Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES大阪を拠点に長年ラジオDJとして活躍し、自らが関心を持つSDGsにまつわる連載番組も続けている土井コマキさん。今回はラジオブースを飛び出して、大丸心斎橋店で展開されるSDGsアイテムに出会うべく、館内を巡ります。
土井さんが自身の暮らしに連関する“環境”に心を寄せたのは10年以上も前のこと。きっかけは、環境への負荷を最小限に抑えた方法でお米を栽培する農家との出会いだったといいます。
「オーガニックで作られたものの魅力とともに、その外側に広がる環境にも大きな影響を及ぼすということを知って。今ではSDGsという言葉で説明されていますが、まさにすべてはつながっている。その本質に気付いて、関心がどんどん広がっていったんです」
持続可能でよりよい世界を目指すSDGsの取り組みは、日々の関心事。そんな土井さんが最初に訪れた「フレーバーライフ」は、自然体をテーマにしたナチュラルアロマブランド「‘ala Lehua(アラレフア)」によるコンセプトショップ。天然由来成分にこだわったエッセンシャルオイルやボディケアアイテムなどがそろうライフスタイルショップです。
土井さんのお目当てはディフューザー。それもマヨネーズ工場などから出た卵殻をリユースすることで生まれたエッグアロマストーンです。
卵の殻は年間約20万トンもの廃棄量があり、うち8割程は処分費用をかけて焼却、埋め立てするといわれています。1個につき約7,000〜17,000個の気孔を持つ卵殻は、精油を吸収し香りを放つディフューザーの素材にはぴったり。その特徴に着目して作られたのがエッグアロマストーンで、特筆すべきは手のひらに収まる小さなサイズ感と、携帯に便利なケースに入った実用性。
「アロマストーンといえば重たいイメージがありますけど、これは軽い! 出張を含め旅に出ることが多くて、ホテルでアロマオイルを使おうと持っていくんですけど、使い方が大問題。コーヒーカップにお湯を注いで精油を垂らしたりして(苦笑)。でも、このアロマストーンなら気軽に持っていけますね」と、土井さんは早くもお気に入りを発見したようです。
「環境のことを考えながらモノを選ぶ。それは気持ちのいいことだと思うんです。でも、選択の入り口は、『おいしい』とか『楽しい』とか『かっこいい』じゃないと嫌やなぁとも」。
今では世界共通の正論ともいえるSDGsを心得たうえで、自身の素直な気持ちも大切にものごとを選択している土井さん。
次に訪れた「MoMA Design Store(モマ デザインストア)」で、「これ、素敵ですよね!」と手に取ったのは目にも鮮やかなHOZUBAG。
回収したユーズドのパラグライダーを解体、リユースすることで作られたHOZUBAGは、2020年に誕生したサステナブルなエコバッグ。2030年までに“使い捨てプラスチックごみゼロのまち”を目指す京都府亀岡市が、アパレルブランド「シアタープロダクツ」とタッグを組んで生まれたデザインも秀逸なSDGsアイテムです。
「めっちゃかわいい。しかも軽い! パラグライダーの生地ってこんなに薄いんですね。でも丈夫で破れないんですよね!? サコッシュにもちゃんとポケットがあって、すごくいいじゃないですか!」。
興奮気味の土井さんは、「買う気満々(笑)」とXL、L、M、サコッシュと全4型あるバッグを試し持ち。「亀岡市、すごい!」と感嘆しながら、1点ずつ異なるデザインに目移りします。
お気に入りの1点を選ぶには時間が足りず、「絶対にまた来ます!」と再訪を誓い、次なるお店へ。
※2024年7月をもって閉店いたしました。
ラジオDJとして活躍しながらも、家へ帰れば大切な家族がいる土井さんにとって、台所は暮らしに欠かせない心臓部。
「思えば台所って家でいちばんゴミが出る場所かもしれない。特にラップの使う量を減らしたいとずっと考えていて」。
毎日、多かれ少なかれ時間を費やす場所だからこそ、使い方次第で環境に及ぼす負荷も減らすことができるはず。そう考える土井さんが続いて訪れた「中川政七商店」は、日本の工芸に光を当てながらも、現代の暮らしに溶け合う衣食住のプロダクトをそろえるショップ。
「使い勝手と佇まい、その両方を食卓で実現したいと生まれた商品です」と店長の大槻紘子さんがまず紹介してくれたのは、波佐見焼の保存の器。
