Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES数々のインポートブランドでキャリアを重ね、販売員時代には世界一の売りあげを記録。ファッション業界では知らない人がいないほど、レジェンド的存在の秋山恵倭子さん。現在は販売員の育成や店舗運営のコンサルティングなどを手掛ける、人呼んで「販売の神様」が、かつて奮闘した思い出の地でもある大丸心斎橋店を巡ります。
最初に訪れたのは、「M-PREMIER(エムプルミエ)」や「Aveniretoile(アベニールエトワール)」、「BLENHEIM(ブレンヘイム)」などの人気ブランドを展開する「m-i-d(エム・アイ・ディー)」が、全オリジナルブランドを揃える初の複合ショップ。
「まず、この店内へ誘ってくれるような空間デザインが素敵なんですよね」。秋山さんが見上げた天井は、きらめく星を連想させる美しい意匠。グレーを基調としたエレガントなしつらえが、心を豊かにときめかせてくれます。この印象的なストアデザインを手がけたのは、フランス出身のデザイナーであるグエナエル・ニコラ氏。世界のビッグメゾンの建築や店舗デザインを手がけ、日本では東京「GINZA SIX」のインテリアデザインなども有名な作品です。
「セリーヌ」、「ジョルジオ アルマーニ」、「プラダ」など、名だたるブランドで経験を重ねてきた秋山さんは、「ニコラにデザインを頼むのはすごいこと」と、「エム・アイ・ディー」の心意気にまず驚いたといいます。
「『エム・アイ・ディー』の社長さんは、”職人の誠意が感じられるモノ作り”をモットーに、徹底的に美しいシルエットにこだわり、ミリ単位で何度もラインを引き直す。1985年の創業以来、ずっとそのマインドを守り続けていらっしゃいます。そんな社長の熱い想いとこだわりが商品にも建築にも表れた場所で、とても好きなお店なんです」。
秋山さんいわく、「エム・アイ・ディー」の洋服は「価格以上に “価値” がある」。「縫製や生地にこだわっているのにお値打ち」。空間や商品だけでなく、秋山さんが「ここで買いたい」というもう一つの理由は、セールススタッフの存在です。
「たいていのお店は、接客中のスタッフ以外はお客様に知らん顔ということが多いんですね。だけど、ここはみんながお客様に気を向けてくれる」。なかでも秋山さんが「この人から買いたい」と頼りにするのが、スーパーバイザーの木匠由季さん。
「このスカートに合うトップスはあるかな?」と秋山さんがたずねると、木匠さんは「シースルーとVネックがお好きなので」「首が詰まっているものはお好きではないと思うのですが…」と、これまでの接客経験から得た秋山さんの好みを踏まえたうえで、おすすめの数着を繰り出します。
「自分の価値観ってありますよね。こんな色が好きとか、私はこれしか似合わないとか。これからの販売員はその価値観を覆すくらいの提案を持っていないといけない。なるほど、それもアリか! と思わせるような。でも、彼女たちはそれを持っています」と秋山さん。
この日、木匠さんが提案したプルオーバーを秋山さんは即座にお買いあげ。販売のプロフェッショナルゆえに厳しい目を持ちつつも、木匠さんとおしゃべりしながら買い物を楽しむ。その姿は、お客様でありながら、同業の後輩を温かく見守る先輩のようでもありました。
「使いやすくて優れた包丁を2本、お店の方のアドバイスを受けて購入したいと思って」。
現在、東京と芦屋のそれぞれに住まいを持つ秋山さん。「行ったり来たりしているので、両方に包丁がいるんですね。東京の家には間に合わせで買ったものがあるんですけど、ものすごくお料理がしにくい。出すたびにストレスで」。
「日本橋木屋」は、刃物を中心に金物を製造販売する老舗。包丁は日本製に特化し、木屋オリジナルのシリーズはもちろん、GLOBAL包丁で知られる新潟の「YOSHIKIN(吉田金属工業)」、「京セラ」など、多彩なラインアップが揃っています。
