その時に芸人がめっちゃ集まる。買い物で来るのは大人になって初めてかもしれません」と、山田さん。
心地よい緊張感に背筋を伸ばして館内を歩き、まず訪れたのは「FREEMANS SPORTING CLUB(フリーマンズ スポーティングクラブ)」。ニューヨークのコミュニティ・レストランから始まったというメンズクロージングショップです。レストランに集う仲間が理想のファッションやヘアスタイルを語り合ううち、テーラーとバーバーが誕生。そんな創業ストーリーに、洲崎さんと山田さんは早くも興味をそそられたようです。
シャツやスーツをフルオーダーできるテーラーと、カジュアルウェアが揃うショップ、さらに理髪職人が常駐するバーバーも併設。まさにブランドの物語を体現したようなスタイルは、日本では東京・銀座とこちらのみ。クロージングとバーバー、それぞれの魅力に触れるべく、洲崎さんは洋服探し、山田さんはヘアセットへ。ひとつの店舗でそれぞれの時間を過ごします。
「私服はほとんどがいただきものなんです。実はファッションのことはよくわかっていなくて」。そう恐縮する洲崎さんに、スタッフの金海裕貴さんがおすすめしてくれたのが、「フリーマンズ スポーティングクラブ」のオリジナルセットアップ。さらに「Champion(チャンピオン)」のパーカーを合わせるというカジュアルなスタイリングです。
「今季のコレクションテーマは、70年代のニューヨーカースタイルにアクティブなディテールを進化させた”ニュートラディショナルスタイル”。セットアップもその一つで、ジャケットは英国の老舗メーカーMOON社のウール素材を使っています。パンツはベルトループのない、クラシカルなブリティッシュスタイルです」と金海さん。
「ちょうどセットアップが欲しいと思っていたんです。すごく軽くて着心地がいいですね」と、一着目からお気に入りを見つけた洲崎さん。
「フリーマンズ スポーティングクラブ」は、1960年代の米国の生活様式を取り入れた内装も特徴的。クロージングスペースからバーバーまでウッド調で統一された空間は、とても落ち着きます。
「僕もファッションへのこだわりはなくて」と、バーバーのシートに着いた山田さん。「ヘアスタイルの悩みは、たまに思想強めの女の人に見られること(苦笑)。なので、女性に見えないような髪型にしてもらえますか?」と、ヘアセット付きシャンプー(2,200円)をリクエスト。
理髪職人歴24年の店長を筆頭に、腕利きのスタッフが揃う店舗ゆえ、山田さんのようなレアなオーダーにも難なく応えてくれます。刈り上げに定評あるカットの他、家族との買い物のわずかな待ち時間に利用できるシャンプーやシェービングといった気軽なメニューも。
山田さんのこの日の服装も確認しながら、セットを手掛けたのはスタッフの奥山一也さん。「トップにボリュームを出しつつ、まわりは絞めることで男らしくカジュアルな仕上げにしました」。
「かっこいいですね。やったことのないスタイルで嬉しいです」、そう話す山田さんの表情はどこかキリリとしています。
相方のシャンプー中、洲崎さんはセーターにマッカーサーパンツを合わせる第2のコーディネートでさらに変身。「すごい…! 俺、大人になった」と照れ笑い。火が着き始めたファッション欲をひとまずなだめて、店を後にしました。
※2023年7月をもって閉店いたしました。
続いては、大阪発のバッグブランド「master-piece(マスターピース)」の新展開、「planb master-piece(プランビー マスターピース)」です。「マスターピース」は新発想を備えた機能的なバッグに定評があるブランド。関西に2カ所ある自社ファクトリーの職人が手掛ける品質も抜群。ブランド立ち上げから26年、今では全国に数多くの店舗を構える名ブランドですが、新たな試みとなる「プランビーマスターピース」は大丸心斎橋店のみ。なかでも壁一面に並ぶ植物が異彩を放ちます。
「カバン屋なのですが、植物も販売しているんです」とスタッフの森位さん。
長年、移動に欠かせないバッグを追求するうち、移動スタイルそのもののデザイン=“移のデザイン”を再考。新たな価値観を提案する場所として始まったのがこちらの店舗です。
「最近、引っ越しをして。風水ができる芸人仲間に部屋を見てもらったら、リビングに観葉植物を置くと運気が上がると言われて。だから植物がすごく気になります」と山田さん。
国内では流通の少ないレアな塊根植物や多肉植物が揃い、あれこれと気になる様子のお二人。店内では異ジャンルのブランドや作家とのコラボレーションも積極的に開催。この日は珍奇植物のパイオニア、西畠勲造さんのセレクションが点在していました。個性的な植物に目移りしながらも、洲崎さんが気になるバッグを見つけ手に取ります。
