Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
ARCHIVES大阪にゆかりのある人、大阪で活躍する人にテーマを持って大丸心斎橋店を巡ってもらう「PROFESSIONAL‘S EYES」。今回は、大阪生まれ大阪育ちの書道家でアーティストの青柳美扇さんがゲスト。幼い頃から書道を始め、甲冑でのパフォーマンスやVRの作品など新しい試みでも注目され、6月15日(木)から大丸心斎橋店と心斎橋PARCOで開催される「ART SHINSAIBASHI」にも出展する美扇さんに、書の作品やライフスタイルについて話を聞きました。
最初に訪れたのがプリザーブドフラワーの専門店「Belles Fleurs(ベル・フルール)」。美扇さんはこの日、艶やかな着物姿で大丸心斎橋店を訪れてくれました。
「今日は塩瀬の帯に沖縄の琉球紅型(びんがた)のバッグにしました。もうすぐ夏なので、少し夏っぽさを感じてもらえればいいなと思いまして。お草履もバッグと合わせた琉球紅型なんですよ」と美扇さん。
美しい淡いピンクの着物に似合いそうな花がたくさん並ぶ店頭ですが、プリザーブドフラワーとは、「本物のお花の水分を抜いて脱色をしてから、水分の代わりに保存液を注入して、そのあとに染料で染めて美しい花に仕上げたものです」とスタッフの小山大輝さん。
「お花が大好きなので、友達にもよくプレゼントします。プリザーブドフラワーは枯れないから、ずっと飾ってもらえるのでいいですね。すごくステキ」と美扇さん。
プレゼントだけでなく、日々の生活でも生花を切らさずに飾っているという美扇さん。
「おばあちゃんがいつも花を飾っていたので、母がそのまま受け継ぎ、私も引き継いでます。母も私もお花を見たら元気になるので、母の日だけでなくなんでもない日に母に花を贈ったり、自分のために買ったりもします」
いつも花がある生活をしているという美扇さん。お好みの花などはあるのでしょうか?
「私は結構明るい感じの花が好きですね。イエロー系や白いお花とか。花があると空間が華やかになりますよね」
そんな美扇さんに、小山さんが店で人気の商品を紹介してくれます。
「こちらはイエローの花もご用意している人気の商品、ガラスドームです。プレゼントにとても喜ばれ、これにピックを挿すとちょっと特別感が出たりします」
花にデコレーションするためのピック。彼女への贈りものなら、ハートとイニシャルのピックの組み合わせがおすすめという小山さんに、美扇さんは「めっちゃステキじゃないですか」とうれしそう。
「今人気があるのが苔のシリーズなんです」
そう言って次に小山さんが案内してくれたのが、まるでアートのような鮮やかなグリーンの苔の商品。なんと苔も本物の苔をプリザーブド加工しているそうで、日本では希少なものだそうです。
「これ、かわいい」と美扇さんが見入ったのが、プリザーブドの苔と多肉植物が一つのボックスに入った商品です。
「こちらの多肉植物はアーティフィシャルフラワーで本物ではないのですが、苔は本物の苔を使っております」と言う小山さんに、「苔がこんなに色鮮やかになるものなんですね」と美扇さん。
さらに店内を回る美扇さん、「あっ、これもかわいいですね」と目に留まったのが、透明の筒にさまざまな色のバラが1本だけ入ったステムローズ。
「最近のお客様は、彼女さんへ贈りものをするときに、ほかのプレゼントの品物にプラスしてこういう花一輪を贈る方も多いです」という小山さんに対して、「おしゃれな彼氏多いなあ(笑)。花を贈られると大事にされている気がしてうれしい」と美扇さん。
