DELIGHT EYES
暮らしとともにSDGs
生活スタイルをアップデート
人にも環境にもいいカタチが生まれる背景には、美しい未来のビジョンが存在します。これからの時代のグッドデザインとは? SDGsにも繋がる“都市養蜂”とは? 生活をアップデートするヒントを求めて。
ARCHIVES大丸心斎橋店本館地1階のはちみつ専門店 〈ラベイユ〉では、「心斎橋のはちみつ」を販売しています。これは、環境保全や地域との共生を目指して始まった「心斎橋はちみつプロジェクト」により、大丸心斎橋店の屋上に設置された蜂の巣箱で採れたはちみつを商品化したもの。地域密着のオリジナルのはちみつは、どのようにして生まれたのか? 養蜂、採蜜の現場を紹介します。
地上約60mの位置にある大丸心斎橋店の屋上。2019年のグランドオープンの際に設けられた約900㎡の屋上に、今年3月に設置されたのが5群の蜂の巣箱です。ここで最近注目されている都市養蜂が行われ、ミツバチが大阪市内の花々から蜜を集めてきます。
都市養蜂は、近年パリなど世界中で盛んに行われ、日本でも銀座や名古屋などの都心で行われています。街にミツバチが行き交うことで生態系が循環し、生き物の繋がりができたり緑化にも貢献。持続可能な開発目標、SDGsの「陸の豊かさも守ろう」という目標にも繋がると注目されています。
大丸心斎橋店では、本館リニューアルを機に屋上で何かできないかと考え、地1階に店舗を構えるはちみつ専門店 〈ラベイユ〉と協働し「心斎橋はちみつプロジェクト」を立ち上げます。巣箱からは、約20万匹のミツバチが飛び立ち、半径3km圏内の大阪市内から蜜源を探し、蜜を集めてくるのです。
「心斎橋はちみつプロジェクト」の大きな目的の一つとして、地域との共生が挙げられます。大丸心斎橋店のプロジェクト担当・吉田真治は、「都心でも自然に咲く草木や花、野菜がとても大事で、それに都市養蜂が関わっている。また子どもたちに採蜜活動に参加してもらうことで、たったスプーン一杯の蜜を採るために、1匹のミツバチが一生を捧げることなどを知ってもらい、食育にも繋げられればなと思います」。この想いは、SDGsの「住み続けられるまちづくりを」という目標にも繋がるのではないでしょうか。
はちみつ専門店 〈ラベイユ〉にて販売している「心斎橋のはちみつ」。環境保全や地域との共生を目指して始まった「心斎橋はちみつプロジェクト」により、大丸心斎橋店の屋上に設置された蜂の巣箱で採れたはちみつを商品化しました。小サイズ(36g)と大サイズ(125g)の2サイズで展開しています。
※「心斎橋のはちみつ」と関連商品は、8月上旬に販売を開始し、予定数に達し次第販売を終了いたします。
3月から巣箱を設置しスタートした2021年の「心斎橋はちみつプロジェクト」も、7月に今年最後となる3回目の採蜜が行われました。春から夏にかけては、蜜源となる花々や草木が茂るベストシーズン。今回は、この最終採蜜の様子をレポートします。
屋上に着いたとたんに驚かされたのが、巣箱の周りを飛び交うミツバチの多さ! 「いつもより活発に動いていますね。今日巣箱から蜜をとってしまうので、蜂も少し攻撃的になっているのかもしれません。気をつけてください」と吉田。少し顔が青ざめた(?)取材班、防護服を着こみ、恐る恐る取材に挑みます。
大丸心斎橋店の屋上に設置された巣箱は全部で5群。1群の中に3箱が入れられ、箱の中には、蜜が詰まった巣板が9枚入っています。セイヨウミツバチは、蜜を集めるのにおよそ半径3kmの範囲で蜜源を探しますが、大丸心斎橋店を中心に考えると、だいたい環状線周辺までのエリアとなり、靱公園や大阪城公園、淀川河川敷などの花々から蜜を採取してくるのではと考えられます。
「いくつかの場所で都市養蜂をしていますが、この時期にこれだけ蜜が採れることは稀です。弊社の中でもどうしてこれだけたくさん採れるのだろう? と話題になっているほどです」。そう語るのは、ラベイユ・養蜂部の加藤弦さん。自社で営む養蜂場を東京・高尾に持つほか、日本橋、渋谷、博多などでも都市養蜂に携わるスペシャリストですが、心斎橋のミツバチには驚かされたようです。
