Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES2000年頃からブログでスイーツの情報を発信、現在はスイーツコーディネーターとしてさまざまなシーンで活躍する松本由紀子さん。地元は神戸ですが、大丸心斎橋店は思い入れがある特別な場所なのだと言います。そんな松本由紀子さんに、今回はビジネスシーンで喜ばれるスイーツギフトを選んでもらいました。
「大学生の頃、中2階にあった『ヤムヤムインナートリップ』というサロン・ド・テに母と一緒によくうかがっていて、ナオミというケーキが大好きだったんです。だから大丸心斎橋店は私にとって母とのお出かけとリンクする特別感のある場所なんです」。
「ヤムヤムインナートリップ」は難波に本店を持ち、2004年まで大丸心斎橋店の中二階にあった伝説のパティスリー・カフェ。松本さんのそんな思い出トークを聞きながらまず訪れたのは「エクチュア」。1986年にチョコレート専門ショップとして大阪・心斎橋で開業し、第一線を走り続けているお店です。
「これ! チョコが使われているどら焼きで、すごく面白いんです」と松本さんが真っ先に名前を挙げたのは、大丸心斎橋店限定のDORA DORA。どら焼きにチョコレートを組み合わせた一品で、ベルギー産クーベルチュールを使い、欧州のエスプリを感じるチョコレートに和のテイストを合わせる「エクチュア」の真骨頂を感じさせます。
「ビターチョコレート餡は、ビターチョコと塩を加えた粒餡を、プレーンの生地でサンドしています。見た目が黒いホワイトチョコレート餡は、ホワイトチョコを加えた白餡と当店名物の塩チョコレートを、竹炭を練りこんだ生地でサンドしています」と、説明してくれたのはシェフの植松真央さん。
「1個だけでも、とても上等なものをいただいた印象を受けると思います。個包装というのもポイントですが、さらにこのパッケージ、おしゃれじゃないですか!? 」と松本さん。
なんとコーヒーショップなどで使われるスタンドパウチの中にどら焼きが入っていて、スタイリッシュなビジュアル。まさかどら焼きが登場するとは予想もできないため、素敵なサプライズになりそうです。
「ビターチョコレート餡はふんわり生地がおいしくて、粒餡にチョコレートが入っているので、小豆とカカオ豆、同じ豆由来のマリアージュが面白いですね。真っ黒で見た目のインパクトが強いホワイトチョコレート餡は白餡とホワイトチョコのバランスが絶妙で、塩チョコがパリンと割れる食感も楽しいんです」と松本さん、おいしそうにほおばります。
ホワイトチョコレート餡にサンドされているという塩チョコレートとは、薄めの板チョコに高知県室戸の塩をまぶした「エクチュア」のロングセラー商品。香り高いチョコレートにシャープなミネラル感がキリリと効いています。
「DORADORAの定番はこの2種類ですが、不定期で限定フレーバーもあるんです。今はラムレーズン味を試作中です」というシェフの言葉に、松本さん「素敵! 私、極度のラムレーズンラヴァーなんで」と目を輝かせます。
さらに今回はバレンタイン限定商品も紹介してもらいました。塩ピスタチオショコラBar(2,160円)は、好みの大きさにカットしながら食べる新しいスタイルのボンボンショコラ。松本さんも「珍しい!」と驚いた様子。この他、本町にあるスペシャルティコーヒーとオリジナルカクテルを楽しめるカフェ・バー 「Bar ISTA(バール イスタ)」とコラボしたコーヒーカクテルのボンボンショコラなども大丸心斎橋店限定で登場。
「新しいもの好きな、感度の高い人に贈りたいアイテムも多いですね」と松本さん。人気商品がセットになったアソート商品も複数あるのでギフト選びに重宝しそうです。
続いて訪れたのは「京都祇園 あのん」。看板の餡を使ったお菓子を中心に、洋菓子の素材や技術を取り入れた新しいスタイルのお菓子を提案しています。
代名詞ともいえるお菓子は、瓶詰めされた粒餡とマスカルポーネクリーム、最中の皮が一箱に詰められたあんぽーね(1,728円)。自ら粒餡とマスカルポーネクリームを最中に詰めて楽しむ“手作り最中”です。
実は松本さん、これまであんぽーねをさまざまなメディアで紹介してきたほどの大ファンだそう。
「皮がパリパリで、香ばしくておいしくて。あんこの上品な香りとマスカルポーネクリームのほのかな酸味が驚くほど相性抜群なんです! 」。
粒餡とマスカルポーネクリームのオススメのバランスは、粒あん6に対してマスカルポーネクリームが4だそう。
「あんぽーねは、自分で作ることを楽しんでくれそうな方や、懇意になりたい会社に持っていくことが多いですね。会話のきっかけにもなりますし、和洋折衷で面白い。5個入りなのでスタッフさんの倍数を用意するといいですよ。常温保存で1ヶ月程度のお日持ちなので、冷蔵庫があるか分からない場に持って行っても安心です」と、細やかな部分まで配慮した言葉から、ギフト選びの極意が透けて見えます。