「すごく迷っている包丁があって」と、秋山さんが指さしたのは「YOSHIKIN」のGLOBAL。それも日本の食文化に合わせて作られた国内限定販売のGLOBAL-ISTシリーズです。ハンドルから刃先にかけて継ぎのないデザインが美しく、「乾かすときなど、衛生面を考えるとこれがいいかなと思うんですけど」と秋山さん。ただし、販売員とのやりとりの楽しさを心底知る秋山さんは、「他にもおすすめはありますか?」と、スタッフにたずねることを忘れません。
そこで、スタッフの泉本裕香さんが「一番人気のものです」と提案したのは、木屋オリジナルのエーデルワイスNo.160。切れ味や耐久性、使いやすさに優れた最高級のステンレス製洋包丁です。オールランダーな三徳包丁とペティナイフの2本を探している秋山さん。
「手の馴染みのいいものにしたいんですけど、握れますか?」とたずねる秋山さんに、泉本さんが早速、それぞれのシリーズから数本ずつ取り出し、テーブルに並べます。
まずは以前から注目していたGLOBAL-ISTシリーズを。続いて、泉本さんおすすめのエーデルワイスシリーズを握ってみる秋山さん。三徳包丁もペティナイフも、「こっちの方が持ちやすいですね」と心惹かれたのは木屋製のエーデルワイス。
「ハンドルが金属と樹脂では、持ち加減がずいぶん変わります」と泉本さん。
「GLOBALの包丁はお料理屋さんでも使われているのをよく見ますし、きれいだし、買うならこれかな?って思っていたんです。でも、(手にしてみたら)木屋さんの方が断然持ちやすい」と秋山さん。「もはや値段の問題じゃない。毎日使うんやったら、断然こっち(木屋製エーデルワイス)」と太鼓判を押します。
秋山さんが販売員にとって大切という「価値観を覆す提案」は、こちらでも。商品知識を持つスペシャリストによる提案があり、実際に見て触れることで魅力を実感して買い物をする。そんな幸せで充実した時間が百貨店の醍醐味かもしれません。
続いて訪れたのは、デンマーク王室ゆかりの陶磁器ブランドである「ROYAL COPENHAGEN(ロイヤル コペンハーゲン)」。「今回は自分のためじゃなくて、プレゼントで使う、ちっちゃいプレートを見たくて」。
「以前、ある方から小さいお皿をいただいたことがあって。ちょっとお酒を飲むときにナッツを入れたりして、ものすごくよく使っているんですね。それまで思ってもみなかったんですけど、小皿は自分ではなかなか買わない。でもいただくとすごくうれしい。私はプレゼントを贈る機会も多いので、いざという時のための小皿を探しておけたらと思って」。
さすが、事前に入念なリサーチをおこなっていた秋山さん。入店早々、テーブルにお目当ての1枚を見つけました。「丸いお皿や四角いお皿は、持ってらっしゃる方は多いけど、これは花びらみたいな形で絶対にいいと思って。それにめちゃくちゃお手ごろでしょ?」。
秋山さんが手にした9cmほどの小皿、ブルーパルメッテのペタルディッシュは1枚 税込2,750円。「ロイヤル コペンハーゲン」といえば、絵付けはすべてペインターによる手描き。1775年の設立以来守る、その格調高い芸術性はこの手頃な一皿にも、もちろん受け継がれています。
「『ロイヤル コペンハーゲン』は歴史もあるけど、今の時代にもマッチしている。私が初めて買ったのは25歳くらいかな。当時はお皿もカップも全部半ダースで揃える、というような時代で。でも、あるお客様が教えてくださったんです。秋山さん、そんな買い方はやめなさいよって。いいものは1個から買う。それを聞いて、そうか!と。お気に入りを買って、欠けたら金継ぎするんです。そうしたら味わいが出るでしょ。何でもいいものを長く使う。だから新しいものは実はあまり買わないんです」。
持参したiPadを開いて見せてくださった秋山さんのうつわコレクションには、古伊万里や柿右衛門などと一緒に、ロイヤル コペンハーゲンが並ぶ。和食によく合うと言われるロイヤル コペンハーゲンは、日本の白磁との相性も素晴らしい。
販売の神様は、プレゼント選びも一級を目指す。「ポイントは、自分で買わないもの。かつ、買えないもの」。ペタルディッシュは、そんな秋山さんが来るべき日に備えてリストアップするプレゼント候補の一つとして、見事に加わったようです。
