Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES報道からスポーツ実況まで、さまざまな情報を伝える関西テレビ放送、アナウンサーの岡安譲さん。実は正真正銘のスイーツ男子で、「オカヤスイーツ博士」としても知られる人物。現在もテレビやラジオでおすすめのスイーツをたびたび紹介しています。今回はチョコレートを目当てに、大丸心斎橋店のカフェやサロンを巡っていただきました。
岡安さんがスイーツに目覚めたきっかけは、5歳の時だそう。
「買ってもらったレディーボーデンが美味しかったんです。でも、うちは4人兄弟なので、取り合いになって食べられるのは少し。だから自分でアイスクリームを作ってみたのが、最初のスイーツの記憶ですね。もちろん上手くいかなかったんですけどね(笑)。それくらい、物心ついたころから甘いものが大好き。家族全員、甘党です」
そんなスイーツ博士の原点を聞きながら最初に訪れたのは「Délices tarte&café(デリス タルト アンド カフェ)」。色とりどりのフルーツをふんだんに使ったタルトが常時10種以上そろう専門店。ここ大丸心斎橋店は、テイクアウトとイートインが可能です。
まず最初にいただいたのは、1月24日(月)から2月14日(月)に味わえるバレンタイン限定品、チョコレートとラズベリーのタルト。タルト生地にカスタードを絞り、フランボワーズリキュールを効かせたチョコレートクリームを重ねて、フランボワーズを飾った一品です。
提供されたとたん「あーっ! これ、絶対おいしい! 間違いない」と見た目から確信する岡安さん。テンションが急上昇していることがわかり、ひと口食べると笑みがこぼれます。
「チョコレートクリームの中に、ほのかにラズベリーが感じられて、下のタルトはサクサク。その上のカスタードはもったりしていないタイプ。僕は濃厚なカスタードも好きですが、これは上のチョコレートクリームが軽い分、合わせて軽めにしてるんじゃないかな」という分析に、店長の平井春菜さんもびっくり。「はい、その通りです」とうれしそうです。
「食べ進めるごとにラズベリーの香りが強くなってきて、先端の部分とフチの部分で、味の感じ方が違いますね」と岡安さん。端から端までじっくりと味わいます。
スイーツの中でも、タルトはまず断面をチェックするという岡安さん。特に、どこに注目しているか聞くと「(断面の)“比”です」とキッパリ。
「タルト生地、クリーム、ムースやフルーツ。私の中の黄金比があるんです(笑)。感覚的ですが、このチョコレートとフランボワーズのタルトは、黄金比に近いですね」。
膨大なスイーツを食べてきた岡安さんにとって、タルトとはどんなお菓子なのでしょうか。
「タルトのいいところは種類が無限なところ。どんなおかずも受け止めるごはんと一緒で、下のタルト台はなんでも受け止められるのが魅力ですよね」と、タルトの懐深さを力説する岡安さん、まさかの「ごはん=タルト説」が飛びだします。
「例えば、フルーツのタルトでも、どんなフルーツをどれだけの量、使うかによって、果汁が下の生地やタルト台に染み込むバランスや、しっとり感が変わる。すると食感も変化する。そうした細かい表情を楽しめるお菓子がタルト。また土台と上のクリームやフルーツが渾然一体となるオーケストラ的なお菓子ですよね」。
今回は単品を楽しんだ岡安さんですが、ここ大丸心斎橋店は関西の姉妹店の中でもビュッフェを楽しめる貴重な一軒。「ビュッフェもまた来たいですね」とお店を後にしました。
続いて訪れたのは「SALON de thé VORIES(サロン・ド・テ・ヴォーリズ)」。ヴォーリズ建築をイメージした店内には、改装前の同名サロンから受け継いだ照明器具やパーテーションなどが使われています。クラシックな意匠が随所に散りばめられ、静かな時間が流れています。
ここでの目的は、バレンタイン限定品という新作のフォンダンショコラ(ドリンク付き1500円)。中からチョコレートが流れ出すフォンダンショコラに、近年注目されているルビーチョコレートで作るアイスクリームを重ね、生クリームやフルーツが散りばめられています。
