Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVESお菓子やパンの取材・執筆からスイーツイベントの主催、ディレクションなど、お菓子を専門に幅広く活躍するスイーツライターのいなだみほさん。かわいいもの、かわいいお菓子が大好きだといういなださんと、クリスマスのスイーツを目当てに大丸心斎橋店の本館地1階をめぐりました。
「クリスマスの思い出といえば大勢で集まる女子会ですね。今年はどこのビュッシュ・ ド・ノエル(ケーキ)にする? どこのがかわいい? なんてリサーチして、わざわざ神戸の自宅から京都までケーキを買いに行ったこともありました(笑)」と話すいなださん。
「わ〜! これ、キレイ。これがあったら女子会も盛り上がりそう」と初めに訪れた「LE CHOCOLAT ALAIN DUCASSE(ル・ショコラ・アラン・デュカス)」で、いなださんが思わず見入ったのはアーブル・ド・ノエル(16,200円 ※以下すべて税込価格)。
キャラメリゼしたナッツ、ドライフルーツなどがちりばめられたショコラのディスクを組み立てるツリーはクリスマス限定品です。
「組み立てるところから楽しいですね」とキットを前に目が輝きます。
口にするとナッツとチョコレートの組み合わせが、それぞれの風味を際立たせています。
「ミルクチョコといっても甘くないですね。塩のミネラルが効いていて味のバランスがお料理に近いような気がします。使われているレーズンも凝縮感があってプラムみたい! ナッツも高品質だとわかりますね」といなださん。
「ル・ショコラ・アラン・デュカスは料理と同様に、素材にこだわっていて、ナッツはイタリア産です」とは、店長のフォユット・ドロタさん。そもそもなぜ、フランス料理界を牽引するアラン・デュカスがショコラ専門店を開いたのでしょうか。
「アラン・デュカスは若い頃、パティシエの仕事もしていたことがあって、ショコラティエの道へ進むか悩んだことがあるんです。ショコラ専門店のオープンは彼の夢でした」とドロタさん。
フランスでは2013年にオープンし、日本へは2018年3月に東京・日本橋に上陸。関西では、この大丸心斎橋店でしか出会えないスペシャルなお店なのです。
さらに、いなださんが注目したのは、クリスマスツリーに飾るオーナメントを模したレグザスター(3,456円)。
「飾っておきたくなりますね」といなださん。やや厚いチョコレートの中には、アーモンドプラリネと栗のクランブルがたっぷり。アーモンドや栗の風味が際立っています。
「ところで、どれもパッケージがかっこいいな」と、いなださんポツリ。やはりデザインは気になる様子。
「ル・ショコラ・アラン・デュカスはエコにこだわっていて、パッケージにはナチュラルな素材を使っています」とドロタさん。近年、フードロスやエコに配慮する考えが広がっている料理界らしさがここにもにじみます。
「シンプルでおしゃれだから、年配の方へのプレゼントや男性にも喜ばれそうですよね」
続いて足を運んだのは「PAPABUBULE(パパブブレ)」。“世界一面白いお菓子屋さん”をコンセプトに、世界30都市で展開する、スペイン・バルセロナ発祥のアートキャンディショップです。
「キャンディ制作の実演があって、見ていて飽きないですよね。以前、ロリポップキャンディづくりの体験もしたことがあるんです」といなださん。
積極的に製造にも加わるいなださんの旺盛な好奇心がうかがえます。アートキャンディを制作する実演が見られるのは、西日本では大丸心斎橋店のみ。職人が華麗な技を目の前で披露してくれます。
「わ、これなんですか!? (笑)おもしろーい!」といなださんが注目したのは、なんとマシュマロで作られた七面鳥。事前予約が必要なクリスマス限定品です。
「結構、弾力があるんですよ(笑)」とスタッフに促され、ディスプレイされたサンプルに触れてみるいなださん。まるで本物の鶏の筋肉に触れているかのような、指を押し返す弾力もリアルで、笑顔を誘います。
切ってみると、中からはクランベリーやフリーズドライのいちご、粗く砕いたホワイトチョコレートやミルクチョコレートがゴロゴロと。マシュマロに加えたレモンの酸味やベリーの酸味が効いています。
