Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES外資系教育会社に在籍時は、日本でトップ、世界142カ国中2位の営業成績をおさめ最年少で日本支社長にも就任。ビジネスコンサルタントとして独立した後は、講演会やセミナーの講師として活躍。作家としても、数々のビジネス書や小説を上梓した和田裕美さん。営業のオーソリティーから見た、最近の“仕事着”の傾向は? 実はご実家がブティックという、服に慣れ親しんだ環境からの視点も交えながら、大丸心斎橋店を巡ってもらいました。
「ちょっといろいろ見ていいですか? 普段はゆっくり回れないので(笑)」
執筆に講演会にテレビ出演など、とても多忙な和田さん。じっくりと時間をかけて百貨店を見て回る機会はなかなかないそうで、どこか楽しげ。「宿泊施設のないHOTEL」をテーマに、大人の女性が心地よく過ごせる空間を追求する「23区 SHINSAIBASHI」は、銀座店に続く関西初のコンセプトショップ。"Timeless & Comfortable"をコンセプトに、オリジナル商品だけでなく、インポートのバッグやシューズ、アクセサリーなどが揃っています。
早速、和田さんの目に留まったのが、プリーツがかわいいワンピースです。
「私の場合、仕事の時はスーツよりもこういうワンピースを着ることが多いですね。カチッとしすぎるのがダメというわけではないと思うのですが、ちょっときつく見えてしまうんですよね」
講演会などの仕事の時は、どうしても“先生がいらっしゃいました!”という感じのキッチリした装いを期待されるので、それを裏切ってちょっとゆるく、フェミニンなイメージを作りたいという和田さん。
「このワンピースなら、仕事中はしっかりジャケットを羽織って、夜になれば上着を脱いじゃえばディナースタイルとしても素敵、一石二鳥ですね」
「私、この色大好きです」と、スタッフの澤田明里さんも着ていたニットセーターに視線を投げかけた和田さん。オレンジは「23区」がこの春、一推しのシーズンカラーです。
「たまたま今日は黒を着ていますが、もともと明るい色が好きなんです。ビジネスシーンもだんだんカジュアルになってきていますからね。GAFAのようなIT系の企業なら、こういうビビッドな色も全然あり。仕事柄、いろいろな会社の方に会いますけど、最近はカジュアルな装いをされている方も多いですね」
カジュアルラインにも興味津々な和田さんは、次から次へと商品を手に取り、「“ボーイフレンドデニム”、かわいいですね。白シャツに合いそう」、「レザージャケットは、すごく柔らかくてお手頃価格。甘めのスタイルにマニッシュなアイテムを合わせても、かわいくなりますね」と、洋服好きな様子が伝わってきます。
続いて和田さんが手に取ったのが、カーキのトレンチスプリングコートです。
「これ、すごくおしゃれでラインがきれい。デザインがすばらしくて、欲しいです」
「和田さんが着ていらっしゃるインナーにも合いますね。ノーマルのトレンチだと少しカチッと硬い感じがしますけど、このコートはデザインが個性的。素材はリネンと麻を使っています」と澤田さん。
すっかりコートが気に入った様子の和田さんに、最近のワーキングファッションの傾向についてうかがいました。
「最近は、長く履いていても疲れないスニーカーやローヒールの靴に合わせやすい洋服が増えていますよね。高いヒールを履かないとスタイルが決まらない服は少なくなっている気がします」
かかとの高いパンプスやハイヒールを職場で強制されることへ反対する「#KuToo運動」の輪も広がり、足元のファッションが変わってきているいま、パンツやスカートの丈も長めになってきたのではないか、と和田さん。
「確かにスカートの丈は長くなってきてますね。私がいま履いているフレアスカートもそうです」と澤田さん。
足元の装いの話題が出たところで、次は同じフロアにある「COLE HAAN(コール ハーン)」を訪れることにしました。
「カジュアルシューズのバリエーションが増えたんですよ」
そう語るのは、アメリカ発のブランド「COLE HAAN(コール ハーン)」のスタッフ・伊藤妙子さん。
「パンプスを履く方が減って、ちょっときれいめな洋服でも足元はスニーカーなど、カジュアルなものを履く方が増えました。トレンドは軽くてラクで履きやすい靴に移行していますね」
ドレスシューズが3分の1ぐらいを占めていた時期もありましたが、この春の新作は、7割から8割ぐらいがカジュアルシューズになっているそうです。
「この軽さ! ちょっと感動するんですけど」と和田さんが興奮気味に手に取ったのは、グランドプロテニススニーカー。
確かに、持つだけで和田さんの感動もナットクの軽さ。「コール ハーン」の靴の中でもトップクラスの軽さだそうです。
「これ絶対欲しい! 黒ならデザインもシンプルで、ビジネススタイルに合わせやすいですし。移動中はこれを履き、オンモードでパンプスなどに履きかえるのもいいかなと」
スポーツブランドのロゴが入っているスニーカーは、仕事着としてコーディネートするには少し難しいと和田さんは言います。