岡安さん、まずはじっくり観察して「あぁ、いいですね〜」と感嘆の声。ナイフを入れると「やわらかいっ!」と目が輝きます。
「実にまろやかで濃厚ですね。フォンダンショコラは舌への跳ね返りがほとんどなく、チョコレートが溶けて染みるイメージです。濃厚なチョコレートの味と酸味のあるルビーチョコレートとの相性が抜群。チョコレートの雑味がなく、“ひやあつ”の温度も素晴らしい!」。
思わず食べたくなる見事な食レポは、テレビ番組のワンシーンのようです。
皿盛りデザートを意味するアシェットデセールは、持ち帰りのスイーツとは異なり、アイスクリームやソース、フルーツなどを使い、その場でしか食べられないできたての盛り付けや味わい、温度が醍醐味。そんなアシェットデセールも大好きだという岡安さん。
「プレートで世界観を表現しているのが、サロン・ド・テ・ヴォーリズの魅力ですよね。なにより、家では体験できないスペシャル感があります。サロンって、雰囲気や時間をまるごと楽しむ非日常の場所。こちらのお店にぴったりですね」。
さらに、美しい盛り付けを眺めながら「これは庭園を表現しているのかな?」とポツリ。聞けば、カフェでくつろぎながらスイーツを食べている間も、商品の表現や味について思考を巡らせるそう。
「この盛り付けはなんだろう?とか、他に言葉の表現はないかな?タイトルをつけるとすると?…など考えることでアナウンスメントのヒントになるんですよね。取材や仕事においてインプットは行っていますが、イマジネーションを働かせることが少ないので、こういう時に想像力を鍛えているんです。緊張が緩んでいる時の方が、いい言葉が浮かびます」と岡安さん。
趣味の世界をも日々の鍛錬に絡める、プロフェッショナルな流儀が垣間見えます。
くつろぐ岡安さんに、大丸心斎橋店の思い出を聞いてみると…。
「『ラデュレ』のマカロンが大好きで、よく買いに来ていましたね。当時は大丸心斎橋店にしかなくて。パリへ行った時も、足を運びました。現地のマカロンは少し大きいのが、いいんですよね」
そんな思い出を聞きながら、次はパリから日本へ上陸したお店へと向かいます。
岡安さんは、長年つとめる競馬実況のアナウンスでも知られています。
「パリには凱旋門賞を観に行く出張が多いのですが、時間がある時はパティスリーをハシゴします」と海外でも甘党員として活動を怠らない様子。なんともステキな出張です。
「LE CHOCOLAT ALAIN DUCASSE(ル・ショコラ・アラン・デュカス)」もパリが本家。2013年に、料理界の重鎮、アラン・デュカスが展開し、2018年に日本上陸。国内4店舗目、大阪唯一の店舗がこちらです。
今回は、イートインコーナーで、大丸心斎橋店限定のプロフィットロール ソース・ショコラ グラス・ヴァニーユ(1,870円)を楽しみます。
プロフィットロールとは、フランスでは広く知られるデザートで、シュー生地にアイスクリームを挟み、温かいチョコレートをかけたスイーツ。それを、「ル・ショコラ・アラン・デュカス」ではカスタード入りの小さなシュークリームと温かいチョコレートソース、バニラアイスをそれぞれ個別に盛って提供。それぞれをお好みの組み合わせや好みの量で食べられる趣向です。
まずはシューをチョコレートソースに浸けて食べた岡安さん。
「ビックリするほどおいしいですね!」と目を見開きます。
「チョコレートはスッキリした甘さ。シューの柔らかさがちょうどよく、チョコレートに絡みやすい。中のカスタードクリームが少し冷たくて、温かいチョコレートソースにつけると“ぬるあつ”です」
スタッフさんに、「バニラはマダガスカル産ですか!?」と聞くと「はい、そうです」と、なんとバニラビーンズの産地までご名答!
「チョコレートのソースはエクアドル、マダガスカル、ペルーなど4つの産地をブレンドしたカカオ分75%のチョコレートです」とスタッフさんが説明してくれます。
「ビターでキレがありますよね」と、チョコレートのおいしさに感嘆が漏れる岡安さん。
デパ地下の片隅に突然現れる「ル・ショコラ・アラン・デュカス」のイートインコーナーは、カジュアルにして上質なショコラを味わえることが評判。人気アナウンサーの岡安さんもこうした場を普段から利用するのでしょうか?
