
山田 真史 JAPAN AX PROJECT株式会社
北海道の文化として 壁画アートの価値を創出し 新たな人流を生み出す
『2025年現在、北海道新幹線の札幌駅開業に向けた再開発工事が行われている札幌駅南口エリア。みなさんは、工事が進む現場の仮囲いに描かれた、国内最大級のミューラル(壁画)をご覧になりましたか?この『SAPPORO XMURAL』プロジェクトを実現させたのが、今回ご紹介する山田 真史さんです。「再開発が進む札幌駅エリアの無機質な仮囲いを活用し、アートの力で活性化させたい」という山田さんの思いに賛同し、大丸札幌店は現在進行中の『SAPPORO XMURAL スナップコンテスト』に協賛しています。前例のない壁画アートの取り組みについて、JAPAN AX PROJECT株式会社 山田 真史さんにお聞きしました。
取材者:大丸札幌店 船岡 未弥子
山田 真史 やまだ まさふみ2>
JAPAN AX PROJECT株式会社 代表取締役社長
北海道札幌市出身、41歳。2009年リクルートカーセンサー入社、2015年リクルートマーケティングパートナーズ出向。2018年グルーコード株式会社執行役員、2021年monocla株式会社代表取締役社長を経て、2022年より現職。

新しい街を造る工事現場の仮囲いに
壁画アートでワクワクをプラス
大丸札幌店4階のステラプレイス連絡口に、高さ1.8m、横約3.6mの大きなキャンバスが現れました。ビニール袋の簡易スモックを被り、下絵のないキャンバスと向き合って思い思いの絵を描く子どもたちの顔は真剣そのもの!最初は遠慮がちでも、次第に大胆になっていく姿が印象的です。
これは、2025年4月5日に開催された「壁画制作体験アートワークショップ」のひとコマ。一人ひとりが自由に絵を描いて、みんなで作品を完成させる企画には、子どもから大人まで多くの方が参加してくださいました。

「思うままに自由に描いていいんです。正解を求めて『きれいに描かなくては』と考えがちだからこそ、ぜひ、大人の方にも参加していただきたいです」と話すのは山田真史さん。北海道を中心に、全国各地でミューラル(壁画)アートプロジェクトを展開しているJAPAN AX PROJECT株式会社の代表取締役社長です。

ところでみなさんは、2024年9月、再開発が進む札幌駅南口エリア(北5条西1丁目)に現れた、巨大なミューラルアートをご存じでしょうか。幅約100m、高さ約2.8mの仮囲いの全面をキャンバスにして、国内外で活躍する4人の壁画アーティストが描く『SAPPORO XMURAL』を率いたのが山田さんです。
「この規模の巨大アートを手がけるのは初めての試みでした。札幌市と札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発組合へ企画をご提案したものの、この規模の壁画を、札幌駅横というとてもパブリックな場所で制作することが日本では珍しいんです」
今ではすっかり街並みの一部に馴染んだ壁画を見渡しながら、山田さんは発案当時を思い返します。
仮囲いの活用という課題がありながらも、前例がない公共エリアでの壁画制作は手探りの挑戦でした。札幌市をはじめ、警察への道路使用許可申請まで各所との調整を重ねながら、多くの方の協力と応援を得てなんとか段取りは完了。ひと、ゆき、みどりをキーワードにしたラフ案が、描くアーティスト4名によって作られました。

アーティストが現場で描く壁画は
制作過程を市民と共有できるアート
北海道の四季の移り変わりの中で遊ぶ野生動物たちが描かれた壁画は、街並み中で唯一、体温を感じられるような空間です。
垂直、水平で成り立つビル群と、フリーハンドで描かれたタッチとのコントラスト。雪解けとともに壁画に付いた砂を蹴散らすように走るエゾリスや、リアルな雲と繋がっていくように描かれた真っ白な雲。ふと見上げると、都会の真ん中にある工事現場の頭上には、ぽっかりと大きな空が開けていました。
「『SAPPORO XMURAL』のおもしろさのひとつは、3週間という制作工程の時間を街の方々と共有できることでした。毎日見に来てくれて、撮った写真を見せてくださるご夫婦。オーバーアクションで喜んでくれる外国人旅行者。女の子の希望で、描くシマエナガの数が予定よりも増えました。暑さが残る9月の屋外作業は体力勝負でしたが、人との交流から生まれた作品になったと思います」。
SAPPORO XMURAL 制作ムービー:https://www.youtube.com/watch?v=EkOyapRx_7A

自宅の壁画を制作した時の思い出が
ミューラルアートに取り組む原点に
山田さんと壁画の出会いは、かつて携わっていた住宅系のWebサービスの会社で、家の壁に直接絵を描くサービスを思いついたことがきっかけでした。自宅の壁には、家族4人をイメージした大輪の花が描かれているそうです。
「多くの絵は、誰がどのように描いているか知りません。我が家の壁画を制作する中でアーティストと会話し、お互いを理解しながら作品づくりを進めた時間は思い出深く、作品への愛着が増すことを実感したんです」。
まだ小さかった山田さんの子どもも色塗りに参加。作品が完成してアーティストが帰る時には、すっかりファンになった娘さんが大泣きしたのだとか。
山田さんが壁画に取り組む原点は、作品づくりを家族で共有した忘れられない思い出にあります。目指しているのは、デジタルによる効率化=DXによって生まれた時間を、手を動かす非効率な作業から生まれる文化創造に充て、DXとAX(アーティスティック・トランスフォーメーション)の両輪で回していくこと。そして、壁画という手描きのアートをより多くの人に体感してもらい、さまざまな価値を世の中に提供していくことです。

そんな思いが凝縮している『SAPPORO XMURAL』は、2025年の春を迎えて新企画を実施中!現在開催中の『SAPPORO XMURALスナップコンテスト』です。
「『SAPPORO XMURAL』は、写真一枚で全体像を一発撮りできない巨大なアート。自分で写真を撮りながら、みなさんはどのように作品を見てくだっているのか興味を持ちました」。撮る行為もアート鑑賞だと、山田さんはコンテストに込めた思いを語ります。
記事冒頭の「壁画制作体験ワークショップ」は、コンテスト開催を記念したもの。完成した作品は、2025年5月20日まで1階正面玄関に展示されます。応募するスナップ写真撮影におでかけの際に、こちらもあわせてご覧ください!