Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES2023年1月18日(水)→1月23日(月)に、心斎橋PARCO14階の「SPACE 14」と「PARCO GALLERY」および大丸心斎橋店本館8階「アールグロリュー ギャラリー オブ オーサカ」、1階の御堂筋側イベントスペースで大規模アートイベント「ART SHINSAIBASHI」が開催されます。出展者の一人、アーティストのHimeさんに、大阪・西天満のギャラリー「YOD Editions」でお話をうかがいました。
Himeさんは大阪出身。京都精華大学在学中からカメラを始め、ファッション界を中心に写真の仕事をするようになります。
「大学に行っているときにカメラを買って、最初はクラブなどで遊びながら写真を撮っていて、その後アパレル会社で働くようになって、そこで本格的に撮影の仕事をし始めました。トータルで13年か14年は写真の仕事をしていましたね」。
その後Himeさんは、2019年からデジタルイラストレーターとして活動を始めます。写真から絵へ。その方向転換はどのようなきっかけ、想いからなされたのでしょうか?
「実は、ずっとマンガ家志望で、幼稚園の年長ぐらいのときには、もうマンガ家になると言ってたらしいです。小学校の卒業文集にも“マンガ家になる”と書いていましたし。マンガ家になるから勉強しなくていいと言って(笑)、絵ばかり描いていましたね。大学受験も筆記試験は受けずに絵の実技で通りました」とHimeさん。
Himeさんが入学した京都精華大学は日本で最初、そして唯一のマンガ学部を設置している大学。ここ数年でいきなり絵を描きだしたのではなく、幼少の頃から大学までずっと絵を描き続けてきたHimeさん。写真の仕事をしている中で、その絵心がムクムクと起き上がってきたきっかけはあったんでしょうか?
「6年前に結婚式を挙げまして。その時にウエルカムボードのイラストを12枚描いて、それをカレンダーにして両親に渡したのですが、それがすごく楽しかった。その余韻もあったのか、1年か2年後に、絵を描きたい!と思い始めたんですよ」。
まずはインスタグラムでデジタルのイラストを描き始めたHimeさんは、フォロワーが1年で1,000人に増えないようであれば、潔く絵をやめようと思っていたそう。それは杞憂に終わり順調にフォロワーを伸ばして30,000人ぐらいになり、「これからどうしよう?」と考えている時に画廊から声がかかります。2020年末にキャンバスにアクリル絵の具で描き始め、Art Fair Kyotoで作品を発表。本格的なアーティスト活動をスタートさせます。
「キャンバスには筆で描いているのですが、実はマンガ家を目指していた頃から筆はちょっと苦手で(苦笑)。描き始めた頃は、少しムラもありましたね。作品の骨子となる黒い部分は、日本では東京の「PIGMENT TOKYO」でしか扱っていない「SK Meteor(エスケー メテオ)」という筆で描いています」。
「SK Meteor」は、アメリカの現代アーティスト・KAWSが使うものと同じ筆だそう。その筆で描くシャドウなどしっかりとした黒い線は、Himeさんの作品でとても印象に残ります。
「写真を撮っている頃から、テリー・リチャードソンというカメラマンの撮り方が好きで、ライト1灯だけを当てて人物をよく撮っていました。そうするとアゴの下に影が入るのですが、絵もその描き方でやってますね。切り取り方とか構図とかは、写真をやっていたことで、絵にもいい影響があると思います」
人物の背景を塗る筆や刷毛は「安いの買ってます」と笑うHimeさんですが、今では筆使いも上達し、背景に使われるカラフルな色もムラなくきれいに塗られています。色使いがとても美しいのですが、配色などはどうして発想されているのでしょうか。
「デジタルで描いていた頃は、1枚の絵ですごく色を使っていたんですけど、今は多くて3色ですね。デジタルでまず一度色を置いてみてイメージをつかみ、実際には、アトリエで絵の具を混ぜながら、イメージに近い色をつくっていきます」。
絶妙な色使いで描かれる作品のほとんどは、ファッショナブルでポップな女の子の姿が描かれています。
「男性を描くのは、あまりテンションが上がらないんですよね(笑)。男性だとまつげや下まつげをそれほど描き込まないのですが、僕の描き方だと絵がちょっと弱くなるんですよね」。
テンション上げて(?)描く女の子の作品は、それぞれ彼女たちのイメージにあった名前をタイトルとしています。
「大きいサイズの作品には文章のタイトルをつけていますが、20号の作品は全部女の子の名前がタイトルになっています。前はAからZまで順番につけていたのですが、2周した後はランダムにつけています。XとかZとかQで始まる名前がなさすぎて(笑)。名前は、インスピレーションですね。この子はこういう名前っぽいなあという。もう100人近く名前をつけてきたので、ファンの方から『○○○ちゃんの絵買いました』とか言われても、どの子だっけ?って覚えていないこともあります(苦笑)」。
Himeさんはお隣の堀江で5年間働いていたこともあって、心斎橋にはなじみがあるそう。今回の「ART SHINSAIBASHI」では、Himeさんの作品はキャンバスに描いたものが1点出展される予定ですが、取材当日はどの作品になるかまだ決まっていませんでした。
「心斎橋で開催されるアートフェアですので、心斎橋のイメージに合った子がいいですよね。今日このギャラリーに展示されている作品の中でいうと…うーん難しいですね。『Jenny』と『Yoana』は今日の僕の格好(フーディーの上にジャケットをオン)と同じで、ストリート感があって心斎橋っぽいかもしれないですね」。
さて、1月18日からの「ART SHINSAIBASHI」では、どの作品が展示されることになるのか? 会場に足を運んで、確かめてください。
1986年大阪府生まれ。2004年に京都精華大学マンガ学部マンガ学科ストーリーマンガコースに入学。在学中より写真を始め、ファッション業界で働きながらカメラマン活動を始める。2013年に渡米後、海外ブランドの撮影も行い、帰国後は東京でさまざまなファッションブランドの撮影を担当。2019年よりデジタルアーティストとしての活動を開始。2020年末にキャンバス作品の制作をし、Art Fair Kyotoにて発表。以後、国内外のアートフェアに多数出展している注目の新進アーティスト。
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/竹田俊吾 取材・文/蔵均 編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
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