Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES近年、お笑いの賞レースでは欠かせない存在となり、若手芸人のなかでもひときわ予測不能な未来を感じさせてくれる名コンビ、コウテイ。共通するお笑いをのぞけば、ファッションへの関心も、ものごとの考え方も痛快なくらい好対照なお二人に、今回は「おしゃれ」をテーマに大丸心斎橋店を巡っていただきました。
肩を並べるとよくわかる、身長の“高低”差も印象的なコウテイのお二人。長身の九条ジョーさんは、よしもと漫才劇場が毎年発表するオシャレ芸人ランキングで1位に輝いた功績をお持ちのファッショニスタ。翻って相方の下田真生(しもたまさき)さんは、ダサい芸人6位入賞のキャリアを持ち、ファッションには「一切興味を持ったことがない」。その好対照ぶりさえ笑いに変えるお二人と共に、まずは国内初の旗艦店として2022年3月にお目見えしたばかりの[eleventy(イレブンティ)]を訪れました。
「イレブンティ」の人気に火をつけたポロシャツは、襟裏にブランドアイコンであるバタフライのあしらいが。イタリアでは蝶は幸福や変化の象徴。襟を立てた時だけ見える、さりげないデザインがとても粋。
「アキさん!?」と下田さんが思わず脱帽したお相手は、水玉れっぷう隊(吉本興業所属芸人)のアキさんにそっくりなスタッフ秦野圭介さん。隣にいた九条さんは「確かに似てるけど!」笑いながらのツッコミも。
「マルコ・バルダッサーリ、パオロ・ズンティーニ、アンドレア・スクーデリの3人が立ち上げたグローバルブランドで、すべてMADE IN ITALY。イタリアにこだわりながら、“服好きが作る服好きのための服”を手掛けるのが彼らのポリシーです」。
ブランド担当の藤井雅貴さんの案内を受け、「イタリア生まれだけど、日本人の体型にも合うんですか?」と疑問を持ったのは九条さん。「もちろんです」という藤井さんに、「では、ぜひ彼に。日本人体型なので」と九条さんは相方に合う一着をお願いしました。
すぐさま繰り出された一着は、スウェットパーカーとデニムジャケットを掛け合わせ、重ね着をしているようなスタイルが楽しい2022年春夏の新作。「イレブンティ」らしい遊び心を感じるアイテムを試着した下田さんは、「めっちゃええやん!」と興奮気味。「何がいいんかな? (理由は)わからへんけど好き。しっくりきてる。ワシらしい気がするもん」と、スタートから大いにお気に召したようです。
一方の九条さんも、新作のジャケットを試着。一見、クラシカルなブレザータイプのジャケットですが、素材は軽やかなニット。ブランド定番のカットオフ仕上げで、上品かつカジュアルな印象も魅力的です。鏡に映る姿を見た九条さんは、「着心地は優しいのに締まって見える。初めての感覚」と静かに感嘆。さらに白のキルティングベストも重ねると、モデルさながら自然な着こなしに。
「イタリアのファッションはパリッとしたイメージがありますけど、意外とカジュアルな仕立ても素敵ですね」。
そう話す九条さんに、「イタリア人はくずし上手なんですよね」と藤井さん。新たなファッションエッセンスを吸収する九条さんの隣で、下田さんも想定外のお気に入りを見つけて洋服に開眼!?