「この黄色のローファーもかわいい!」
次に和田さんが手を伸ばしたのは、モダンクラシックス ローファー。ご自身は明るい色が好きだけど、仕事靴としては黒やブラウンをすすめられるそうです。
「ビジネスシーンでも活躍しそうですね。足がラクできれいめなローファーは、とてもおすすめです」
ショップからのおすすめは、伊藤さんが「3つの異なる硬さのクッションと、屈曲性に優れたソールです」と太鼓判を押す4.ゼログランドシリーズです。
「4.ゼログランドの黒のローファーもビジネスシーンで活躍しそうですね。びっくりするぐらい履きやすい」と和田さん。
「コール ハーン」のブーツは持っているけど、今までスニーカーやカジュアルシューズには目がいってなかったという和田さん。「今日は、発見ですね」と笑顔を見せてくれました。
※2023年7月をもって閉店いたしました。
「#KuToo運動」に見られるように、今はビジネスシーンにおいて “こういう服や装いでなければならない”という、型にはまった既成概念が崩れつつある時代。それはジェンダーレスへの流れにもつながっているのかもしれません。
「うちのブランドは、普段でも仕事でも着られる、オンとオフの境目が少ないアイテムを多く揃えています。ジェンダーレスという視点では、レディスでもメンズライクなアイテムも多いですね」と、「MARGARET HOWELL(マーガレット・ハウエル)」スタッフの池上さん。
“ジェンダーレス”が、ブランディングの中でキーワードの一つになっているそうで、「今、ビッグシルエットや、ワイドパンツが流行っていますが、『マーガレット・ハウエル』は、トレンドに乗るのではなく、着やすいシルエットを極めていくうちに、自然にこういうスタイルが生まれてきました」と池上さん。
「私も大きめのシルエットのジャケットを持っていますが、コーディネートが重要ですよね。サイズが合ってないように見えると、着る人にとっても商品にとってもよくない(笑)。さらりとカッコよく着こなせると素敵ですよね」と和田さん。
ここでも積極的にさまざまなコーナーを見て回る和田さん。今春のシーズンカラーであるユーカリ色のアイテムを手に取りました。
「このタートル、ものすごくかわいい。試着してみてもいいですか?」
「タートルというと冬のイメージですが、これは春物として出しています。素材がコットンリネンなので、風通しが良く爽やかに着ていただけます。和田さん、すごくお似合いですね」と池上さん。
メンズライクな大きめのジャケットを羽織った和田さん。普段は堅い印象にならないようにフェミニンさも意識して服選びをするとおっしゃっていましたが、こういうメンズライクなスタイルのビッグシルエットも、軽やかな印象を演出します。
「普段と全然違うスタイルだから新鮮です。これぐらい崩してもおしゃれに見えるのは、『マーガレット・ハウエル』でトータル・コーディネートしているからでしょうね。これなら、ビジネスシーンでもいけますね」
デニムだから仕事着に向かないというわけではなく、どのようなアイテムや素材でも相手に不快な思いをさせず、きれいに着こなせば、十分ビジネスシーンでも通用すると和田さんは話します。
「年配の方が多い会社だと『なんでそんなダボダボきてるんだ!』ってなるかもしれないですけど(笑)。だいぶ変わってきてるんじゃないですか。多様性が出てきて、着心地のよさや動きやすさも重視される時代だと思います」
続いて訪れたのは、「ワコール ザ ストア」。3Dボディスキャナーで全身18カ所を測定し、AIを用いてそれぞれの人に最適なアンダーウェアを提案するという、最先端のシステムを備えたショップです。
「もう、早く言いたくて仕方がなかったんですけど(笑)、今着ているこのインナー、ワコールさんで買ったんです!」
この日の和田さんのスタイリングは、きめ細かいレースが映えるキャミソールの上に、黒のカーディガンを羽織っていました。
「ありがとうございます! ものすごくお似合いです」と喜ぶスタッフの奥村美嘉さんに、和田さんは、「スーツの下に着る、このようなフェミニンなテイストのウェアを探していたけど、なかなか他のショップで見つからず、『ワコール』でこれを見つけた時は感動しました」
このキャミソールは67 GROUPシリーズのアイテムで、他にもブラジャーやショーツなども揃えています。
「こんなにいいものにはもう巡り会えないと思って、白とカーキの2色で、ブラとショーツも全て買い揃えました(笑)」と和田さん。
インナーをアウターとしても上手にコーディネートしている和田さん。ワコールが取り扱うスイスのインナーブランド「HANRO」にも注目しているようです。
「このカップ付きのインナーは、アリュールといって、筒状に編み上げているため、サイドに縫い目がないんです。肌にかかるストレスを極力減らすように工夫しています」と奥村さん。
「アンダーウェアも、寄せて上げるみたいなボディメイク系から、着心地の良さにどんどんシフトしていると感じていたので、まさにこういう商品はこれから人気が高まっていくでしょうね」と和田さん。
下着は、見えないものだからこそ、丁寧にこだわりたいと和田さんは言います。それは、ビジネスの世界にも通じるものがあるようで……。