「食べる箇所で味が違うし、切って中を見るのも楽しいですね。テンションが上がっちゃう! 食べ応えがあるから、大勢で楽しめそうです」
「パパブブレ」を代表するミックスキャンディには、ヒョウ柄などを描いた大丸心斎橋店限定ミックス(641円)も。
「パパブブレのキャンディは噛むと、シャリッと崩れる食感がいいですよね。お値段も手頃だから、ちょっとした手土産に買うことが多いですね」
いなださん、かわいいものを見つけたら、自分用と誰かに渡す手土産用をつい買ってしまう、自称“贈り魔”だそう。そんな贈り魔にとって「パパブブレ」は重宝するお店の一つのようです。
「これも可愛いな」と手にとったのは、まるで石鹸のようなウィンターロッキーロード(321円)。ホワイトチョコレートにカラフルなイチゴチョコやグミが入っています。
「見た目がかわいいものは何でも好きですね。カラフルな色合いだけど、パパブブレはちゃんとフルーツの味がしておいしいんですよね」といなださん。
ビジュアルはかわいくて、味は本格派という「パパブブレ」のポリシーこそ、世界中で愛される理由です。
続いては、これまでにいなださんが何度も取材をしてきたという人気べーカリー「PAINDUCE(パンデュース)」が、展開した「PAINDUCE Park(パンデュース パーク)」。お目当てはこの時期に登場するシュトーレンです。
「クリスマスのお菓子が好きなのは、背景にエピソードがあるから。シュトーレンの形は表面にまぶした真っ白いお砂糖が、イエス様がくるまれたおくるみを模していると言われているお話もあって、なんか素敵ですよね?」といなださん。シュトーレンは毎年、それぞれ違う店のものを2〜3個買って試すのだとか。
そう話しながら「パンデュース パーク」の全粒粉のシュトーレン(2,000円)を口にして、いなださん、驚いた様子。北海道産の全粒粉100%に、キルシュ漬けのクランベリーやレーズン、伊予柑のピール、ブラッドオレンジのピールなどが入っています。
「シュトーレンは生地に対して60%以上のドライフルーツと30%以上のバターを使うのがドイツの定番ですが、これは生地の存在感もしっかりあっておいしいですね。ほろっと口の中でくずれる生地の食感や全粒粉の香りがおいしい! フィリング(具材)がクランベリーというのも珍しいですね」といなださん。
お菓子の歴史背景を知った上で飛び出る言葉に、店長の河合将光さんもうれしそうです。
続いて河合さんにお勧めされたのは、ほうじ茶とオーガニックいちぢくのミニシュトーレン(680円)。「こちらは、ほうじ茶パウダーを練りこんでいて柚子のピールやホワイトチョコレート、カシューナッツ、白ワイン漬けのイチジクが入っています」。
ほうじ茶の心地いい苦味が余韻まで続く味が、いなださんも気に入ったよう。
「全粒粉100%というのも珍しい上に、ほうじ茶というのも変わりダネ。ありそうでない味で、すごく好みです」
そのほか、「パンデュース」に来るといつも買うという野菜のタルティーヌをチェック。
「米山さん(オーナーの米山雅彦さん)のパンは、国産小麦と野菜、多加水でもっちりした食感が特徴。小松菜とか、パンに使わなさそうな素材も美味しいパンになるから楽しくて」
買ったパンをフードホールで食べられる「パンデュース パーク」では、特にサンドイッチ類が充実。ココでしか味わえない季節のスープやミニバーガーも「気になります。次は食べてみたいな」と、店を後にしました。
続いて訪れたのは、ドイツの菓子職人、カール・ユーハイムによって創設され、創業100余年を迎える「ユーハイム」。神戸を中心に活動するいなださん、神戸の「ユーハイム本店」は幾度となく取材をしているそうです。
まず手に取ったのは、クリスマス限定のクリスマス デア バウムクーヘン(1,080円)。昔のままの配合と製法で焼き上げたバウムクーヘンで、“ドイツの森の木”を思わせる独特の形状は、カール・ユーハイムのレシピから伝承されたものだとか。焼き上げた後に、ココナッツを原料とした蒸留酒を少量吹きつけていて、豊かな香りとしっとり感が特徴です。
「いつも食べているプレーンのバウムクーヘンよりしっとりしていますね。生地がそれほど甘くないので食べやすい」といなださん。