「『ティファニー』で働いていた頃、『ティファニー』が大好きなお客様には『MARIEBELLE(マリベル)』さんの可愛い絵柄のガナッシュを差しあげたりしていました。同じニューヨークのブランドなので」。
販売のエキスパートとして、常に「お客様に喜んでもらうため」と自らを磨き、その道を極めてきた秋山さん。「マリベル」との縁も、そんなプロフェッショナルだからこそのエピソードです。
「MARIEBELLE THE LOUNGE(マリベル ザ ラウンジ)」は、ニューヨークのショコラティエ「マリベル」初のエクスクルーシブストア。バカラのシャンデリアが煌めくラグジュアリーかつリラックス感も備えた空間で、自慢のチョコレートドリンクやスイーツをいただくことができます。
マリベルブルーのポーターズチェアに腰掛け、ほっとひと息ついた秋山さんに、かつて販売員として過ごしたという大丸心斎橋店での思い出をたずねました。時折、マリベルの代名詞であるホットチョコレートを味わいながら。
「最初は国産アパレルに入って、その後、『セリーヌ』で18年。大丸神戸店で15年勤めた頃、阪神・淡路大震災が来て」。
当時の「セリーヌ」大丸神戸店は日本一の売りあげを誇る実力店。なかでも秋山さんは、そのトップ・オブ・トップ。世界の「セリーヌ」の中で一番の売りあげを作り上げたこともあります。震災により休館を余儀なくされた大丸神戸店の状況を見過ごせず、声を掛けたのが当時の大丸心斎橋店の店長。その頃、向かいには「そごう」があり、館内には「セリーヌ」が入っていた。至近距離に同じブランドが出店することは本来御法度。けれど、「(日本一である)大丸神戸店の窓口がなくてはどうするんだ!」と、大丸心斎橋店の館内に小さな『セリーヌ』をこしらえた。
「本館2階のトイレ横に割り当てられた10坪ほどのインショップで、商品は靴とバッグだけのお店でした」と秋山さん。
たとえ場所が悪く小さな店でも、数年後に大きな店にすればいい。闘志を燃やした秋山さんはスタッフと一緒に業績をあげるべく綿密な計画をたて、3年後にはフロアの一等地に約40坪もある「セリーヌ」大丸心斎橋店を作り上げた。
「ここで本当にいい経験をさせてもらいました」と、秋山さんは目を細めます。神戸から心斎橋へ。街の風情も、お客様の様子も、まったく異なる土地への異動。神戸っ子の秋山さんにとって、心斎橋という街はどんな印象だったのでしょうか?
「ものすごく刺激的でした。身近に文楽があり、日舞の先生がいたりして、ちゃんとした文化があるし、人もすごく元気で。何より、お客様のおもしろさがたまらなかったです。靴の接客をしていて、『足型に合っています。お色違いも持っておかれませんか?』と申しあげたら、『あんたおもしろいね! 買っとくわ』とか、『今日は友だち連れてきたで』とか。パワーというか、エネルギーがある。それも、自分たちがすごくパワフルなことを知ってはらへんっていうか(笑)。それまで神戸から出たことがなかったのに、今は買い物もごはんを食べるのも心斎橋です。来てから人生観が変わりました」。
「セリーヌ」、「ジョルジオ アルマーニ」、「プラダ」、「ティファニー」と、名だたるラグジュアリーブランドと共に歩んできた秋山さんの販売員歴は40数年。2015年には株式会社BRUSHを起業。現在は「販売員の地位向上」を目指して、人材育成や店舗運営のコンサルティング、研修や講演など、これまでのキャリアを総動員した活動で全国を飛びまわっておられます。
「『Ek-Chuah(エクチュア)』さんのお菓子は差し入れすることが多いんです。お店の人たちに持って行く時に。なかでも、これを」。
秋山さんのお目当てはDORA DORA(ドラドラ)。チョコレート専門店である「エクチュア」が、大丸心斎橋店でのみ販売するどら焼きです。
「ここにしかない、っていうのがいいじゃないですか。手土産は、他では売っていないものを選ぶことが多いですね。そして、1個ずつ包装されたものが絶対。常温で持ち歩けることも大切ですね。(お相手は)いろんな環境があるので」と秋山さん。