「うわー、これもめっちゃステキ」と美扇さんが手に取ったのが、手毬のような器に入ったプリザーブドフラワー・鞠花。今日お召しになっている美しい着物にとてもよく似合っています。
「おばあちゃんが和裁の先生をしていて、和室が幼い頃の遊び場だったんですね。だから着物やお花など、日本の古き良きものに親しめるんだと思います」と美扇さん。店頭では、日本の美しさがあちこちで華やいでいました。
次に訪れたのは、フランス・パリに本店がある「LE CHOCOLAT ALAIN DUCASSE(ル・ショコラ・アラン・デュカス)」。美扇さんは以前仕事でパリを訪れたことがあるそうです。
「フランスのリヨンで『ジャパン・タッチ』という日本の文化を紹介するイベントが開催されていて、20周年記念の年に書道パフォーマンスをしたのですが、イベントの前日にパリに1泊しました」
甲冑を着ての書道パフォーマンスも最初は海外だったという世界的に活躍する美扇さんですが、書道の稽古のときによくチョコレートを食べるそうです。
「私、普段甘いものは食べないんですが、チョコレートは少し疲れたときに食べます。頭を働かせるために、70%以上のハイカカオのチョコをちょこちょこ」と美扇さん。
チョコレートはプレゼントでいただくことも多いそう。
「あまり自分では買わないような高級なチョコレートをいただくと幸せになれますよね。私ももらったらうれしいから、友達などにあげるときは、高級なのが数粒入っているものをプレゼントしたりします」
そう言って美扇さんが友達へのプレゼントにと購入したのが、ヘーゼルナッツやピスタチオなど5種類のナッツのプラリネが入ったプラリネ・ア・ランシエンヌ 詰め合わせ5個入りです。
「パッケージもかわいい。きっと喜んでくれますね」
「ル・ショコラ・アラン・デュカス」には併設したドリンクを楽しむことができるカフェスペースがあります。こちらで美扇さん、やはりパリ発の「クスミティー」と「アラン・デュカス」がコラボしたホワイトティー、ル・テ・ブランをいただきます。
「このお茶、めっちゃおいしい。ローズが入っているんですかね? 味がしっかりしていてフルーティーです」と美扇さん。アラン・デュカス氏がフランスらしさにこだわって、ホワイトティーをベースにローズとフランボワーズの香りを楽しめるお茶に仕上げています。
お茶が入ったカップ&ソーサにはピンク色の花が描かれ、これもまた今日の着物姿にぴったり。とてもステキに着こなしていますが、普段から着物で出かけることも多いのですか?
「友達とごはんを食べに行くとき、京都にお出かけするときやお正月は着物を着て出かけます。母もよく着物を着てお友達と歌舞伎を見に行ったり、梅を見に行ったりしてますね。今日のコーディネートも母がアドバイスしてくれました」
パリの雰囲気がある空間でも着物姿がとてもしっくりくる美扇さんに、大丸心斎橋店がある街、心斎橋についても聞きました。
「大丸心斎橋店の入り口脇にある名和晃平さんの作品『鳳/凰(Ho/Oh)』が大好きで、よく見に来るんですよ。作品を見たあとは、地下の食品売場に行ったり、お着物を見たり、あとはアートを見たり」
大丸心斎橋店に常設されているアートがお気に入りだという美扇さん、その百貨店で開催されるアートフェア「ART SHINSAIBASHI」へ出展されることになりましたが、その心境は?