あんぽーねは、定番の粒あんのほか、夏は白あんに桃の果肉や果汁を加え、冷やして食べる桃のフレーバーや果実感が凝縮したブルーベリーが。秋冬は栗きな粉、生キャラメルといった濃厚なフレーバーも登場します。
「コロナ禍の時勢を考えたり、お供え物やご高齢の方への贈り物なら、こちらもオススメですよ」と、松本さんが手に取ったのは、京はんなり(1個162円)。京都・宇治の老舗茶園「丸久小山園」の高級な抹茶・青嵐を生地にも白餡にもふんだんに練りこんだ饅頭です。
「こういう生地のお菓子を和菓子の分類では“乳菓”と言うんですけど、口の中の水分が取られるモソモソした食感のものが多いんです。でもこちらは、すごくしっとりして口溶けがよくて! 丸久小山園さんの高級なお抹茶の香りが余韻に長く続きます」と松本さん。和菓子でありながらコーヒーとも合うそう。手軽に楽しめる小ぶりなサイズも魅力です。
この他、大丸心斎橋店には粒あんとマスカルポーネクリームを餅生地で包んだあんぽーね大福(1個216円)など、餅菓子が揃うのも魅力。話題性に富んだお菓子が充実しているので、売場の隅々までチェックしたくなりますね。
「生菓子を持って行くなら、こちらがイチオシ! 今、スイーツ好きの間ですごく流行っていて、話題性があるお店なので間違いなく喜ばれます」と松本さんが案内してくれたのは「中島大祥堂」。
丹波の自社栗園で収穫する栗や丹波産黒豆、丹波大納言小豆など、地元の素材を使って、焼き菓子から生菓子まで幅広いお菓子を展開しています。
「丹波にある本店は、一度解体され保管されていた150年前の茅葺き古民家を再利用したショップとレストランがあって、私もぜひ訪れてみたい場所のひとつなんです」。
そんな茅葺き屋根を模したモンブランのかやぶきは、チョコレートを纏った玄米パフを土台に、スポンジと低脂肪の生クリームを使ったクレーム・シャンティイ(ホイップクリーム)を重ね、丹波栗のモンブランクリームを絞っています。
実はこのモンブランクリーム、一般的には栗のペーストを生クリームなどでのばしますが、「中島大祥堂」では栗の風味を活かすために乳製品は使わず、水と砂糖で作ったシロップでのばしているそう。そんな、ほぼ栗という珍しいレシピに、松本さんも驚いた様子です。
これまで何度も食べたことがあるそうですが、今回改めて食べてみた松本さんは、「ほぼ丹波栗のみで、乳製品でマスキングされていないため、想像以上にモンブランクリームに粘度があって栗そのものの香りがしっかりと感じられます。土台もメレンゲやタルトなどではなく、和のテイストの玄米パフというのが丹波らしくて面白いですね。サクサク感がアクセントに効いています」と解説しながら最高の笑顔。
「大きいサイズも特徴的で、関西では喜ばれますよね」という食べ応えある大きさは、小人数でシェアすることもできそうです。
「こちらも私が大好きなお菓子。おイモと栗そのものの素朴な味わいを活かし、しっとりなめらかなので、子供からお年寄りまでみんな好きだと思います!」と、さらに松本さんが教えてくれたのは、いもくり(1個194円)。丁寧に裏ごした丹波栗と鳴門金時のペーストをふんだんに使った焼き菓子で、栗の渋皮煮の粒が入っています。
そして、「社長さんや重役さんなど偉い方に会うなど、特別なビジネスシーンにはこちらがオススメです! この風呂敷包みの見た目だけでもすごくないですか?こんな特別感のあるお菓子、私も贈られてみたいなぁ(笑)」と話すのは、大きな丹波栗丸ごと4個と粗く刻んだ栗が入った丹波栗のケーキ。風呂敷を解くと現れる桐箱にケーキが収まっているビジュアルも特別感満載です。
松本さん、食べてみて驚いたポイントが。「風呂敷に桐箱という純和風なビジュアルですが、お味は洋風テイスト。洋酒がしっかりと効いていてスペシャル感がたまりません。お酒を召し上がる年配の男性のハートもばっちり射止められますよ」。
お値段も1級品ですが、その分味も見た目もプレミアム感充分。ここぞというシーンで使える、覚えておきたいお菓子ばかりです。
「大丸心斎橋店は、他の大丸のお店とも、他の百貨店とも一線を画する印象。特に改装後の食品フロアはすごいですよね。お店選びが秀逸で、ハイクラスなイメージです」
そう話す松本さんが大丸心斎橋店に思い入れがある理由の一つと言えるのが、関西では大丸心斎橋店にしかない「LE CHOCOLAT ALAIN DUCASSE(ル・ショコラ・アラン・デュカス)」の存在。
フランス料理界を牽引する料理人であるアラン・デュカス氏によるチョコレートショップです。
「ル・ショコラ・アラン・デュカスのショコラは奇抜なフレーバーの組み合わせはあまりなく、逆にベースのショコラの個性がとても際立っているイメージです。産地別のテロワールやカカオの個性にインパクトがあって、口溶けや余韻のアロマがとっても繊細なのが特徴だと思います」と松本さん。
素材のポテンシャルを重視するスタンスに、料理人としての素材との向き合い方が現れているようです。
今回、店長さんに紹介してもらったのは、バレンタイン限定のガナッシュ・グルマンド 詰め合わせ 8個入り(3,618円)。