秋山さんが選ばれたドラドラ5個入り詰合せ(税込2,700円)は、粒あん3個と白あん2個のミックスセット。粒あんは、玉子風味のやさしい甘さを感じる生地に、塩チョコレートを練り込んだ粒あんを挟んだもの。白あんは、竹墨をミックスした生地に、ホワイトチョコレートを練り込んだ白あんと板状の塩チョコレートがサンドされています。
「(店舗の)スタッフは、お腹が空いている場合が多いんですね。だから、ちょっとお腹にたまるものがいい。個包装されたものは、みんなが持って行きやすいのもいいですよね。この詰合せは2種類ですけど、本当は全部一緒の方がいいくらい。例えばクッキーなんかを差し入れするとね、おいしいものばかりが先になくなっちゃうのね。そして(そのおいしいものに)当たらない子は、いつも当たらない。生存競争みたいなものでね」。
販売員時代、ご自身が経験したことも踏まえて、秋山さんは差し入れを選ぶ。お客様であれ、スタッフであれ、得意先であれ、大切なのは相手を思いやること。手土産を選ぶ、その行為ひとつにも学ぶことがたくさんあります。
“ここにしかない”、大丸心斎橋店限定の手土産を求めて本館地1階を巡る秋山さん。続いて立ち寄ったのは、いまや全国各地に店舗を構える和菓子店「たねや」。ですがこちらには、全国でも販売はここだけ、という大丸心斎橋店限定の詰合せがあります。
「この箱がとても魅力的。パッケージまで、ここにしかない!っていうのがいいですよね」。
秋山さんが手にした詰合せのボックスは、大丸心斎橋店の代名詞とも言うべき、ヴォーリズ建築の幾何学模様を全面にあしらったスペシャル仕様。さらに詰合せの内容は、「たねや」の代表銘菓である手づくり最中のふくみ天平と、たねやグループの洋菓子ブランド「クラブハリエ」のバームクーヘンminiのセット。和・洋菓子の詰合せは全国でここだけ。
リニューアル後もヴォーリズが手がけた建築意匠を引き継ぐたねや。店頭で使われている照明には大丸心斎橋旧本館で使われていた”ヴォーリズライト”を使用しています。20世紀初頭に英語教師として来日したウィリアム・メレル・ヴォーリズは「たねや」発祥の地である滋賀の近江八幡で晩年を過ごしたとされています。そのヴォーリズと「たねや」初代の山本久吉は実はご近所同士。ヴォーリズに頼まれ洋菓子の製造をしていたのがいまの「クラブハリエ」の始まりです。ヴォーリズとの深い関わりがあるたねやと大丸心斎橋店だからこそのアイテムとして、この詰合せが生まれたそうです。
「ヴォーリズ手描きのサインまでプリントされていますね」と秋山さん。手土産の達人の“ここだけ”リストに、また一つ候補が加わったようです。
続いては、クスッと笑えるユーモアのある手土産を。「ISHIYA G(イシヤ G)」は、北海道銘菓の白い恋人で知られる石屋製菓による道外ブランドショップ。銀座、新宿に続き、心斎橋は3店舗目で西日本初出店。
「恋人は置いてきました、というスタンスで2017年に銀座に1号店をオープンしました。道外店のこちらはギフトショップとして、白い恋人のDNAを受け継いだ6種のフレーバーのラング・ド・シャをはじめ、チョコレートや焼き菓子なども揃えています」と、店長の中原さん。
一番人気は、6種類のラング・ド・シャが楽しめるアソート。フレーバーは、キャラメル、北海道チーズ、北海道ワイン、ジャンドゥーヤ、ハイミルク、そして抹茶ミルク。鮮やかな花々が彩るパッケージが愛らしく、「とても可愛くていいですね」と秋山さん。
「これは何ですか? すごくおもしろい(笑)」と、秋山さんがしばらく目を離せなくなったのは、葛飾北斎の「雀踊」がパッケージにデザインされたチョコレート。北斎生誕260周年を記念して作られた限定スイーツで、北海道サロマ湖の塩を効かせたキャレ・アソート。白い恋人のチョコをアレンジした、塩で甘みを引き立てたミルクチョコレートと、クリーミーな甘みと塩のうまみを掛け合わせたホワイトチョコレート、2種類の塩チョコレートを味わうことができます。
「お土産にするなら、これは楽しいと思う! ちょっとジョークが効いてて、いいですよね」と、ショーケースを見つめる秋山さんはなんだかとても楽しそう。「このパッケージにクスッと笑ってもらえそうな方だったら、ラング・ド・シャのアソートじゃなくて、絶対にこっちですね」と秋山さん。