「実は、百貨店で行われる展覧会に出展するのは初めてなんです。その第1回目に大阪の大丸心斎橋店さんから声をかけていただき、とてもうれしかったです。私は関西を拠点に活動していて、関西愛がとても強いので」
大好きな大阪で開催される「ART SHINSAIBASHI」への出展に意気込む美扇さん。ここで作品づくりをしているアトリエでの様子を少し紹介しましょう。
美扇さんのアトリエは大阪府内にあり、学生時代からここで書を書き続けています。
「イベントなどで地元にいないとき以外は基本的に毎日ここで書いてます。1日500字ぐらいは書くかな? 全然上手に書けない日もいっぱいあるんですが、やっぱり私は書道が好きで、大好きなものにはいつも触れていたいなあと思うので、稽古が辛いと思うことはあまりないですね」
4歳の頃に書道を始め、小学生、中学生、高校生と書道教室に通い続けた美扇さん。梅花女子大学では日本文化創造学科 書道コースで4年間学び修士課程も修了。書道部部長として書道パフォーマンスを始め、注目されるようになります。
大学在学中は書道研究のために中国や台湾に行き本場の書にふれたという美扇さん。中国書法にも影響を受けたそうです。国内では書の神様として有名な弘法大師(空海)の書が好きで書き続けてきたことで、今年思わぬ機会が訪れます。
「今年はお大師さまの生誕1,250年の記念すべき年なんですが、それを記念した屏風の作品とVR作品を、世界遺産である高野山・金剛峯寺に奉納させていただきました」
2021年に美扇さんが出演したドキュメンタリー番組『情熱大陸』で弘法大師の書を書く姿が映ったのがきっかけで金剛峯寺様とのご縁が生まれ、奉納につながったそう。
世界遺産やメディアをはじめ、さまざまなシーンで活躍する美扇さんですが、その礎となるのは日々の稽古。大好きな書を書くために、どのような道具を使っているのでしょうか。
「筆は、全部合わせると100本近くになります。スタメンで使うのは20本ぐらいで、あとは作品に合わせて使い分けします」
消耗品として使われる筆もありますが、大切な筆はメンテナンスしながら使い続けるそうです。
「大学に入学するときに初めて買ったちょっと高級な筆があるんですけど、それは今も使っています。ヤギの首元のやわらかい毛で、長い筆は技術がないとやわらかすぎて書けないので、買っても3年ぐらいはならし期間みたいなもの。やっと手に慣れてきて5年目ぐらいまでが筆をうまく使えるいい期間ですね。そのあとまたちょっと使いにくくなることもあるので、いいお筆は何本か買って、よく使える期間をできるだけ長くしたいですね 」
墨も、素人目にはどれも同じように見えますが、実は違いがあるようです。
「古い墨は古墨っていうんですけど、だいたい50年ぐらい経つと色がきれいになると言われています。特に、薄くて淡い文字を書くときに古墨はすごくいいんですよ」と美扇さん。
淡墨作品の際には、違う墨を混ぜて使ったり、10円玉を入れた水ですってみたり。鉄分で水がまろやかになり墨色が文字がやわらかくなるので南部鉄器でお水を入れたり。使いたい墨を磨るためにいろいろ試行錯誤をしている美扇さん。
「自己満足の世界なので、見る人はわからないかもしれませんが(笑)。でも墨の世界はすごく奥深く勉強してて楽しいですね。水でも変わるし紙でも変わるし、雨の日、晴れの日の天気や季節でも全然変わってくる。同じ線が二度と書けないように、同じ墨色って出ないのかなって思います」
筆や墨にこだわりを持ちながら、日々作品を書く美扇さん。「ART SHINSAIBASHI」への出展も楽しみですが、どのような展覧会にしたいですか?