「めっちゃ欲しい。でも、ワシがこれを着たらダサいランキングに入らないですよ!」と、さすが!自らのおいしいネタを決して手放しません。
「普段、デニムを履かれますか?」とお二人に訊ねると、「僕は(パンツを)2着持っていて、育てています」という九条さんに対して、下田さんは「デニムという言葉しか知らない。人生で一度も触れてこなかった。すみません…」と恐縮。
続いて訪れた「DENHAM(デンハム)」は、国際的に名高いイギリス人デニム職人、ジェイソン・デンハムが2008年に設立した気鋭のブランド。オランダのアムステルダムにオフィスを構え、大胆不敵な実験や開発を取り入れたデニムアイテムを数多く発表しています。
「イレブンティ」同様、ヨーロッパ発のブランドと知った下田さんは、「短足でも合うものはあるんですか?」と素直な質問をスタッフの高橋修平さんに投げかけます。対して高橋さんは、「デンハムのアイテムは体型に左右されないものが多いんです。オランダは体格の良い方が多い国ということもありますが、スポーツ選手などガッチリした体型の方にも数多くお召しいただいています」とのこと。
半信半疑の下田さんに初デニムを試着いただくべく、高橋さんがおすすめしてくれたのは「デンハム」のアイコンとも言われ人気を誇るモデル、クロスバック。バックウエストにあしらわれたクロスのベルトディテールが特徴的で、ウエストや太ももまわりはゆったり、膝下から裾にかけては緩やかに細くなるテーパードスタイルにより、スッキリとした印象が期待できる1本です。
試着室から登場した下田さんは、「デニムってこんなに硬いんですね。画用紙を履いてるような」と表現が絶妙。「履き続けるうちに柔らかくなっていく工程も楽しみの一つなんです」と高橋さんが話すと、「それが“育てる”ということ」と九条さん。
「特にこういう生デニムに関しては…」と高橋さんが続けると、「生デニム!? 焼いたデニムもあるってこと? どういうことですか??」と下田さんが初心者らしい新鮮な質問で応酬。横に付き添う九条さんが、母親のように「すいませ〜ん。うちの子が」とフォローする一幕に、コンビならではの空気と笑いが立ち上がりました。
お客様にデニムを育てながら愛用してもらうために、こちらの「デンハム」大丸心斎橋店では“手洗いサービス”なるものを実施。専用の洗い場が店内に設けられ、お客様からお預かりした1本をスタッフ自ら手洗いしてくれます。持ち込みは「デンハム」のアイテムに限られますが、繰り返し利用できる無料のサービスと聞き、九条さんは驚愕。
「こりゃすごいわ。こんなサービス聞いたことない」。実際に手洗いする様子を見学した下田さんも、「めっちゃ丁寧にやってくれんねや。こりゃ今日だけのパフォーマンスじゃなさそうですぜ」と舌を巻きました。
おしゃれツアーの合間に小休止。日常的にハンバーガーショップを利用するというコウテイのお二人ですが、「Shake Shack(シェイクシャック)」は初めて。
2001年、NYのアートイベントに出店した1台のホットドッグカートから始まった「シェイクシャック」が日本に上陸したのは2015年。ハイクオリティなフードやドリンクにこだわるハンバーガーレストランで、関西では現状3店舗のみ。その貴重な一軒が大丸心斎橋店本館にあります。
「僕は一日一食しか食べなくて」と、驚きの食習慣を話してくれたのは九条さん。「食べると頭が働かなくて。すべての作業が終わった一日の終わりに、その時の自分が求めているものをドン!と食べます。夜10時に食べることもあれば、明け方に食べる時も。めっちゃ甘いものを食べたかったらホールのケーキを買って。良くない食生活かもしれないです。でも一食だけは許してやるぞ、という感じで」。
相方の下田さんは、「腹が減った時に食べる」派。劇場での出番やテレビ収録などがある昼間は決まって外食で、丼ものやハンバーガーが定番だそう。「メニューがほぼ英語表記でわからん(苦笑)」と戸惑いながら、モダンなバーガースタンドを初体験しました。
九条さんが注文したのは、「シェイクシャック」の看板ともいえるシャックバーガー。ホルモン剤を使わず育てられたアンガスビーフ100%のパティは、店内で調理されているため安心・安全なだけでなく新鮮な肉感も魅力。そのジューシーな旨味は、ポテトを練り込んだほんのり甘いバンズとも相性抜群です。「甘いものが好きなんです」と、この日はバニラシェイクも一緒に味わい、「めっちゃおいしい。普段食べているバーガーと全然違うわ」と、ひと言。
下田さんが頬張ったスモークシャックは、チーズバーガーをベースにアップルウッドでスモークしたベーコンを加えた一品。チェリーペッパーとオリジナルのシャックソースがトッピングされたピリ辛な仕上げも人気があります。
大阪ミナミに暮らしながら活躍するお二人に大丸心斎橋店との縁を伺うと、「キングオブコントの1回戦などで、大丸心斎橋劇場(現、心斎橋PARCO「SPACE14」)に出させていただいたことはありました」と下田さん。「僕は『CAMPER(カンペール)』のビートルという黒い靴がどうしても欲しくて、探したら大丸心斎橋店にしかなかったので買いに来ました」と九条さん。
現在はショッピングをゆったり楽しむ時間さえ取りづらい売れっ子のお二人ですが、おなじ街で暮らし活躍されている様子を知ると、たちまち親近感が湧きあがります。