蓋と器を重ねて焼く、共焼きと呼ばれる手法で焼成された密封性抜群の逸品で、食器としてはもちろん、タッパーとして冷蔵庫にストックし、そのまま電子レンジにかけることができるという優れもの。ラップの使用を削減できるうえ、タッパーと器を兼任するため移し替えの必要もありません。
「洗い物が減るのもすごく良いですね。そのひと手間が面倒で、タッパーからそのままおかずを食べて、残念な気持ちになることが時折あるんですけど(苦笑)。これならそんな心配もない。見た目もおしゃれで、どんなお家にもきっとなじみますね」と土井さん。
「使い捨てではなく、愛着を感じながら長く使えるっていうのもいいですよね」と、周囲に並べられた器も次々と手に取り、絶妙な仕立てがなされた現代の工芸に唸りました。
「昨年(2021年11月)、万博記念公園で開催された『日本工芸産地博覧会』で司会のお仕事をさせていただいて。その時、出展されていた能作さんでペーパーウェイトを作るワークショップに参加したんです。最近ではSDGsの一環として錫(すず)製品のリサイクルプロジェクトをされていると聞いて、さらに興味が湧いて」
「能作」は富山県高岡市で1916年に創業した鋳物メーカー。錫100%の素材だからこそ生まれる柔軟性を活かした器やフラワーベースなど、長年培ってきた職人の技術を用いながらも伝統工芸の枠に捉われないユニークな製品を生み出しています。
土井さんが興味を示したリサイクルプロジェクトは、家庭で役目を終えた能作の錫製品を回収し、原材料の一部に使用してスプラウトプランターにリプロダクトするというもの。
長らく使うことなく、家で眠っている製品はどうしたらいいのか? そうしたお客様の声とSDGsに向き合う老舗の新たな試みとして、2021 年夏に開始。とはいえ能作の製品は、実はそれそのものがサステナブル。
「錫製品は割れない。それに錆びにくく、朽ちにくいという特性もあるので、本来はずっと使っていただけるものなんです」と、スタッフの福田みゆきさん。
一見、網の目状の平面オブジェだが、力を加えることで立体的な盛りかごになるKAGOシリーズをぐにゃりと曲げながら、「そうか!変形するけど割れにくいんだ!」と驚いた土井さん。
「錆びにくく、長く使える。そもそもリサイクルしなくても良いものだけど、使い手にとってはデザインの好みが変わることはありますよね。特に手仕事で作られた工芸品は捨てるのがはばかられるから、新しいものに生まれ変われるのはとてもいいことですよね」。
「楽しい!」という気持ちを大切に、「できる範囲で」SDGsを実践している土井さん。続いて訪れた「てふ」は、真珠貝や装飾貝、水牛角などの希少素材を使ったテーブルウェアやアクセサリーを手掛けるブランド。土井さんが一目見たいと願ったのは、貝ボタンの端材で作られたタボシリーズと呼ばれるアクセサリーでした。
ボタンをくり抜いた後の不均等なデザインをあえて生かし、ピアスやイヤリング、ネックレスに。
「ボタン製造の場合、貝を余すことなく使うのは難しい。廃棄する部分がどうしても出てきてしまうのですが、できるだけ捨てずにきれいなアクセサリーに仕立てて、みなさんに使っていただこうと」。スタッフの田中マリサさんがタボシリーズ誕生のきっかけを教えてくれました。
「実はこのピアスも端材から作られているんです」と土井さんが手を添えた耳元には、福井県鯖江市で作られているという眼鏡の端材を使った可憐なピアスが揺れています。
素材となる貝は、個体によって、また切り取る部位によって色合いや表情が異なります。着色は一切せず、コーティング剤も不使用。職人が丹念に磨き上げることで天然の光沢を引き出すという製法を耳にして、土井さんは「いい!」と力強い太鼓判をひと押し。
「貝の加工品といえば、高級でシックなデザインが多いイメージでした。でも『てふ』さんのアイテムはポップで価格も手頃。それでいてホンモノの佇まいも感じられるのが素敵ですよね」
アクセサリーの他にも、箸置きやカトラリー、和装小物など約400アイテムがそろう店内に「目が泳ぐ…!」と湧きあがる好奇心を抑え、後ろ髪を引かれながらも店を後にしました。
「もともと、肌が弱いんですよね…。身につけるものによっては痒くなることがあるし、直接肌に触れる下着なら縫い目がないものの方がうれしい。でも、徹底的にこだわるのはなかなか難しくて」。
敏感肌という土井さんの救世主になるか!? わずか5秒でバストサイズや体型までも計測するボディスキャナー、「3Dスマートアンドトライ」が設置されていることも見逃せない、こちらの「ワコール ザ ストア」。ただし今回のお目当ては、ワコールが長らく取り扱うスイス発祥のブランド「HANRO(ハンロ)」のアンダーウェアです。
