FRAGRANCE
FEATURE
南米発フレグランスブランド「FUEGUIA 1833」の
世界最大級のギャラリーが大丸心斎橋店にオープン!
NEW OPEN REPORT
大丸心斎橋店の注目トピックスをさまざまなアプローチで取り上げていく「FEATURE」。今回は、3月14日(金)に大丸心斎橋店本館4階にオープンした、アルゼンチン・ブエノスアイレスで生まれたフレグランスブランド「FUEGUIA 1833(フエギア イチハチサンサン」をフィーチャー。西日本初にして世界最大級の店舗を取材し、ブランドの創業者であり、植物学者、香りのアーティストであるジュリアン・ベデルさんにインタビューを行いました。

日本で4店舗目のギャラリーは、
世界最大級でドラマティックな世界。
「フエギア1833」は、2010年にジュリアン・ベデル氏がブエノスアイレスに設立した香りのラボラトリー。植物学者でもあるジュリアンさんが、科学的な研究と芸術的な探究を融合させた香水の創作をしています。現在は、イタリアのミラノ郊外、チニゼッロに拠点を置き、3,000種類以上の植物を育て、約130種類の香水を生産しています。
日本でのギャラリーは、東京の六本木、銀座、麻布台に次いで大丸心斎橋店が4店舗目。西日本初出店にして、世界最大級の店舗面積を誇ります。誕生したばかりのギャラリーを訪れると、まずはアールを描きながら並ぶ無数のパフュームの美しさに心奪われ、百貨店内とは思えないような独創的な空間が目を惹きます。オープンを機に来阪したジュリアン・ベデル氏に、ブランドのこと、大阪ギャラリーのこと、香りのことについて話を聞きました。

ジュリアン・ベデル氏が来日、
インタビューを敢行。
——大阪ギャラリーのオープンおめでとうございます。百貨店の中の店舗としては、ちょっと今まで見たこともないようなすばらしい空間ですね。
「ありがとうございます。そう言っていただけるとうれしいです」
——これまであった東京の3店舗ともまた違う雰囲気です。コンセプトや内装など店づくりもジュリアンさんが手がけているということですが、大阪ギャラリーをつくるにあたり、どのようなことを考えましたか?
「まずマテリアルとしては、南米と京都の文化をミックスした土壁、テラコッタ、火山灰などを使っています。お客様がリラックスして会話できる場所をつくりたかったので、家があって部屋があって、その外には庭があって。インサイドとアウトサイドを行き交うウェーブがあればいいなと思いました」

——なるほど。まさに、店のフロントに石が並べられていて、その脇から入ると庭があり、さらに奥に進むと家に入る感覚になりました。今、お話をしているこの場所が、家の中の部屋ということですね。
「そうです。百貨店は不特定多数のお客様がいらっしゃる場所。そういうゲストの方々を招待して、リラックスしてもらえる空間を提供することが大切なので、ミラノにある私の自宅の部屋と同じように、自分でつくったギターを飾り、『カッシーナ』のソファ『マラルンガ』を置いています」
——アウトサイドに目を向けると、今、この部屋からも見える星空がとてもリアルで美しく、本当に夜空を眺めているような気になります。
「それはうれしいですね。私たちのブランド名は、イギリスの探検家に連れ去られたパタゴニアの先住民の少女、フエギア・バスケットが、『種の起源』で有名な自然科学者、チャールズ・ダーウィンによって1833年に故郷に帰還したという実話にインスピレーションを受けています。この空は、フエギアがパタゴニアに帰ってきた日の星座なんです」
——この星空にもブランドのストーリーが込められているのですね。星座の再現力も素晴らしい。イギリスから故郷に戻ったフエギアが、どんな想いでこの星空を眺めたのか、想像すると、ちょっとグッとくるものがありますね。
「はい。この美しい星空の演出は日本でしか実現しなかったでしょうね。日本の技術はすばらしいです」

——パタゴニアに実在した先住民の少女のストーリーをブランド名にしたことからもわかるように、「フエギア1833」の香りは、南米の大地に育つ植物やそれを守護する先住民へのリスペクトをもとにつくられているのですよね? 植物学者でもあるジュリアンさんは、科学的なアプローチをしながら、南米の地の文化や物語を香りに織り込んでいますが、どのようなプロセスを経て香りをつくっているのですか?
「まずは、植物と向き合うところから始めます。もともと調香師になりたいと思っていたわけではなく、植物が好きで、そのすばらしさを伝えるためにどうするかということを考えていったところ、香りの表現に行きついたのです」
——多くの植物と対話することから始めて、最終的にフレグランスへと昇華するのはどのようなときですか?

「私は音楽もつくるのですが、調香する時の考え方というのは、コンポジション(=作曲)と似ていると思うのです。音楽がどういうふうに生まれるかというと、音楽をつくる人のそのときの気持ちがまずあって、一方でいろんな音楽を聴いてきた経験がある。それがだんだん交差していったときに、ある種のタイミング、メロディや歌詞などがすべてひとつになる瞬間がある。それはどんなアーティストにとっても、ものすごくミステリアスで魔法のような瞬間です。それがいい音楽か出来がよくない音楽かはわからないですし、香りも必ずうまくいくわけではないけれど、常にリサーチしたり、新しい技術を追求していくことによって、ここに並んでいるフレグランスの1本1本が生まれていきます」