「ユーハイム」のお菓子は保存料や乳化剤などを使わない、無添加の自然なおいしさが好きなのだとか。
「全国に展開する大手でここまで徹しているメーカーは、あまり知らないですね。安心安全にこだわっているのでお子さんがいる人への贈り物に重宝しています」
「自然に逆らわない」というドイツ菓子の考えのもと、50年前から添加物の削減に力を入れてきたそうです。
そして「これは見たことない! かわいい!」といなださんが手に取ったのは、1カットが箱に入ったCOBAKOシリーズ。ユーハイムのバウムクーヘン(270円)、カラメルナッツのバウムクーヘン(324円)、チョコレイトバウムクーヘン(345円)の3種類があり、1個から購入可能。扇型の箱を8個組み合わせるとリース型になって、透明ボックスに入れてくれるヴィジュアルも魅力です。
「手土産はもちろん、何かのお返しにちょうどいいですね。パッケージがレトロでめちゃかわいい。買ってそのまま出せるのがいいですね」と“贈り魔”でかわいいもの好きないなださんの心を射止めた様子。
COBAKOは東京・上野と大丸心斎橋店にしかない、復刻版のレトロなパッケージが特徴です。
※2022年8月をもって閉店いたしました。
最後に訪れたのは、いなださんが毎シーズン、季節の紅茶を楽しんでいるという世界のお茶専門店の「LUPICIA(ルピシア)」。
「今年のクリスマスティーは6種類。そのうち2種類が新作です。クリスマスのパッケージは毎年変わるのですが、今年は「“Thè(テ)”をつなぐクリスマス」をテーマに、美しい自然を守っていきたいという想いを込めて、海とクジラや草原のトナカイ、サンゴ礁など、自然の風景や動物を描いています」と案内してくれたのは店長の藤原恭介さん。
いなださんが手に取ったのは、ジングルベル(50gデザイン缶入 1,010円)。インドやベトナムの茶葉に、ドライクランベリーやヒースフラワーをトッピング。葡萄の風味が生きたフルーティーなスパークリングワインの香りをまとった紅茶。
「爽やかでいい香りですね」といなださん。チョコレート系の濃厚なお菓子に合うそうです。
普段は「ルピシア」のルイボスティーを好んで飲んでいるといういなださん。
「この夏は、水出し紅茶をお茶がわりによく飲んでいました。紅茶は定番からフレーバード系まで幅広く好きですね。実はスパイス系はあまり得意じゃないけれど、ルピシアの紅茶やお茶は香りが優しいのでおいしいですよね」
クリスマス限定品の新作にもルイボスティーをベースに、ラ・フランス(洋梨)をイメージした香りのルイボス ポワール(50gデザイン缶入 1,100円)が登場。「完熟した洋梨の香りがする! 飲んでみたいですね」といなださん。
「ルピシアの紅茶やお茶は、2週間で飲みきれるティーバッグ15個入りセットをはじめ、詰め合わせの種類が豊富。自分用やプチギフトなど、いろんなシーンで重宝しています。クリスマスには限定のティーバッグセットをプレゼントに買うことが多いです」
自分の琴線に触れる、かわいくておいしいお菓子を探求しながら、常に「誰に贈ろう」「何を喜んでくれるか」を考えるいなださん。そんないなださんにとって、かわいくて贈りたくなるお菓子であふれるクリスマスはやはり特別なようです。
兵庫県赤穂市生まれ、神戸在住。短期大学卒業後、編集プロダクションに就職し、阪神淡路大震災をきっかけにフリーライターとして独立。パンやお菓子の取材活動やスイーツイベント「miho à la mode」主催のほか、イベントのディレクションも手がける。著書に『神戸の美味しいパン屋さん』(グラフィス ムック刊)、共著に『東京最高のパティスリー』(ぴあ刊)など。
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/コーダマサヒロ 取材・文/佐藤良子 スイーツスタイリング/東ゆうな 編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
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