“肌を甘やかしてしまいそうな品質と着心地の良さ”とも形容される「ハンロ」のアンダーウェアは、天然素材に特化した製品が主軸。今年138年目を迎える老舗ブランドで、各国の王室やセレブリティも多数愛用しているといいます。
なかでも日本で最も人気の定番は「コットンシームレス」シリーズ。キャミソールやノースリーブなど全4パターンあり、すべてサイドや裾の縫い目は一切なし。素材はコットン100%ながら、シルケット加工を採用することでシルクのような心地よい肌触りも魅力です。
生地にそっと触れた土井さんは、想像を上回る感触に驚いたように、小声で「気持ちいいですねぇ」とひと言。
欧米ではおばあちゃんが孫に託すほど、長く使える下着と言われ、「捨てる頃合いがわからないとおっしゃる方もおられます」というスタッフの言葉に、「すごい!」と土井さんは驚嘆。
「一般的な下着に比べれば高価なものかもしれないけれど、長く使えることを思えば結果的に高い買い物ではないですよね。ゴミになりにくいから環境にやさしく、使う自分も気分がいい。機嫌よく過ごせるなら、下着にお金をかけるのも賢明な一手ですよね」。
※2022年7月をもって閉店いたしました。
コスメの世界でもSDGsへの対応は続々と。「多くの日焼け止めに使われている紫外線吸収剤が、サンゴ礁の白化や海洋汚染に悪影響を及ぼすと言われていて。ハワイなどではすでに使用が禁止されているんですよね」。
コスメにおけるSDGs事情も知りたい土井さんが、気になっていたという「ETVOS(エトヴォス)」のミネラルUVシリーズ。紫外線吸収剤は不使用、ミネラル由来成分を使用したノンケミカル(紫外線吸収剤不使用)処方のパウダーやベース、ボディパウダーがそろいます。
敏感肌の土井さんが長らく愛用するのはオーガニックコスメで、「エトヴォス」は未体験。環境に配慮した製品でありながら、紫外線により起こる炎症の防止効果を表すSPFは最高値の50+をマーク。
「50+って…すごい! 紫外線吸収剤って、もはやいらんかったんちゃうん!?とさえ思いますよね」と土井さんは驚きます。
「実はエトヴォスを立ち上げた代表も元々、肌が弱くて。皮膚科に通ったり、ミネラル化粧品のファンデーションを海外から取り寄せて使ってみたり、いろいろと試したものの、海外製品は肌に合わないことも多かったようで。それなら自身に合うものを作って、同じ境遇の人に届けよう!という気持ちからブランドが始まりました」と、店長の中島伶奈さん。
2007年に「エトヴォス」を創業した代表の尾川ひふみさんは、土井さんと同世代。さらに、「エトヴォスは大阪の会社なんです」という中島さんに、「そうなんですか!?」と再び驚いた土井さん。「最初は十三の小さな会社から始まりました」との追加情報には、「十三の香りがまったくしない!(笑)」と痛快なツッコミも。
大阪を代表するFM放送局で、SDGsに取り組む人々の活動をシェアする土井さんにとって、「エトヴォス」との出会いが未来につながる大きなきっかけとなりますように。
FM802「SONIC STYLE」のアシスタントDJとしてキャリアを本格スタート。ラジオDJの活動にとどまらず、VJ、MC、執筆、イベント企画なども手掛ける。2004年4月放送「ビンタンガーデン『10年目の復活・春一番』」で、 日本民間放送連盟賞 近畿地区 エンターテインメント番組部門 優秀賞を受賞。現在はFM802「MIDNIGHT GARAGE」(毎週月曜日24:00〜27:00)、「EVENING TAP」(毎週水・木曜日18:00〜21:00)をレギュラーで担当。「EVENING TAP」内の「コマキ手帖」では、「身近なことから未来のために土台(生活を)耕していこう。」 をコンセプトに、未来への取り組みをリスナーとシェアするコーナーを続けている。https://www.instagram.com/doikomaki/
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/竹田俊吾 取材・文/村田恵里佳 編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVESProfessional's Eyes Vol.40
Professional's Eyes Vol.39