Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES関西人には親しみのある“関西エンタメ界のタレ目王子”。あるいは“くっすん”の愛称で知られるタレントで俳優、ラジオDJのU.K.こと楠雄二朗さん。大丸心斎橋店は幼少期から通っている特別な場所だというU.K.さんが、今回は思い入れのある店々を巡りながら、新たな発見にも乗り出します。
「僕、地元は大阪市西区の九条なんです。小学校の時は学校へ行きたくないことがたびたびあって、『おなかが痛い』とか嘘ついて。そうしたら母が『大丸行こか』言うて、大丸心斎橋店へ連れて来てくれてたんです。上階に大きい食堂があった頃で、お子様ランチか何かを食べて、ウィンドウショッピングをして帰る。そういうことが週に1度あって」
幼少期にとどまらず、大人になった現在も毎週のように大丸心斎橋店へ立ち寄っているというU.K.さん。甘いものが好きで、地下1階のスイーツコーナーは全軒網羅するほどのツワモノ。なかでも愛用の一軒が「WITTAMER(ヴィタメール)」なのだといいます。
「フロアを巡っていると、『ヴィタメール』のケーキは一際目立つ。見た目が美しくて、洋菓子ならではの力強い色味が煌びやかで。まるで一つのアートみたい。見惚れて価格に目をやるんですけど、“おみや”にするにはいささか勇気がいる(苦笑)」。
ベルギーの首都・ブリュッセルで1910年に創業した「ヴィタメール」は、本国では王室御用達の老舗パティスリー。選び抜かれた最高の素材で、徹底した手作りにこだわるゆえ、日常のおやつというより特別な日のためのスイーツ。ショーケースには1個700円前後のケーキが並んでいますが、U.K.さんがある時出会い、大興奮したスイーツがシュートリュフ。
「シュートリュフは、1個162円。安い、これなら手が届く!と思って。他のケーキだったら、家族4人分、あるいはおじいちゃんおばあちゃんの分も合わせて買うと結構な金額になる。でもシュートリュフやと、めちゃめちゃ買えるんですよ。基本的に僕はまとめ買い。3,000円分くらい買って帰って、家族に『ヴィタメールやで』って言ったら喜んでくれる。また、食べたら驚くおいしさで!」
大丸心斎橋店の「ヴィタメール」では、シュートリュフがショーケースに並ぶのは毎日正午以降。そして夕方には売り切れてしまうことも少なくない人気商品で、「最近はこれ一筋と言っても過言ではない」とU.K.さんも偏愛を隠しきれない一品になっているようです。ピンポン玉より少し大きなプチシューで、ミルクチョコレートでコーティングされたシュー生地の中にはたっぷりのチョコレートクリームが詰まっています。
「コーティングのチョコはカリッと心地良い食感。対して、中のクリームは非常になめらか、且つ、濃厚なんです。『ヴィタメール』のチョコは苦みが少なく、口ざわりが良く、非常に食べやすいんですよね」
販売スタッフさえ驚くほど、熱量高く“オレの推し”を語ってくれるU.K.さん。はじまりから、嘘偽りなきヘビーユーザーっぷりが滲みます。
「ヴィタメール」から徒歩数十秒。続いて訪れた「Ek-Chuah(エクチュア)」は、大阪・空堀に本店を構えるショコラトリー。ヨーロッパで培われたチョコレート文化を日本に伝えながらも、本場そのままを再現するのではなく、日本の気候・風土の中で、日本人が口にして美味しいと思えるチョコレート作りに挑む大阪生まれの名店です。
「大阪市内で家族とごはんを食べた後は、空堀の『エクチュア』に寄ってパフェを食べる。日本家屋を利用した本店は雰囲気があって、番組のロケでもよく使わせていただきました。大丸心斎橋店にも売場があることを知ってからは、妻に頼まれた御進物を買いに来る機会が増えました」
