Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES関西発の月刊誌『SAVVY』でイラストレーターとしてデビューし、現在は東京を拠点に幅広い活躍を続けているよしいちひろさん。可憐でいて、エッジが効いたもの選びにも注目が集まる人気イラストレーターが、“いま気になるもの”をキャッチすべく、大丸心斎橋店を巡ります。
※2022年2月をもって閉店いたしました。
まず訪れたのは、メンズフロアにあるコスメティックブランド「FIVEISM × THREE(ファイブイズム バイ スリー)」。2018年に業界初のメンズ総合コスメブランドとして誕生しながらも、年齢や性別を問わない新時代を切りひらく存在として大きな注目を集めています。
関西で長く親しまれている女性誌『SAVVY(サヴィ)』で、約3年に渡ってコスメ連載を担当しているよしいさん。新作コスメには常にアンテナを張っていて、なかでも「ファイブイズム バイ スリー」は、「ずっと気になっているブランド」のひとつ。
「女性のコスメブランドとは違った提案が聞けるかなと思って、常に注目していて。しかも他のコスメより触ってみたいと思うんです。ユニセックスのブランドだから、想像が追いつかない部分があって」。
アイシャドーは実際に愛用しているというよしいさん。やはり気になるのは新作で、「最近、発売になったものはありますか?」とショップマネージャーの前山さんにたずねます。
「今春発売になったFF シークレットエージェントUVは特に人気があります。」と前山さん。
テスターを手になじませたよしいさんは、「パールが入っていますか?」とご明察。
「お肌の凹凸だけでなく、肌色のムラなども光の効果で飛ばしていただけるようなアイテムになっています。カラーレスでマスクに色が付かないのも安心です」と前山さん。
「あと、コスメマニアの知人が、これがすごく良かったって」と、続いてよしいさんが目をやったのは、スティックタイプのファンデーション。
「直接、お肌にスライドさせて使っていただくファンデーションで、パウダーも入っていますのでこれ1本でお仕上げいただけます」。
前川さんの案内を聞き、再びテスターを手の甲にすべらせたよしいさんは、「すっごくサラサラ。厚塗り感がなく、ナチュラルで」と驚きます。
「皮脂吸収パウダーが入っておりますので、脂っぽくなりにくく、サラサラのテクスチャーです。また、肌と密着感の高いオイルワックスゲルを採用していて、崩れにくいです」と前山さん。
ジェンダーレスであり、既成概念にとらわれないコスメが「ファイブイズム バイ スリー」の真骨頂。よしいさんいわく、「想像がつかない、だからこそお店で見たいなって思うんですよね」。
※2022年2月をもって閉店いたしました。
「ファイブイズム バイ スリー」からメンズフロアをぐるりとまわり、続いて訪れたのは「Barbour(バブアー)」。創業は1894年。英国のアウトドア・ライフスタイルを体現するブランドで、代々の主力はメンズですが、近年は女性ファンが多いことからレディスアイテムも続々展開しています。
2021年の春夏アイテムである、クラシックタータンシャツをお持ちだというよしいさん。「メンズものをオーバーサイズで着るのも可愛いですよね」、ということで、この日は近年のムードを反映したオーバーサイズアイテムを探すことに。
スタッフの栗生準也さんがまずおすすめしてくれたのは、その名もオーバーサイズ ワックス ビデイル。昨年リリースされた「バブアー」の代名詞であるワックスドジャケットのひとつです。乗馬用ジャケットとして誕生した定番のビデイルをオーバーサイズ仕様に仕立てています。
「定番のビデイルのサイズアップとも違うのですか?」とよしいさんがたずねると、「肩幅や袖丈、着丈などが微妙に調整されていて、今っぽいオーバーサイズ感が出るんです」と栗生さん。