「平面の書だけではなく立体的な作品や映像作品なども展示する予定です。あまり書に興味がないという人が見ても楽しんでいただけるものにしたいですね」
6月17日(土)と18日(日)にはライブペインティングも開催する予定で、盛りだくさんな内容が楽しみです。
アトリエから再び大丸心斎橋店へ。次に訪れたのが「@aroma(アットアロマ)」。100%天然素材にこだわる香り専門ブランドで、香りを体験しながら選べるブランド直営のコンセプトストアです。
まずは、アロマオイルブレンダーというマシンで美扇さんに合った香りをブレンドすることに。副店長の佐野由起子さんは、「美扇さんの書はすごく力強いですが、ご本人の雰囲気はやわらかい印象があるので、それに合う香りをブレンドしました」
「書を見たら、『書いたのは、おじさんだと思ってた』とよく言われます」と笑いながら、美扇さんはアロマオイルブレンダーから放たれる香りを体感します。
カモミール、ベルガモット、ペパーミントなど15種類の香りのシングルオイルを、それぞれ割合を決めてブレンドできるので、組み合わせは何通りもあります。
「美扇さんへの香りは、ラベンダー、ゼラニウム、カモミールの3つをメインにブレンドしています。やわらかな雰囲気がある一方、きっと芯も強い方なんだろうなあと思い、キリッとしたローズマリーも入れています」と佐野さん。
お客様と話をして好みを聞きながら、最終的にひとつの香りをつくっていくと説明する佐野さんに、「私は結構スッキリ系の香りが好きです」と美扇さん。
「それならば」と、グレープフルーツやミントを少しずつ増やしていく佐野さんに、美扇さんは「ほんとだ! 全然違ってくる。すごくいい匂いでトロンとしますね」。
もうひとつのディフューザーマシン・アロマシャワーテスターでは、「アットアロマ」が扱っている100近いブレンドオイルひとつひとつを体感できます。佐野さんがまずすすめてくれたのが心斎橋オリジナルオイル。
「この香りは、大丸心斎橋店の1階エントランスやラウンジで使っていただいています」という佐野さんの説明に、「そうそう。入ってきたらこの香りがしました。どこか知的な香りですね」と美扇さん。
頭痛持ちだと悩む美扇さんが注目したのが、気圧予報で頭痛などの体調管理をするアプリ「頭痛—る」と「アットアロマ」がコラボしたオリジナルアロマ。
「ラベンダーやイランイラン、ベルガモットなどフローラル調の香りを中心にブレンドした甘く柔らかな香りのナイトアロマと、ペパーミントやユーカリなどの透明感のある香りを中心に、親しみやすいグレープフルーツなどの香りをブレンドした爽やかなデイリーアロマを展開しています。うまく取り入れてリフレッシュしていただくと、寄り添ってくれる存在になると思いますよ」と佐野さん。
スッキリ系の香りが好きという美扇さんに、佐野さんがオススメしたのがOUTDOOR LIFE HERBAL MINT(期間限定商品・10ml・2,200円)。
「ハーバルミントは夏向けの香りです。ジメジメ感を吹き飛ばしてくれる爽やかな香りで、レモングラスが入っています」
「レモングラスの香り、めっちゃ好きです」と美扇さん。今日の着物や帯も梅雨から夏に向けての季節を意識しての装い。四季がある日本のよさを表現されています。
日本の伝統的なよさをしっかり理解しながら、作品ではさまざまな新しい試みをしている美扇さん。最後に、これからの夢やどのような活動をしていきたいかを聞きました。
「一番近くにある夢は、大阪万博で書道で携わったり、パフォーマンスをすること。大阪を書道(アート)で元気にしたいですね。そのほか、書道の体験ができる子供向けのワークショップもどんどんやっていきたい。いろんなところで子供たちと接するんですが、みんなすごく柔軟で、『将来書道の仕事をしたい』と言ってくれたりして、すごくうれしいんです」
これまでも、自分の夢を語ることで数々の目標や希望を達成してきた美扇さんだから、その夢やビジョンもきっと叶うに違いありません。
1990年大阪府生まれ。4歳から書道を始め、大学の頃に始めた書道パフォーマンスが注目を集め、卒業後も海外10カ国を始め国内外各地で書道パフォーマンスを披露。東京、大阪などで個展も開催し、サッカーJFA天皇杯、ゲーム「モンスターハンターライズ」、手塚治虫原作アニメ『どろろ』などの題字も手がける。MBS『情熱大陸』、NHK『にほんごであそぼ』などにテレビ出演もし、四国中央市で行われている書道パフォーマンス甲子園のアンバサダーを2022年からつとめている。弘法大師御誕生1250年記念大法会が開催される今年、世界遺産高野山 金剛峯寺に屏風作品『遍照』とVR作品『般若心経』を奉納。伝統と革新をモットーに大好きな書道を通して新しい書表現に挑戦し続けている。
写真/岡本佳樹、コーダマサヒロ 取材・文・編集/蔵 均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 制作・編集/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
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