「見えている所だけでなくて、内側も大切にケアすることで、仕事の成果は変わってくると思うんですよ。下着もいいものを身につけると、所作や姿勢も変わると思うんですよね」
在宅ワークの時間が増え、家の中でも着心地のいい服を選びたいと言う和田さんは、ラインアップも豊富な「ワコール」のルームウェアも気になります。
「リラックスするときのウェアが、気分を上げるものか下げるものかによって、家の仕事効率も変わると思うんです。だから、ワコールさんのWEBサイトを見たときに、ルームウエアがすごくかわいくて、欲しいと思っていました」
シンプルで一見同じようなデザインに見えても、素材や着心地が違うと気分のアップダウンも変わると言う和田さん。
「ワコールさんのルームウェアは素材がいいし、着たときのラインもきれい。着心地が良くて、ポケットなど細部のデザインにも凝っていて、おしゃれに見えそうですよね」
最後に訪れたのは、ニューヨーク発のブランド「Theory(セオリー)」。シンプルでいてデザイン性が高い上質なアイテムが揃います。こちらでは、ファッションアドバイザーの高岡あずささんに、ビジネスシーンで活躍しそうな服やコーディネートを提案してもらいました。
まずすすめてもらったのが、ウエストのドローストリング(引き紐)が特徴的なワンピースです。
「さすがのセレクトですね。これはビジネスでいけると思います。スリットがきれい」と言う和田さんに、「紐をしぼらずに、ストンとしたシルエットで着ていただいてもいいと思いますし、絞るときれいめスタイルになります」と高岡さん。
和田さんは続いて、「カジュアルすぎるかなあ……?」とつぶやきながら、とても気に入ったので着てみたいと、ニットのフーディとスカートのセットアップを試着しました。
「スポーティだけどラインが色っぽくて、びっくりするぐらいセンスがいいですね。ものすごく着やすいです。このままだとリラクシングすぎるかもしれないけど、ポイントとしてアクセサリーを入れると、ビジネスシーンでもいけるんじゃないですか」と和田さん。
「上にコートを羽織っていただいてもいいと思います」と高岡さんがセレクトしたのは、ウールカシミヤのコート。フーディとの相性もよく、コートを脱いだ時にラインが現れるのも、さりげなくおしゃれです。
「セオリー」のアイテムは、美しいスリットが入っているのも印象的です。
「スリットが入ったアイテムはわりと多いですね。一昨年ぐらいから増えてきてて、切れ目はどんどん深くなってきています。パンツは、これまでセンターにスリットが入っているのが主流だったんですが、今春の新作は、サイドから少し斜めにラインが入るようになりました」と高岡さん。
美しいと感じる理由は、深めのスリットとラインの位置でした。
「トップスの場合、スリットが入ることで、ボトムスがワイドパンツのようなボリュームのあるものからスキニーなものまで、なんでも合わせやすくなります」と高岡さん。
「今回の取材を通して、いろいろと試着や試し履きをした和田さんは、感じるところがあったようです。
「やはり、実際に着てみないとわからないですよね。試着をしちゃうと、心理的に断りづらいと思っちゃう人もいると思うのですが、何も着ずに黙って出て行くのはもったいない。どれが自分に合うか、デパートの中すべてをまわって着てみたらいいのに! と、今日すごく思いました。スタッフさんもみんな素敵でアドバイスもしていただけますしね」
和田さんの言葉を受けて、「もっといろいろ着てみていただきたい組み合わせがあるんですよ。またぜひいらしてください」と高岡さん。
ビジネスシーンにおけるファッションの多様性が広がるいま、これまでの自分の殻を破って、新しいスタイリングに挑戦してみるのもいいかもしれません。
「ちょっと買い物に行ってきますね」
取材終了後、そう言い残してショップへと向かった和田さん。普段は多忙を極め、ゆっくり百貨店で過ごす時間もないということで、この日はお買い物欲が刺激されたのか、試着したものを数点お買い上げいただいたようです。
京都府出身。株式会社HIROWA代表取締役。外資系教育会社に入社後、日本でトップ、世界142カ国中2位の営業成績をおさめ女性初、最年少で支社長に就任。ビジネスコンサルタントとして独立後は、国内外を問わず研修・講演を展開。「和田式売れる営業に変わるセミナー」などセミナーの講師としても活躍中。累計220万部越えの著作には、『世界NO2売れる営業に変わる本』、『人生を好転させる「新・陽転思考」』など。2019年には初の小説『タカラモノ』を上梓。昨年、プロデュースした『人生よかったカルタ』が注目され、小学校で陽転思考の授業も開催。京都光華女子大学客員教授。
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/竹田俊吾 取材・文/蔵 均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
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