※2023年7月をもって閉店いたしました。
「基本的に舞台靴で日常を過ごしているので、自前の靴は休日しか履けなくて」。
そう話す九条さんと相方の下田さんが舞台で愛用しているのは定番のローファー。革靴にはなじみのあるお二人ですが、イタリア生まれの高級紳士靴がそろう「Santoni(サントーニ)」に到着すると、異彩と気品を放つアイテムの数々にたちまち圧倒されたご様子。
「なかなか手に取れない」と緊張気味のお二人に、店長の山尾守弘さんがブランドの創業や背景について話してくれました。「〈サントーニ〉は1975年創業と比較的若いブランドですが、職人の手仕事により小さな靴の中にイタリア人の美意識を詰め込んでいます。
「例えばこの靴は…」とダブルバックルの一足を手に、独自のハンドカラーペインティングについて案内。
「ペインティングを手がける職人は美術系の学校からヘッドハンティングしていまして、作り手によって色の出方が異なります」と山尾店長。
養成学校もブランド自ら設立・運営し、“サントーニの美意識”を携えた職人をゼロから育成しているという話を聞き、「それはすごい…」と九条さん。さらに1人の職人が約100時間を費やし仕上げる、まるでアートピースのような一足の価格を目にして、「チワワが3匹買えます」と小声で驚きます。
「さすがに手を出せないですよ」と後ずさりするお二人ですが、「お好きなものをぜひお試しください」と山尾店長。九条さんは「今日の格好に合うものを」と、ブランドアイコンのダブルバックルがあしらわれたスリッポンを試着。
クラシックかつラグジュアリーな佇まいながら、スリッポンらしいラフな印象を兼ね備えた一足に、「締まってるけど、締まりすぎてない。絶妙なバランスですね。……買いたい!」と、価格の確認を怠りません。
一方、下田さんが選んだのはスニーカー。ストレッチニットを使ったフィット感抜群の一足で、身につけた瞬間、「あっら〜。履き心地が素晴らしい」と感激。
「でも上の服がダメなんで、高級感が台無し」と相方につっこまれながらも、初体験のファッションアイテムを楽しんでくださいました。
最後は、関西初の直営店として2022年2月に開店した「A. GLOBAL(エーグローバル)」へ。2008年に岐阜県羽島市で誕生し、美顔器や化粧品の企画開発から製造までを一貫して手掛ける美容メーカーです。
日頃の肌のお手入れは、「一切していない。洗顔も水をバッシャーとするだけ」という下田さんと、「(ケアは)化粧水くらい」という九条さんが人生初の美顔器を体験。100台限定、マットブラックのデザインもクールな男性用美顔器のEXZ HOMMEを使って、効果がわかりやすいようにと半顔施術をおこなうことになりました。
「基本的に乾燥肌なんですが、最近は花粉の影響で目頭と鼻まわりが荒れていて」。春先らしいお悩みを打ち明けたのは下田さん。お顔の左半分に専用のマッサージジェルを施し、まずはEXZ HOMMEのEMS機能を体験。マイクロウェーブが表情筋に働きかけることで、いわば“お肌の筋トレ”がおこなわれ、お顔の引き締めが期待できます。
最弱のレベル1で施術を始めると、「スゴッ! 3000本くらいある指で高速に触られた感じですよ!!」と、あまりに豊かな想像力で驚きを伝えてくれた下田さん。
美顔器が顔面から首筋に向かうと、「うぅっ! 電気風呂みたい」と悶え、顔を歪めたかと思うと、「むっちゃ“何かされてる”感!」と未体験の感覚を楽しむ様子も。
施術後、鏡で顔の左右を見比べると…。「左がスッキリ、きれいになってる!? やだ〜、可愛くなっちゃったんですけど」と、心の奥底に眠っていた乙女な部分が見事に開花。
相方の九条さんは芸人の活動に止まらず、近年は俳優としてのお仕事も。「メイクさんがいるのでファンデーションを塗って誤魔化すことはできるんですけど、やっぱり素肌はキレイにしておきたい」と、下田さんと同じくEXZ HOMMEを体験。
「僕、劇場の罰ゲームでよく登場するビリビリペンが怖い。電気風呂も苦手なんです。だから、どうか優しくしてください」と怯えながらも施術を受けるうち、「やっだ〜。すごい。日常で味わったことのない箇所が揺らされている感じ。気持ちいいです」と、うっとり。
「男性が美容にハマる理由がわかる」と、最後に意外な感想をもらしたのは下田さん。「ワシ、今すごいキレイになりたいもん。おもしろさなんてどうでもいいかもしれない。やだ、パック買って帰りたいんですけど〜」と周囲を笑わせることを忘れませんでした。
2012年NSC大阪校に入学した下田真生さんと九条ジョーさんが2013年に結成。吉本興業所属。2020年ABCお笑いグランプリ優勝を皮切りに、キングオブコント2021準々決勝進出、2021年上方漫才協会大賞 大賞ノミネート、2021年ytv漫才新人賞決定戦準優勝など、数々の賞レースで快進撃を続ける。
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/西島渚 取材・文/村田恵里佳 編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
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