「思っていた感触じゃない!」と意外な反応を示したのは、黒のバックパック。
「表面は未染色のポリエステル糸、裏面は黒く染めたポリエステル糸で編み上げたメッシュ素材を使用しており、後染めをすることにより、奥行きのある表情になっています。『マスターピース』は機能性を重視したバッグが多いのですが、『プランビー』はファッション性を大切にしています。これはメッシュならではの柔らかな感触も人気です」と森位さん。
隣で山田さんが手にしたのは、「nunc(ヌンク)」のNear Hereバッグ。
「通称、ちょい呑みバッグと言います。ちょっと呑みに行くときに、中にスマホと小さな財布を入れるのに程よいサイズで、鍵はショルダーストラップに付けられる。酔っ払っても大切なものを失くしづらいカバンなんです」と森位さん。ミニマルなのに機能性抜群。「マスターピース」の秀逸なアイデアとデザインが存分に発揮されたアイテムです。
「財布も鍵もよく失くすからぴったりかも。デザインもすごくかっこいいですね」と、山田さんもお気に入りを発見。
「すごい! ダリ・シューズ。ダリらしくシュールで靴底まで歪んでいますね。これ欲しいな」。実は父がデザイナーで、兄が画家という山田さん。「絵は好きです。でも美術に詳しいわけではなく、ダリほど有名なアーティストならわかるんですけど」。
「MoMA Design Store(モマ デザインストア)」は、ニューヨーク近代美術館のキュレーターが選んだ国内外の雑貨やプロダクトをはじめ、MoMAオリジナルのアイテムが揃うミュージアムショップ。店頭で山田さんが目を奪われたのは、9月末に登場したばかりの、MoMAとシューズブランドVANSによるコラボレーションシューズ。
「MoMAとVANSのコラボレーションは早くも好評をいただいています。11月の第2弾リリースはムンクやジャクソン・ポロックなど4名のアーティスト作品をフィーチャーしたスニーカーやアパレルアイテムで、特にムンクは刺激的な仕上がりになっていますよ」と、スタッフの上本麻衣さん。
「お家でもアートを楽しんでもらえるように」と揃えられた時計やカレンダー、スピーカーなどのインテリアアイテムも、MoMAが厳選したグッドデザインばかり。洲崎さんが楽しそうに開いて見せたブックランプも、閉じた状態では美しい木製ハードカバーの本のよう。開けば立体的なプリーツが光り輝くユニークな仕掛けです。
ニューヨーク近代美術館が所蔵するゴッホやピカソなど、名画家の作品をデザインとして昇華させたプロダクトも数多く、とりわけ草間彌生のアイテムは大充実。数年前に草間彌生展を訪れたという洲崎さんは、鮮やかな水玉模様を前に、展示で観た作品のことも思い出していました。
さらに楽器が並ぶ一角を見つけ、手にしたのはウクレレ。歌ネタの音曲漫才を武器にするラニーノーズですが、舞台で握るのはアコースティックギター。「ウクレレはまったく別物なんですけどね」と笑いながらも山田さんと肩を並べる姿は、やっぱり絵になります。
※2022年2月をもって閉店いたしました。
「服好きの同期の芸人が『Barbour(バブアー)』のジャケットを買った! と言っていて。洗ったらあかんというのは聞いたことがありました」と洲崎さん。
1894年創業の「バブアー」は、英国を代表するアウトドア・ライフスタイルブランド。英国王室御用達の証であるロイヤル・ワラントを授与されるなど、その真摯なものづくりと高い品質は長年愛され続けています。
「バブアー」の定番といえば、ワックス加工を施したコートやジャケット。それもバリエーションはさまざまあり、一目ではモデルの違いに気づきにくいものもあります。スタッフの栗生準也さんが人気モデルの魅力を丁寧に教えてくれました。
「最も代表的なモデルはビデイル。本来は乗馬用のコートで、サイドにベンツと呼ばれる切れ込みがあり、可動域を広げられる仕様になっています。もう一つ人気のモデルがビューフォート。これは狩猟用ジャケットで、バックにトンネルのようにひと繋がりのポケットがあるんです。狩りに使うロープや銃、仕留めたハトやウサギなども入れてカバン代わりに使われていたそうで、現在もその名残あるデザインになっています。一見、同じような形でも、それぞれにエピソードがあって」。
「説明がすごくお上手ですね」と山田さんが言えば、「デザインがそのままというのも面白い。歴史を感じました」と洲崎さん。2人して、栗生さんの話にすっかり魅了されたようです。
