DELIGHT EYES
暮らしとともにSDGs
生活スタイルをアップデート
人にも環境にもいいカタチが生まれる背景には、美しい未来のビジョンが存在します。これからの時代のグッドデザインとは? SDGsにも繋がる“都市養蜂”とは? 生活をアップデートするヒントを求めて。
ARCHIVES国連が定める、持続可能な開発のための17の国際目標「SDGs」。環境保全、労働環境の改善、人権の不平等是正など、地球上のあらゆる課題を良くしていこうというこの指針によって、人々の「ものを作る」「ものを買う」という行動基準が変わりつつあります。環境にやさしい、人にやさしいということが、これからのモノ選びのスタンダード。今回はMoMA Design Storeが選ぶ、アートとSDGsの理念が融合したプロダクトをご紹介します。
消費者が、商品そのものだけでなく、それが生まれる過程や背景に重きを置く時代。環境に負荷をかけない、労働者が搾取されない、といった「誰も置き去りにしない」SDGsマインドを持ったアパレルや雑貨、アクセサリーが世界中で日々生まれています。アートを人々の生活の中に提案し続けるMoMA Design Storeでは、美しいデザインとともに「時代を反映している」というニューヨーク近代美術館のキュレーション方針に則し、SDGsの流れを汲んだプロダクトを展開。デザインを楽しみながらSDGsの掲げる17の目標達成に繋がる商品を幅広く揃えています。
「ダウンのような暖かさで素足をつつみ込む」がキャッチコピーの日本発の秋冬サンダルブランド<SUBU(スブ)>のMoMAエクスクルーシブバージョン。今回のコラボレーションは、“エコ”と“パッチワーク”をキーワードにアイデアを膨らませ、COOL、WARM、NEUTRALというMoMAらしい色柄のパッチワークをリサイクル素材で表現しました。
<SUBU>から提案されたこの素材は、使用済みペットボトルを原料にした繊維から作られ、サンダルを履ききったのちに再度リサイクルできる循環可能なもの。原料のトレーサビリティ(廃棄物の回収段階から製造、販売までの過程で非認証原料の混入がないかなどを追跡可能なこと)に加え、廃水処理やエネルギー使用などの環境面、また労働環境の適正さなど、多角的なチェックを経て選ばれました。
水や汚れに強く、靴底も丈夫な冬のサンダル。履き心地のよさに加え、アートピースのような色のコンビネーションに気分が高まり、サステナブルな生産背景に共感をおぼえる。履く人にポジティブな感覚を与えてくれるプロダクトです。
現在、アップサイクル(素材をリサイクルして新たな価値を生み出すこと)の分野ではさまざまな原料が利用されています。こちらの<HOZUBAG(ホズバッグ)>は、パラグライダーを再生利用してバッグを作るという、ファッションブランド<THEATRE PRODUCTS>による取り組み。厳しい安全基準のためにリユース不可となったパラグライダーを回収・解体し、バッグに作り変えることで地上資源として蘇らせます。丈夫で軽量というパラグライダー生地の特性はバッグとしても使い勝手が良く、裁断の仕方によって一つひとつ表情が異なるのも魅力。
<HOZUBAG>の活動拠点は、脱プラスティックに力を入れている京都・亀岡市。ほか、ペットボトルのリサイクル生地を使用したバッグなど、多彩なアプローチで資源が循環する社会を目指すとともに、地域の活性化、雇用創出、福祉への貢献にも取り組んでいます。
アートをより身近に感じてもらうために、常に新たな方法を模索し続けるMoMA Design Store。MoMAの永久収蔵品をモチーフにしたジグソーパズルは、ピースを自らの手で組み進めながら、絵画の世界を楽しめる商品。作っていく過程で一つひとつのピースをじっくり眺めることにより、繊細なタッチや色使いなど、絵を眺めているだけでは気づかないディテールを堪能できます。
このアートパズルも、95%のリサイクル素材を使用したエコフレンドリーなプロダクトの一つ。対象年齢は8歳以上のため、子どもがアートやエコロジーの概念に触れるきっかけとしても最適です。フリーダ・カーロ、横尾忠則、アルマ・トーマス、アンドリュー・ワイエスの作品を再現した第一弾に続き、この秋は村上隆の3枚組絵画『727』がラインアップに加わりました。
リリー・P. ブリス、アビー・オルドリッチ・ロックフェラー、メアリー・クイン・サリバン。1929年、近代美術の重要性を唱えた彼女たちの私蔵コレクションを基にスタートしたMoMAは、当時はまだ受け入れられていなかったモダンアートの普及に尽力しました。伝統的な絵画や彫刻に加え、建築やデザイン、映画や写真などすべての視覚表現をアートと位置づけたことでも知られます。
MoMAの理念は、想像力を刺激しインスピレーションを与える場所として、人々がモダンアートを楽しむ手助けをすること。その姿勢がストアの商品選定基準にもつながっていると、MoMA Design Storeの瀧本麻子さんは語ります。