大丸心斎橋店の屋上で始めた都市養蜂ですが、実は都心で養蜂をするのは簡単なことではありません。大阪府の養蜂に関する条例を満たす条件をクリアするまでに時間がかかり、「申請してからなかなか許可がおりませんでした。実現に向けて養蜂に関わるあらゆる方面にお願いして信用度を高めていき、1年かけてやっと許可をいただきました」と吉田。あらゆるハードルを越えて、なんとか心斎橋での都市養蜂が実現したのです。
2021年の「心斎橋はちみつプロジェクト」は、3月に巣箱を設置してスタートしましたが、採蜜はこの日で3回目。採蜜以外にも、ハチの健康状態などを調べながら1週間に一度、巣板を手入れしなければなりません。「1群にだいたい5万匹のミツバチがいますが、その中で女王蜂は1匹。一番下の巣箱にいますね。
そこで卵を産みます。働きバチは上の巣箱に蜜を集めますが、いっぱいになってしまうとほかの場所へ飛んで行ってしまう危険性もあるので、それもチェックするのです」と吉田。
巣箱から出された巣板の表面についている白い膜のようなものは蜜蝋です。「ミツバチが体内で作り出す天然の蝋です。蜜蓋とも呼ばれていて、糖度が十分に上がるまで蜜が出てこないように蓋の役目も果たします」と加藤さん。採蜜をする遠心分離機にかける前に、まずはこの蜜蝋を取り払います。
蜜蓋を剥がすと、巣板の中にはびっしりと蜜が詰まっています。はちみつ専門店 〈ラベイユ〉では、蜜の糖度が80%を超えなければ、はちみつとして商品化されず、サブレなどのお菓子に使用されます。今回、心斎橋で採れた蜜は80%を超えていて、糖度十分なものです。
蜜蝋をそぎ取った巣板は遠心分離機に入れ、遠心力で蜜を外に飛ばして採蜜機に貯めていきます。この日ラベイユが用意してくれた採蜜機はイベント用のもので、手作業でハンドルを回しながら、蜜を巣板から飛ばしていきます。
巣板から飛び出した蜜が遠心分離機にどんどん溜まっていきます。「1枚の巣板から採れるはちみつの量は、1.5kgから2kgぐらいですね」と加藤さん。販売する「心斎橋のはちみつ」36gなら、約40瓶分ぐらいの計算ですね。
この日の最終採蜜で採れたはちみつは170kg! これは想像以上の多さで、1回目、2回目の採蜜分と合わせると約400kg。はちみつプロジェクトを開始したときの目標量は200kgだったので、いかに予想よりも多く心斎橋でたく採れたかがわかります。
遠心分離機に溜まった蜜は、蜜蝋や不純物を取り除くために、3重になっている濾し器にかけられます。ここで濾された蜜はさらにラベイユの本社に運ばれ、再び濾されて純度をあげていきます。
はちみつ専門店 〈ラベイユ〉では、はちみつを加工するときに基本的に熱処理をしません。なぜならば、はちみつは40度以上の熱を加えてしまうと酵素が死活してしまい、はちみつ本来の栄養も減ってしまうと言われているからです。
大丸心斎橋店の屋上を飛び立ったミツバチが、約3カ月をかけて大阪市内の花々から集めてきた「心斎橋のはちみつ」が店頭に並びます。桜が咲き誇る季節にも集められたせいか、花の豊かな香りが引き立ちます。口に含むと、しっかりと甘さがありながら喉越しはすっきり。とてもおいしいはちみつが生まれました。
「心斎橋のはちみつ」が販売されるのは、大丸心斎橋店本館地1階にあるはちみつ専門店 〈ラベイユ〉。自社養蜂するものをはじめ、世界12カ国、80種類以上のはちみつを集める専門店です。
はちみつ専門店 〈ラベイユ〉では、世界の豊かな大自然の中で採られたはちみつが並びます。ひまわり、アーモンド、オーク、コリアンダー、モカコーヒーなど個性豊かでバラエティに富む味が揃っていますが、そこに「心斎橋のはちみつ」が加わりました。
また、10月1日(金)からは「心斎橋のはちみつ」を使った商品が、本館地1階<黒船>にて販売予定。この新たな展開にもご期待ください。
※「心斎橋のはちみつ」と関連商品は、8月上旬に販売を開始し、予定数に達し次第販売を終了いたします。
※この記事の内容は2021年9月24日に公開された時点のものです。
写真/木村華子 文・編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
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