早速、腕を通し羽織ってみたよしいさん。袖口をまくりながら、「やっぱり、このチェックが萌え」と笑みをこぼします。
鏡の前でバランスを確かめながら、ふと脇を見ると犬用のワックスドジャケットが! 愛犬がいるよしいさんは「素敵!」と即反応。「犬用の服ってファンシーなのが多くて、こういうシックで大人っぽいものは少ないですよね」と新たな発見にワクワクが加速。ワックスドコットンを使ったスポーツハット、フラッグや鳥のあしらいが可愛いソックスなど、「これもいいなぁ〜」と次々に気になるアイテムを見つけ出します。
「直営店はいろんなアイテムを着比べできるのが楽しい」というよしいさんは、オーバーサイズ以外のワックスドジャケットも積極的に試着。フライフィッシング用のジャケットとして生まれたショート丈のスペイ、さらに乗馬用コートとして開発されたバーレイのレディスモデルであるレディスバーレイを羽織り、「もっと重いのかと思っていたら、意外に軽いですね。ロングは8より10の方がいいかな」とサイズ感もしっかり確認。
「オンラインだとどっちを買えばいいかわからないし、やっぱりお店へ来るのが一番ですよね」とよしいさん。
「ファッションでも雑貨でもライフスタイルでも、ジャンルを問わず世界を表現できるところがイラストレーターっていいなぁと思う」というよしいさん。本職はイラストを描くことだけれど、さまざまな媒体やブランドから引っぱりだこなその魅力は、感度の高さ。とりわけ、よしいさんが選ぶファッションアイテムやコーディネートはいつも素敵で、お手本にする女性は決して少なくありません。
「元々、フリルが付いたブラウスやざっくりしたニットのようなガーリーなものが好きなんですけど、最近は年齢が上がってきたので、それらをどう大人っぽく着こなすか?を常に考えています」。
そんな第二のお年頃( ? )を迎えるよしいさんが、続いて訪れたのは「Curensology(カレンソロジー)」。“いつも旅をしている知的でエレガントな女性のためのワードローブとスタイル”をテーマに、多彩なオリジナルのほか、セレクトやヴィンテージアイテムも揃えるユニークなショップです。
「あのスカーフは染め替えたものですか?」と、よしいさんが最初に目を留めたのはエルメスのスカーフ。再びのご明察、なぜわかったのですか?と聞けば、「フォトショップで色フィルターをかけたみたいな感じだなと思って。(本職は)イラストレーターなので」と照れ笑い。
続いて気になったデニムは「カレンソロジー」のオリジナル。ハイウエストな股上とワイドストレートなシルエットが特徴のデニムで、履き心地抜群の360度ストレッチが採用されています。ハイウエストなパンツが大好きだというよしいさんは、「履いてみたいです」と早速フィッティングルームへ。
「生地が柔らかくて履き心地もすごくいいですね。デニムは気になるものを見つけては試着するんですけど、私、脚がめっちゃ短いから、実際に履いてみたら違う…ってなる(苦笑)。でもこれはウエストが高いから脚長に見える。今っぽさもあって、これだけスタイル的に満足するものってなかなかないです。ウィッシュリストの、かなり上位に入りました!」と、早々にお気に入りを見つけたよしいさん。
「あと、『Heriter(エリテ)』は置いていますか?」とたずねるよしいさんに、スタッフの松本京子さんが差し出してくれたのがキャメルのアランニット。聞けば、よしいさんはブランド「エリテ」とのコラボアイテムを試作中で、2021年12月には自身がコレクションするアンティークからインスピレーションを得て、手仕事たっぷりに仕立てたブラウスを発売する予定だそう。縁のあるブランドのニットを羽織り、さらに「可愛い!」と気になった黒のヴィンテージバッグも合わせると、コーディネートは完璧!