あのひとだったら、こういうのが好きだろうな。こういうものを喜んでくれるだろうな。そうして大切なひとを想像することも、手土産を選ぶ楽しさのひとつなのかもしれません。
「ゴルフ歴は30年くらい。私の場合は、お客様や取引先の方とまわるビジネスゴルフ。『セリーヌ』時代に上司が始めて、最初はおもしろがって見ていたんです。そうしたら、ある日その上司からパターをプレゼントされて。私は左利きなんですけど、ちゃんと左のパターを。それで泣く泣く始めたんですけど、いつの間にかその上司は挫折。ミイラ取りがミイラになって、私の方がハマってしまいました」。
コロナ禍の現在はお休み中だが、月に1〜2回ほどはコースをまわるという秋山さん。「ゴルフウェアを探すのもいいかなと思ったんですけど、ウェアはこだわりがキツイので(笑)。今日はギア(クラブ)を探しに」。
「つるやゴルフ 大丸心斎橋店」は、百貨店では珍しいスクール併設のショップ。クラブひとつ取っても、「つるや」オリジナルブランドのAXEL(アクセル)から、ハイクラスのラグジュアリーブランドMAJESTY(マジェスティ)まで、多彩なラインアップが揃っています。
「7年くらい同じクラブを使っているんですけど、いい加減、買い替えたい。この頃はギアの進化が早くて、新しいものであればあるほど飛距離が伸びる時代なんです。お友だちはみんな道具を買い替えているんですけど、私は左利きだから、買い替えたくてもモノが極めて少ない。一人だけすごい遅れていて。最新の事情を知りたいのと、そもそも左利き用のクラブはありますか?」。
支配人の小川大輔さんに切実な相談を持ちかけた秋山さん。おおよその世界がそうだが、ゴルフ業界もまた主流は右利き。左利き用のクラブを手がけるメーカーそのものが少ない。さらに男性ゴルファーが多い世界で、女性向けのクラブは皆無に等しい。すがる思いでたずねる秋山さんに、小川さんが繰り出したのがDUNLOP(ダンロップ)が手がけるゴルフブランド「XXIO(ゼクシオ)」と、自社ブランドの「アクセル」からの計2本。
クラブの使い心地は打ってこそ。併設された完全個室の打席で試し打ちができるのも、こちらの魅力です。「この服では厳しいね」と笑いながらも、打席に立った秋山さん。華麗なスイングで、爽快な音を響かせながらナイスなショットを連発します。ところが、「やっぱり、自分のクラブと打ち比べないとわからないですね…」と、後日改めてクラブを借りることに決めました。
試打の前、秋山さんは支配人の小川さんにこうたずねました。「本当に買いたいんです。ちゃんとしたものがあるなら。小川さん、正直ベースで(自社ブランドの)『アクセル』をすすめますか?」と。
販売員がお客様に本音で向き合うこと。販売の神様である秋山さん自身が、40数年に渡るキャリアの中で大切にしてきたものが込められたような、力強い問いかけにしびれました。
国産アパレルブランドで販売員キャリアをスタートし、27歳で「セリーヌ」へ。日本一の売りあげを誇っていた「セリーヌ」大丸神戸店で、世界一の売りあげを記録。阪神・淡路大震災を機に「セリーヌ」大丸心斎橋店へ異動し、店長、スーパーバイザーを歴任。その後、「ジョルジオ アルマーニ」大阪店のドンナ(ウイメンズ)マネージャー、「プラダ ジャパン」のリテール・パーソネル(マネジメント)、「ティファニー」のリージョナルディレクターなどを経て、2015年に株式会社BRUSHを設立。販売員の地位向上を目指し、人材育成や店舗運営コンサルティングなどを続ける。
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/岡本佳樹 取材・文/村田恵里佳 編集/蔵 均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
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