大阪ギャラリーで先行発売の
『Flor de Hueso』に注目を。
——そのようにして生まれた最新の香りが、今回大阪ギャラリーで先行発売された『Flor de Hueso(フロール デ ウエソ)』ですね。これはどのような香りですか?
「どうぞ、まずは香りを試してみてください。この新作は、チューベローズという官能的な香りの白い花をトップノートに使っています。チューベローズは香りの世界において伝統的な香りのひとつですが、ほかの香りとミックスして使われることが多く、そのほとんどが人工香料なんです。『Flor de Hueso』ではメキシコ産のチューベローズをできるだけ分子自体をいじらないように気化させ、植物が本来持っている香りを抽出しています。そこにメキシコ産バニラを重ね、仕上げには樹液であるショチコパルを加えています」

——すごくやわらかな香りですね。ジュリアンさん自身は、チューベローズと出会ったのはいつごろだったんですか?
「私の母が好きで、私が小さいときにも、アルゼンチンの家でよく使っていました。でも人工香料だったからか、そのときはちょっと匂いが重くて、あまり好きじゃなかった(笑)」
——最初はあまりいい出会いではなかった? 小さい頃好きじゃなかった匂いを、今このように魅惑的な香りにできたのは、なぜなんでしょうね?
「私は植物学者で、ずっと植物と会話をしています。だから同じ白い花でも、見れば見るほどさまざまな顔を持っていることを発見できる。小さい頃はあまり好きじゃなかった香りでも、探究することで面白さを見い出せます。まるで探索隊の人たちが北極園で長い間生活していると、同じように見える真っ白な大陸にも、ちょっとずつ違う白を発見していって、自分たちなりに地形を把握していくように…」
日々の暮らしの中で、
着替えるように香りを楽しむ。
——長く植物と向き合うことで見えてくるものがあるということですね。ところで、日本は海外の人たちに比べて、香りを楽しむという文化がまだまだ根付いていない気もします。来日も多く、日本のことを熟知しているジュリアンさんは、どう感じてらっしゃいますか?
「確かに、日本の人々は欧米の人々ほど香りに慣れ親しんでいるとは言えないかもしれません。ただ日本人は、世界的にもすごく繊細な感度を持っている。私のように南米の野生の自然の中で育ってきた人たちは、当然自然に対する理解は深いかもしれないですが、日本人は、自然をとらえて消化する力がすばらしい。私の母は川端康成とか紫式部が好きなんですが、日本の小説や映画を見ていると、日本人はこんなふうに自然をとらえことができるんだと驚かされます。だから自然から生まれた香りを楽しむことも、さらにいろいろな可能性を持っているんじゃないですかね」

——日本人らしい香りの楽しみ方というのはありそうですね。日本と南米の自然や植物の違いをどのように感じますか?
「日本は、自然環境が安定していて四季が豊か。それに対して南米は寒暖の差や、乾燥や湿気など、すごく多様性がある。それゆえ野生的な植物が多かったり、植物が育つエネルギーがあります。だから『フエギア1833』のフレグランスでもよく使っていますね。逆に日本の植物は、スギ、ヒノキなどはものすごく繊細な分子の動きをするんです。そこに大きな違いがあります。『フエギア1833』の製品でも日本の植物を使っている香りもありますけど、面白いことに、日本人が好きとは限らないんです」

——それは意外ですね。もちろん人によって違いはあると思うのですが、日本人が好きな香りの傾向などはあるでしょうか。
「南米やヨーロッパの人って、自分のスタイルがあって、私はこの香りだと決めている人が多い。一方日本人のお客さんは、その日の気分と向き合って、その時に合うような香りのアプローチをしている人が多い気がしますね。そのスタイルは、自分の考え方に合っています。私もいつも同じものを使っているわけじゃないので」

——そうなんですか。日によって使う香りは違うんですか?
「はい。洋服も毎日着替えるけど、香水も、仕事に集中したい日、リラックスして休みを楽しみたい日など、日によって付け替えていいと思っています。それから、香水の世界で、数年前から“寝香水”という言葉がありまして。香水というと、出かけるときなどにつけるイメージがあって、なぜ寝る時につける?と思われるかもしれませんが、1日の最後、自分に向き合う時間に香りを使うのはとてもいい。ライフスタイルの中のそのときそのときで、自分が好きな香りが寄り添ってくれることで、人生がものすごく豊かになると思います」

——香りで人生がより豊かになりそうですね。最後に、大丸心斎橋店のお客様に、この大阪ギャラリーの楽しみかたを教えてください。
「大丸心斎橋店という伝統がありすばらしい百貨店にギャラリーを持てたことは、とてもうれしいことです。そして、周辺地域も含めてこれだけ充実したショッピングエリアはなかなかなくて、私の母も今回来阪しましたが、『東京より楽しいわ』と言ってくれています。ここでは『フエギア1833』のフルコレクションを置いているので、空間と時間と香りを楽しんでほしい。ここで、植物に感謝をして、香りに感謝することを体験してほしいですね」

「フエギア1833」大阪ギャラリーでは、スタッフがゲストひとりひとりの話を聞きながら、その人に合ったパーソナルな香りを発見するためのアドバイスをしてくれます。ゆっくりとくつろげる部屋で、鳥のさえずりを聞き、星空を眺めながら、自分らしい香りをぜひ見つけてください。
※今回掲載の内容は2025年4月10日現在の情報を掲載しています。
写真/エレファント・タカ 取材・文・編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 編集・プロデュース/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
MAGAZINE / NEW OPEN REPORT
南米発フレグランスブランド「FUEGUIA 1833」の世界最大級のギャラリーが大丸心斎橋店にオープン!
NEW OPEN REPORT
FEATURE
FOOD
それぞれの個性が際立つ、
惣菜の新店をナビゲート!
NEW OPEN REPORT
FEATURE
WATCHES
時計売場が、より広く、
「見やすく、魅力的に。
NEW OPEN REPORT