「私たちの選定基準は、そもそも美術館とデザインとの関係性にさかのぼります。MoMAは初めて建築とデザインに向き合ったミュージアムで、古典的な伝統美術のみが芸術として認知されていた時代に『生活にはデザインが重要な役割を持っている。身の周りにある美しいデザインを多くの人に伝え、残していきたい』という考えのもとに設立されました。その後の1950〜60年代には、テレビなどの家電製品やイームズを代表する手頃で近代的な商品が登場。その中でMoMAは『グッドデザイン』を定義することで自らの役割を果たしていきます。彼らはデザインの美しさだけでなく、コストパフォーマンスや使いやすさにも優れた商品こそがグッドデザインであると考えました。それが今日のMoMA Design Storeのセレクションにも受け継がれているんです」
その指針をもとに行われる商品選定では、ミュージアムの収蔵品に関わるもののほか、時代を反映したもの、イノベーティブな技術や素材を使用したもの、などが基準に置かれているそう。
「こうした意味で、エコフレンドリーなプロダクトは現代のグッドデザインの定義に当てはまるので、自然とSDGsの項目に合った商品が多くセレクトされています」
ここからはSDGsなファッションプロダクトをいくつかご紹介しましょう。フランス・リヨン出身の若きデザイナートリオ<IZIPIZI(イジピジ)>のサングラスは、植物由来のバイオマスプラスティック素材を使用したサステナブルなアイテムです。オーバル型のフレームに印象的なカラーを組み合わせたレトロな佇まいが、スタイルのアクセントとして活躍。素材の革新性に加え、12gという驚きの軽さ、紫外線カット率は99パーセント以上と、実用性にも優れています。
アルゼンチン発の<VACAVALIENTE(バカバリエンテ)>は、皮革産業で廃棄された端材を用いたレザーアクセサリー。特許取得済みの製法により、レザーを粉砕してパウダー状にし、それを再構築して新しい生地を制作。原料を余すことなく使い切るという工夫が生きたプロダクトです。10月発売のMoMA Design Storeのエクスクルーシブモデルは、MoMAらしいユニークなカラーリングでデザインされました。
大胆なパターン使いが目をひくこちらのマフラーは、デッドストック素材を再利用し組み合わせたもの。フィリピンにある家族経営のファクトリーで、柔らかく傷つきにくい合成繊維のニットを使用し、余分な裁断や廃棄物を出さずにデザイン性に富んだアイテムへとアップデート。既存の原料を生かしたものづくりが行われています。
日用品では、資源を有効活用した商品や安全性の高い素材が並びます。1983年の<ボダム>のアーカイブは、リサイクル素材で現代らしくリプロダクトされました。再生プラスティックを使用した色とりどりのベースに、ガラス製の容器を合わせたポストモダンなデザイン。80年代ならではのポップでキッチュな味わいが楽しめる、MoMA限定のエクスクルーシブモデルです。
紙皿や紙コップを彷彿とさせるデザインですが、使い捨てではありません。成長の早い「竹」に耐久性のあるメラミン樹脂をブレンドして作られた<b ファイバー>のエコフレンドリーな食器です。環境に優しいことはもちろん、遊び心のあるデザインとカラーで食の場をおしゃれに演出してくれるプロダクト。割れにくいのでピクニックからバーベキューまで、屋外でのアクティビティにも最適です。洗練感のある4色セットはMoMA限定。
“マイ箸”、“マイスプーン”としておすすめなのが、こちらのエコ素材を使用したカトラリー。80年の歴史を持つドイツの生活雑貨ブランド<Koziol(コジオル)>は、100%ドイツ製、100%リサイクル可能にこだわり、アーティスティックで環境や社会に優しい製品を生み出しています。コンパクトに収まるよう設計されたカトラリーセットは、有害物質を一切使用していない、リサイカブルな熱可塑性プラスチック製。さらに掴みやすさや口あたりの良さなど、カトラリーとしての使いやすさも申し分なし。
日々使うものが将来へどう繋がるか、社会にどんな影響を与えるか、先を見据えたもの作りや購買活動があたりまえとなりつつ昨今。脱プラスチックの製品や再生素材のプロダクトは「GOAL 12:つくる責任 つかう責任」「GOAL 13:気候変動に具体的な対策を」「GOAL 14:海の豊かさを守ろう」に。適正な労働条件でつくられたものは「GOAL 1:貧困をなくそう」「GOAL 10:国や人の不平等をなくそう」に。私たちのモノ選びは、さまざまなSDGsの目標に貢献することになります。MoMA Design Storeが届けているのは、そんな時代のムードに応えるプロダクト。アートを楽しみながら社会を良くしていくという、現在のグッドデザインがここにあります。
※この記事の内容は2021年9月24日に公開された時点のものです。
取材・文/関根麻貴(The VOICE) WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE) 写真協力/MoMA Design Store
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