再び、愛用の一軒を前にしたU.K.さん。到着早々、「僕が好きなのはコレなんです」と教えてくれたのはプリンセスオレンジ。オレンジピールをチョコレートでコーティングした定番の一品です。
「御進物と一緒に、自分用にはこのプリンセスオレンジを買って帰る。食べるのは1日1本だけ。高級ですからね(笑)。毎日1本を紅茶と一緒に食べることに決めてるんです」
好きなものを大切に楽しむ様子も素敵なU.K.さん。「あと、『エクチュア』といえばスパイスの…」と、熟知した売り場を軽やかに移動し、辿り着いたショーケースに並んでいるのは香辛料を使用したチョコレート。大阪・堺にある和風香辛料の老舗「やまつ辻田」の鷹の爪、胡麻、山椒、海苔、柚子を使用したプラリネショコラです。
「以前、お店の方に聞いてびっくりしたんですけど、チョコレートは古代マヤ文明では薬だったと。具合が悪い時に食べて、健康になるためのものだったそうです。それまでスイーツ=体に良くないものと思っていたけど、必ずしもそうとは限らないんだと。だから『エクチュア』のチョコレートは、僕にとって特別なもの。甘く、おいしい、大好きなスイーツなんです」
「だからお店のロゴが、マヤ文明に出てくる神様なんですよね?」と問うU.K.さんに、スタッフの木村さんは、「ありがとうございます。その通りです」と感服。「本来でしたら手にナイフとドクロを持っている神様なのですが、こちらはカカオの神をモチーフにしたもので、カカオポットとティーポットを掲げています」と、さらにユニークなエピソードを添えてくれます
「日本の職人が作っているからこその、控えめな色彩感覚も好きなんです。一粒一粒が本当に美しいですよね。それに…」と、U.K.さんのとめどない愛は一軒目に劣らず。
「以前、こちらの『天ぷら圓堂』に妻と来たことがあるんです。ちょうど僕の誕生日で、ランチを一緒に食べようと。天ぷら好きの僕が、一回、高級な天ぷらを味わってみたいとリクエストしたんですね。実際に来て食べた時、天ぷらってこんなに上品なんや!とびっくりして」
店々を巡るたび、愛に溢れたエピソードを聞かせてくれるU.K.さん。続いて訪れた「天ぷら圓堂」は、京都祇園で創業された“京風天ぷら”の老舗。旬の京野菜や山菜、瀬戸内や若狭から直送される魚介など、京都ならではの豊かな食材を使い、職人が揚げたての天ぷらに仕立て、提供してくれます。
5種あるコースのうち、この日、U.K.さんが味わったのは「白川」。先附の汲みあげ湯葉を味わい、ひと呼吸置いたところで天ぷらが繰り出されます。
「こちらが当店名物の“なんば”。とうもろこしの天ぷらです。抹茶のお塩でどうぞ」と料理長の小澤隆志さんが言葉を添えると、U.K.さんは旨みの瞬間を逃すまいと、すぐさま口へ運びます。
かつての記憶がフラッシュバックしたか、「この衣なんですよ。薄くて、カリッとして。とうもろこしの旨みを決して邪魔せず、絶妙。極端に言えば、綿菓子のような。口溶けの良い、繊細な衣なんですよね」と、タレントとして培われた的確な食レポを披露。
定番の活車海老に続いて、ビバリーヒルズスタイルと呼ばれる一品、アーモンドのかき揚げが登場するやいなや、U.K.さんは興味津々の表情に。聞けば、前回は味わうことがなかった一品なのだそう。
「こちらは当店がビバリーヒルズにお店を出した際、現地のお客様向けに開発したメニューで、尚且つ日本の方にも受けが良かったものなんです」と料理長の小澤さん。
生のアーモンドをじっくり揚げたかき揚げは熱々。一粒ずつほぐし、味わったU.K.さんは「最高のおつまみですね」と、親しみのある“タレ目王子”の笑顔を浮かべます。
「アーモンドを揚げることで旨みを何倍にもパワーアップさせて、今までに味わったことのないワイルドな風味を感じさせてくれる。まるで鶏の唐揚げのような肉々しい風味すらあって」と、再び抜群の食レポがナチュラルに!