山田さんが試着したのは、王道のビデイル(53,900円)。
「着心地がいいですね。でも、ちょっとイカツイかな?」と気にされながらも、モデルさながらスレンダーな山田さんにとてもよく似合っています。
洲崎さんが気になったのは、スタッフの栗生さんが着ているスペイ(57,200円)。フライフィッシング用に考案されたもので、身に付けたまま川へ入れるようにショート丈に仕上げられたジャケットです。常々愛用するアニメキャラクターTシャツを着た洲崎さんは、「こんなポップな服の上でも大丈夫でしょうか?」と相談。
「大丈夫ですよ。Tシャツの上から羽織ってレイヤードの形で着ていただくのもおすすめです。最近ではパーカーとゆるいパンツを合わせるストリートスタイルで着られる方も増えています」と栗生さん。
雨風を凌ぐ防水ジャケットという機能性はそのままに、カジュアルな洋服にも合わせることができる応用力の高さも「バブアー」の魅力ですね。
※〈LABORATORIO MANGIA ラボラトリオ マンジャ〉は2024年7月をもって閉店いたしました。
大人のファッションを楽しんだラニーノーズのお二人が、最後に訪れたのは本館地2階の「心斎橋フードホール」。オープンキッチンスタイルを中心としたフードホールには、和洋中、エスニックなど多彩な13の専門店が集まっています。
いつも仲間との食事ではビールやチューハイが大半というお二人が、ファッションと同じくちょっと背伸びをして立ち寄ることにしたのが「Liquorshop GrandCercle(リカーショップ グランセルクル)」。日本酒からブランデーまでお酒全般を揃えるショップですが、圧倒的なバリエーションを誇るのがワインで、ラインアップは500種前後にのぼります。
どう選べばいいの?と目移りする洲崎さんに、シニア・ソムリエでありスタッフの小谷淳さんがおすすめの一角へ案内してくれました。
「良質なワインは、どうしても値が張るんですよね。でも、私たちはやっぱりええもんを飲んで欲しい。だから、“スペシャルバリューコーナー”では、あえて特別価格で販売しています」と小谷さん。そのコーナーで、おすすめのワインを訊ねます。
「例えば、『グランセルクル』が直輸入しているオーセイ・デュレス。渋みが少ない赤ワインで、華やかな果実味とほんのりとした酸味があります。チーズに合わせると甘い味わいに変わるのも特徴です」と小谷さん。
「これにします!」と、即決したのは山田さん。「今のお話を聞いたら、もう飲みたい。ワイン素人にもわかりやすく教えてもらえるのがありがたいですね」。
ワインに合わせるフードは「LABORATORIO MANGIA(ラボラトリオ マンジャ)」へ。生ハムとチーズの専門店で、特にファンが多いのは長期熟成タイプの生ハム。熟成期間は18〜36カ月の4種、部位もプロシュートとも呼ばれるモモや、お尻に近いシンタマなど稀少なものまで揃います。
「実は肉を食べるのは1週間ぶりなんです。YouTubeの企画でヴィーガン生活をしていて」と山田さん。
オーダーしたのは4種の生ハムが食べ比べできるプレート、ALLSTAR!!!(1,998円)。ワインに合わせたチーズも外せないと、フレッシュチーズのブラータ(550円)もトッピングすることに。
「ラボラトリオ マンジャ」では注文ごとに生ハムをスライスしてくれるのも魅力で、切り立ては空気をまとったように軽やか。その食感は極上です。
「ふわふわでとろける食感ですね。ワインもめちゃくちゃ美味しいです」と洲崎さん。ヴィーガン生活解禁の山田さんも、フォークが止まらない様子で生ハムを、時々ワインとチーズを味わい至福の表情に。
ファッションもワインも生ハムも、これまでとはちょっと違った上質なものに触れることができたラニーノーズのお二人。漫才でもこれから一味違った笑いを見せてくれるに違いありません。
吉本興業所属の音曲漫才師。大阪府枚方市出身の洲崎貴郁と箕面市出身の山田健人が、関西外国語大学短期大学部での出会いを機に結成。2008年にスタートしたロックバンドRunny Noize(ラニーノイズ)としての音楽活動も並行。『歌ネタ王決定戦2019』優勝。毎月、よしもと漫才劇場で単独ライブの開催も。
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/コーダマサヒロ 取材・文/村田恵里佳 編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVESProfessional's Eyes Vol.8
Professional's Eyes Vol.6