定番のライムとバニラ、フランボワーズに加え、この期間しか味わえないティー、ミント、カシス、パッション、ジンジャーのフレーバーを詰め合わせた限定品です。
「ミントやティーなど、今までなかったフレーバーが嬉しいですよね。特に、ダークチョコレートにアールグレイのガナッシュを組み合わせたティーが印象的でした。甘さは控えめでカカオ本来の味やフレーバーが際立っていて、パッケージもシンプルでスタイリッシュなので、男性に贈ると喜ばれると思います」。
「マカロンは日本の小ぶりなサイズではなく、フランス現地の大きなサイズなのも高ポイント。おしゃれなボックスに入っているので、本物志向の方にオススメです! 」と松本さん。
おしゃれなボックスとは、箱に紐がついて、そのまま持ち運びできるオリジナルの専用ボックス。
「日本では、最終的に紙袋に入れることが多いですが、フランスはこうしたボックスで簡易包装にすることが多いですね」。
松本さんオススメのマカロン(3個入り1,944円)は、現在はフランボワーズ、パッションフルーツ、バニラの3種のガナッシュの組み合わせですが、時期によりフレーバーが変わるそう。
味に信頼を寄せるお店の新作と聞けば縦横無尽に駆け巡る、フットワークの軽さと探究心。松本さんのスイーツ愛の深さも垣間見られました。
最後に訪れた「MARIEBELLE THE LOUNGE(マリベル・ザ・ラウンジ)」は創業者、マリベル・リーバマンさんによるNY発のチョコレートショップ。
国内5店舗のうち“エクスクルーシブストア”と位置付けるラグジュアリーカフェは、ここ大丸心斎橋店だけ。バカラによるシャンデリアが輝き、マリベルさんの自宅のリビングをイメージしたというクラシックな空間に心が踊ります。
代表的な商品はアートを転写したカラフルなガナッシュチョコレートで、それぞれにポエムがついています。中でも「これすごいんです! 溺愛アイテムで何度もリピ買いしています」と、松本さんが興奮気味に手に取ったのは、意外にも(?)クッキー缶のパンドラボックス(5,400円)。
缶の中には「マリベル」のチョコレートを使ったフロランタンやエンガディナー、ダックワーズなどの焼き菓子4種類がぎっしり。まさに開けたが最後、手が止まらなくなってしまう禁断の箱のよう。
「甘いものが好きで、常にアンテナを張っている感度の高い女性に贈りたいですね。実は焼き菓子にも定評があるブランドなので、お味も太鼓判です。お値段は少し張りますが、ずっしりと重くて高級感があり、オリジナルのエンボス加工の缶もBOXも他にはないおしゃれなテイストで、お値段以上の価値があると思います」。
一方、男性やリモートワークをしている方に贈るなら、と手に取ったのはフィンデショコラ(1箱3,024円)。シングルオリジン(単一生産地の単一品種)のチョコレートで作る約3cm四方のごく薄い板チョコレートです。
「つまみやすくて食べやすいサイズなんですが、こだわりのカカオが重厚な香味を放つので2〜3枚食べたら十分な満足感があるんです。オススメはフルール・ド・セル(ゲランドの塩)をまぶしたもの。甘塩っぱくてお酒にも合いますよ」。
ラウンジでは、カカオ分の異なるガトー・ショコラを食べ比べできるガトー・ショコラ・トロワ(1,650円)とホットチョコレートのスパイシー(1,595円)を注文。ホットチョコレートはNYで最初に認められ、店の名声を高めた「マリベル」の看板の一つです。
「スパイシーは7種類のスパイスが入っていて、スッキリとキレのある味わいと芳醇なアロマがたまらなく大好きなんです。定番の香り高いアズテックなど、ホットチョコレートの缶を贈るのも喜ばれますよ。リモートで働く人がほっとひと息つくのにぴったりです」。
国内外のお菓子事情やブランドの個性に精通する松本さんがお菓子の魅力を説けば、背景にあるストーリーや食べるシーンまで見えてきて、お菓子の輝きが増していくようです。ビジネスシーンで贈った時を想像すると、相手が喜んでくれている顔すらも、なんだか鮮明に見えてくる気がしませんか?
幼少期から毎日ケーキのある家で育ち、クリスマスには毎年4人家族で6台のホールケーキを囲んだ思い出も。そのスイーツ好きが昂じ、時代に先んじてパティシエに直接話を聞き、作り手の想いを食べ手に伝えたいと、2000年頃からブログで情報を発信。現在はスイーツコーディネーター、ライター、コメンテーター、プロデューサーとして多方面で活躍。著書に『神戸8人のパティシエが作るスペシャリテ64』(旭屋出版)、『一度は食べたい 隠れ愛されスイーツ 珠玉の裏スペシャリテ100』(主婦の友インフォス社)。
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/西島渚 取材・文/佐藤良子 編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
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