食モードから一転、続いて訪れたのは「MoMA Design Store(モマ デザインストア)」。ニューヨーク近代美術館(MoMA)のキュレーター自身がセレクトしたグッドデザインなアイテムがそろう、美術館を飛び出したミュージアムショップです。
約10年前、U.K.さんはある音楽番組のロケでニューヨークを訪れ、MoMAも訪問。その素晴らしさに衝撃を受けたそうです。
「現地の方曰く、アメリカの良いところは才能を絶対に認めることなんだと。どんな人種であろうが、どんな経歴であろうが、犯罪者であっても才能は認める。その事実を体現した場所がMoMAなんだよって。つまり、MoMAは本当に良いものを良いと言える場所なんだと。実際に行ってみるとまさにその通り。多種多様な作品が展示されていて、なかには日本のものもあったことがすごくうれしくて」
当時受けた感銘を思い起こしながら話すU.K.さんに、「それなら…」とスタッフの上本麻衣さんが案内してくださったのは草間彌生と奈良美智のアートピースやグッズが並ぶ一角。
「お二人の作品はMoMAに永久収蔵されているんですが、関連商品も国内外を問わず人気なんです。こちらにも海外の方がお土産として買いに来てくださることが多いです」と上本さん。
アートピースが点在する一方で、デザインと機能性を兼備したインテリア&キッチンプロダクト、ファッションアイテムがそろう多彩さも「モマ デザインストア」の魅力。「すべてがいいわ〜」と目移りするU.K.さんが、「おっ!」と手に取ったのはギター。すかさず「僕、実はエアギターの全国大会2位なんです(笑)」と、意外な特技を申告してくれました。
高校時代にイギリスへ留学し、ロックが大好きになったというU.Kさん。ならばバンド経験も?と問うと、「ギターは嗜む程度で、僕はずっとドラムを叩いてたんです」と再び意外なご回答。
そこへスタッフの上本さんが「最新のおすすめです」と紹介してくれたのが砂時計に似た形が印象的なTam-Tamスツールです。「元々はフランスで釣り用の簡易スツールとして作られたものなんです」。
「コロナ禍は、今までしていなかったことを始める機会になって。その一つが香りを楽しむこと。アロマオイルをディフューザーや加湿器に入れて使うようになりました。これまでは既製品を購入していたんですけど、今日は自分の香りを作ってみたいなと思って」
U.K.さんが最後に訪れたのは、自分だけのオリジナルブレンドを制作できるアロマオイルブレンダーサービスも人気の「@aroma(アットアロマ)」。100%天然素材にこだわる香り専門ブランドであり、香りを体感しながら選べるというブランド直営のコンセプトストアです。
「オリジナルブレンドのオイルは約70種類あります」。
店長の平井実結さんの案内を聞き、「70種類もあんの!? すげ〜」と興奮したU.K.さん。
「どちらかと言うと、柑橘系の香りが好きなんです」と伝えると、「大阪限定のこちらはいかがですか?」と平井さんが教えてくれたのは、シティシリーズの大阪。大阪が持つ親しみやすさをオレンジなどの柑橘で、個性的な一面をブラックペッパーを効かせて表現した、地域性を生かしたブレンドオイルです。そのグラスボウルを嗅いだU.K.さんは「好きかもしれない」と、好みの方向性を見出します。
今回のお目当ては「アロマオイルブレンダーサービス」。12種類以上ある天然エッセンシャルオイルから好きな香りと配合を選び、オリジナルアロマを制作します。特設のディフューザーマシン“アロマオイルブレンダー”があるサービスコーナーへ移動したU.Kさんは、「先ほどの大阪と似た香りにするなら?」と質問します。
「まずはオレンジやベルガモットなどの柑橘ですね。あとはサイプレスやホーウッドなどのウッドを加えて」と平井さん。
U.K.さんはアロマオイルブレンダーから放たれるオレンジ&サイプレス、ベルガモット&ホーウッドなど、柑橘&ウッドのあらゆる可能性を試嗅しながら、早々にグレープフルーツ&ホーウッドの2種を決定。
「ここにローズマリーを入れると?」「カモミールなら?」「ゼラニウムはどう?」「ユーカリは苦手だから入れない」と、自身の好みを的確に反映させながら、開始から約10分後には「これでお願いします」と、お気に入りの4種をブレンドしたマイオイルを完成させてしまいました。
オーダーから完成までの所要時間は約20〜30分。U.Kさんの決断力の高さと的確さは圧巻です。スタッフがその場で調合したオリジナルアロマを受け取り、「理想的な香りができました。これから僕の車はこの香りになります」と最後は達成感を得た表情に。
他の百貨店や商業施設の仕事は多くしたそうですが、幼少の頃から通う大好きな大丸心斎橋店とのコラボレーションは初めてだったというU.K.さん。「これで母も喜んでくれるかな」とうれしそうに語ってくれた笑顔が印象的でした。
10代半ばから5年間に渡り、イギリスへ留学。音楽を愛し、「人に感動を与える表現者になりたい」とDJを志すようになり、2000年にKiss FM KOBEで初のレギュラー番組を担当。以降はテレビとラジオの音楽番組を主軸に活動。持ち前の爽やかな人柄と愛嬌のある笑顔から「関西エンタメ界のタレ目王子」と呼ばれる一方、夕方の情報番組への出演を機に「くっすん」の愛称でも親しまれている。朝ドラや人気ドラマシリーズへの出演で俳優としても活躍。2015年、大阪府守口市のPR大使「もりぐち夢・未来大使」に就任。
※ソーシャルディスタンスに配慮しながら、写真撮影時のみ、マスクをはずして取材を行いました。
写真/岡本佳樹 取材・文/村田恵里佳 編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
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