「全身お買いあげで!って…やりたい(笑)」というよしいさんですが、最近大きなお買い物をしてしまったため、しばらくはガマンの時期。「年末には、きっと買います!」と清々しい言葉を残して、お店を後にしました。
「友だちがおくるみとして使っていたベビー用のバスタオルがあまりにかわいくて、すごく気になっていたブランドなんです」。
「FEILER(フェイラー)」は、ドイツの伝統工芸織物に創意工夫を重ねた、独自のシュニール織が特徴的な名門ブランド。その歴史は70年以上、日本での販売も50年を越えるというから、国境を越えて長く愛されているブランドであることがよくわかります。
「これまでのフェイラーはお花柄が定番だったのですが、若い世代にも親しんでいただけるようにとここ数年で可愛い絵柄が登場するなど、ブランドとして大きな変化を遂げています」と、スタッフの松本さん。
よしいさんがお友だちを介して初めて出会ったのは、てんとう虫やフクロウ、ハリネズミなど小さな生き物が散りばめられた、通称ハイジ柄。
「ほとんどのデザインは1年ほどで入れ替わってしまうのですが、ハイジ柄のように人気のものは色や形を変え、新作として登場する事もあります」と松本さん。
そんな一番人気のハイジ柄アイテムで、「おばあちゃんが持ってるポーチみたいで可愛い」とよしいさんが心惹かれたのが巾着バッグ。「フェイラー」はドイツと日本ではまったく異なるアイテムを取り扱っていて、こちらは日本限定です。
スリッパやエプロン、さらに湯たんぽまで( ! )揃う多彩なラインアップに目移りしながら、「鮮やかだけど、どれも品があって素敵ですよね」とよしいさん。確かに、小さな子どもたちにも似合う愛らしいデザインなのに、歴史と伝統に裏打ちされた気品のようなものが「フェイラー」のアイテムには漂っています。
「シュニール織のシュニールはイモムシのことで、このぷくぷくした独特の織り方を指しているんです。一般的なタオルはループが巻いてあり、使ううちに硬くなってしまう特性があるのですが、フェイラーのシュニール織は何年も柔らかいまま使っていただけるのが特徴です」と松本さん。
可愛いうえに実用的。日本らしいアイテムもあって、「絶妙ですよね。上級者な感じがします」と、よしいさん。またひとつ、よしいさんの心を弾ませるウィッシュリストにドイツの名門が仲間入りを果たしたようです。
「おひさしぶりです!」と、よしいさんが朗らかに声を掛けた先には、今や大阪で5店舗ある「PAINDUCE(パンデュース)」を率いる米山雅彦シェフ。よしいさんにとって米山シェフは、甘酸っぱい青春時代を知る“お兄ちゃん”的存在。
大学卒業後、まだイラストレーターを始める前のよしいさんは神戸を拠点とするギターポップバンドのボーカリストとして活動。バンドと並行してアルバイトをしていたのが神戸の名ブーランジェリー「コム・シノワ」で、ちょうど同時期にキッチンで腕を磨いていたのが独立前の米山シェフだったそうです。
「米山さんが窯からパンを出している横で、恋人に浮気されたことを泣きながら話して(笑)。バンドしながら大阪でOLをしていたときも、納得できない理由でクビになって、本町の『パンデュース』に駆け込んで話を聞いてもらって」。
「クビになるってソコソコですよね」と笑いながらも、「今や売れっ子のイラストレーターになって」と称える米山シェフの口調は、頼もしい妹に声をかける、まさに兄さながらの親しみたっぷり。
現在はご家族とともに東京で暮らすよしいさん。この日は久々の帰郷で、パンデュースのパンを味わうのも久しぶり。「おすすめはどれですか?」とシェフにとっておきをたずね、野菜たっぷりのガレットとディンケル小麦のフィナンシェ、大丸心斎橋店限定の黒豆フランス、さらにできたてが味わえるスープもチョイス。
メニューが決まろうとも、久々に再会した2人の話題は尽きず。
「来年の春に、石川県にパンデュースができるねん。加賀市の無人駅がまるごとパンデュースになる。コワーキングスペースとして利用できるカフェも併設して」と、驚きの新展開を話す米山さんに、「すごい、そんなこと!」とよしいさんは目を丸くします。
心弾む“兄の朗報”に驚きつつ、よしいさんもイラストレーターとして新たな活動を始める予定があるといいます。「去年、女性4人でディレクションユニットを結成して。フォトグラファーの松元絵里子さん、デザイナーの葉田いづみさん、編集の高原たまさんとアートブックを作ったり、来年にはオリジナルのスカーフを作って販売する予定で。女の子だけで集まってワチャワチャするのはやっぱり楽しい。その楽しさがポジティブなパワーに変換される感じがして、まるでバンドみたいなんですよね」とよしいさん。
音楽からイラストへ表現方法は変わっても、よしいさんが「可愛い!」「素敵!」と反応する素直さはきっとそのままで、ショッピングの合間もその片鱗はあちこちに。そしてそんな閃きを大切にするあり方が、マイペースに感度を高め続けるよしいさんの秘訣なのかもしれません。
1979年兵庫県生まれ、東京都在住。雑誌『SAVVY(サヴィ)』でイラストレーターとしての活動を開始し、東京へ移り住んだことをきっかけに雑誌や書籍、広告など幅広く活躍。みずみずしいタッチで女性の憧れや日常を描く作風が人気。2020年には女性4人によるディレクションユニットwitchi tai toを結成。https://www.instagram.com/chocochop2//
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/岡本佳樹 取材・文/村田恵里佳 編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
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