「はい、よく利用しますよ。もう、ホントどこへでも行きます(笑)」。
仕事柄、おやつはネタ集めを兼ねることが多い岡安さん。
「大阪は街がコンパクトにまとまっているから、おいしいものも探しやすいですよね。全国だと北海道と東京、新潟にスイーツ支部があるので、兄弟や親戚なのですが(笑)、そうした支部から情報をもらっています」と情報網が明らかに。
ショップのショーケースもじっくり見て回り「全部、気になりますね」と後ろ髪を引かれながら、次の店へと向かいました。
パリの次はニューヨークへ。「MARIEBELLE THE LOUNGE(マリベル ザ ラウンジ)」は、チョコレートの生産地、ホンジュラス出身の女性オーナー、マリベル・リーバマンさんがニューヨークで立ち上げたチョコレートショップ。ニューヨーク本店以外は京都と大阪にしかお店がなく、関西のお客さまには特に親しみが沸きます。
代名詞といえば、アートを転写したカラフルなガナッシュチョコレート。岡安さんもショーケースをじっくり眺めます。
ゴージャスなソファを置くイートインコーナーで、大阪を代表する名所が描かれたガナッシュチョコレートをいただきます。ミルクチョコレートベースにほうじ茶を練り込んだBroun tea(1粒660円)と、 シャンパンのフレーバーを閉じ込めたChampagne(1粒660円)をセレクト。
さらに注文したホットチョコレートはニューヨークで「マリベル」の名声を高めた、もうひとつの店のアイコン。4種類のフレーバーは、濃厚な味と香りが楽しめるヨーロピアンスタイルや、コクのあるミルクでよりマイルドなアメリカンスタイル、エスプレッソを合わせたモカチーノの3種類の飲み方で楽しめます。
一番スタンダードなアメリカンアズテックを飲んだ岡安さん、「これ、僕の中では世界一おいしいです!」と驚き、今日一番のスペシャルな笑顔を見せます。
「一口目のインパクトが強くて、濃厚だけれどキレがいい。甘味はふくよかで、口に含んだ途端、チョコレートが舌を包みます。これは…今までに飲んだものと比べても群を抜いていますね!パンやスコーンにも合いそう」と、最上級の褒め言葉が次々とこぼれます。
さらにチョコレートの中ではジャンドゥーヤが好きだという岡安さん、ヘーゼルナッツミルクのモカチーノを追加注文しました。
「全然違う!あぁ、いいですね〜。少量サイズを、全種楽しめるメニューが欲しい(笑)。高級なウイスキーを少しずつ嗜むような感覚です」
「だいたい1品食べたらわかる」と、前置きをした上で「絶対、どれもおいしいですよね!」と大興奮。テイクアウトや贈り物に人気という、ホットチョコレートの缶もチェックして店を後にしました。
※2024年6月をもって閉店いたしました。
最後に訪れたのは「Four Green Leaves ITOEN (フォー グリーン リーブス イトウエン)」。お茶メーカーの伊藤園が、“新しい茶のカタチ”を提案する全国初の業態。本館7階フロアの一角にあるオープンエアの空間も入りやすい1軒です。
看板は京都・宇治抹茶の濃度違いが楽しめる5種の抹茶ジェラート。そのほか、季節のジェラートやオリジナルのグラスや器といった雑貨、各種茶葉などの物販が揃います。
冬限定のチョコレートのジェラート(シングル528円)を口にすると、「あぁ〜いいですね!和ですね。これまで海外の主張のあるチョコレートを食べてきたので軽く感じます。これぞ日本人の職人が作る繊細さだ」と岡安さん。イタリア産ジャンドゥーヤを使い、ココアに近いさっぱりした味わいが気に入った様子です。
さらに看板の抹茶ジェラートも。宇治抹茶が一番濃厚な「千歳」に、大丸心斎橋店の屋上で行われている養蜂で採れた「心斎橋のはちみつ」をかける、はちみつとジェラート(780円 ※期間限定 なくなり次第終了)をいただきます。
「これは濃いっ。しっかりとお茶の香りがあって、苦味がアクセントというよりは、苦味がメインでほのかな甘みがアクセントになっていますね。抹茶の風味や香りがよくわかります。屋上で養蜂しているなんてすごいですよね」
そして抹茶ジェラートが盛られた「スガハラガラス」のグラスや光沢のある盆、カトラリーなど器類を少し遠目から眺め、近づいてじっくりと見る岡安さん。
「これですよ。盆やグラス、その色合いと中央に置かれたスイーツ、総合して楽しむことを教えてくれるのが、和の世界なんですよね」と、スイーツやコーディネートの背景に思いを馳せます。
岡安さんがスイーツを語ると、味や食感の特徴だけでなく、各スイーツの魅力や成り立ちを知った上でお菓子の背景や店の意図、作り手の狙いまで分析する見方に、アカデミックな香りが感じられます。
「まさにそこを目指しています。お菓子は単に味だけでなく、器や雰囲気、店のしつらえなど、総合して楽しむもの。そしてその背景にある意図も大切。文化に昇華させたいんです」。
オカヤスイーツ博士の博士たる文化活動は、これからもとどまることを知らないようです。
5歳の時にはすでに甘党に。中学、高校、大学と地元の埼玉県から学校のある神奈川県まで通い、定期券を利用して沿線全ての駅で途中下車し、気になるスイーツ店を片っ端から食べてノートにまとめる活動を行う。1997年、関西テレビ放送入社。そのスイーツ好きが知られ、2005年〜13年まで「オカヤスイーツ博士」として番組を担当。現在は「KEIBA BEAT」「よ〜い ドン!」などに出演。趣味は筋トレ。最近、マイブームのお菓子はエンガディナー。
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/コーダマサヒロ 取材・文/佐藤良子 編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVESProfessional's Eyes Vol.37
Professional's Eyes Vol.36