~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

2021/6/21~7/6[

身土不二、
京の地産を食す。

身土不二(しんどふじ)とは人の身体と土地は切り離せず、地のもんが健康によいという考え方です。
厳しい暑さも目前。一年の後半が健やかであるように願いをこめ、身近な旬や伝統的な食材を楽しみましょう。

2021/06/25

古くから君臨する、
なすの女王。

100年ほど前に上賀茂や西賀茂で栽培されるようになって、その名がついたと言われる賀茂なす。古くは江戸時代初期の文献「雍州府志(ようしゅうふし)」に“なすは種々あれども、丸く大きいものが風味絶佳”という旨が記されています。丸みを帯びた優雅な形、艶やかで高貴な紫色。肉質はしっかり締まり、しかもなめらか。女王と呼ぶにふさわしい風格と味わいです。京の伝統野菜のひとつとして現在は府内で広く栽培されています。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈天ぷら八坂圓堂〉

薄衣でさっくり揚げた、
京都の夏の風物詩。

油との相性がいいことで知られる賀茂なす。緻密な果肉をもち、揚げても油を吸い過ぎることがないので歯ごたえがよく、油が引き立てる芳醇な香りとうまみを存分に味わえます。伏見とうがらしも古くから栽培されてきた京の伝統野菜のひとつ。辛みがなく、爽やかな風味と甘みがあり、伏見甘長とうがらしや青トといった別名とともに親しまれています。このほか、おくら、ズッキーニなどの夏野菜、そして京都の夏に欠かせない鱧(はも)も登場。季節の恵みの数々をたっぷりと。

〈天ぷら八坂圓堂〉

天ぷら各種(1個)
賀茂なす 税込200円
伏見とうがらし 税込120円
はも 税込450円 など
※時期により価格が変動します。※食材の入荷状況により販売を休止する場合があります。

〈京都吉兆〉
〈京都吉兆〉
 
 
 

賀茂なすとも相性よし、
和食に合うオリーブオイル。

京都𠮷兆 総料理長の徳岡邦夫がイタリアへ赴き、老舗オリーブオイルメーカー アルドイノ社でブレンドした京都𠮷兆オリジナルのオリーブオイルです。オリーブの品種を厳選し、種を抜き取ってから抽出する特別製法により、えぐみや苦味がなく、まろやかで繊細な味わい。日本の食材と相性がよく、醤油や生姜、ゆず、胡麻などと組み合わせれば、新感覚の調味料としてバリエーション豊かに楽しめます。写真の料理は賀茂なすのお刺身です。くし切りにして皮をむき、オリーブオイルと塩少々をかけ、ラップに包んで電子レンジで加熱後(賀茂なす1個につき600Wで4分が目安)、ラップのまま水に放して冷やせば、瑞々しい味わいに。お好みでオリーブオイルを足し、お醤油や薬味とともにどうぞ。

 

〈京都𠮷兆〉

エキストラヴァージン オリーブオイル(92g)税込1,620円

〈二傳〉

小鮎の美しい姿そのまま、
南蛮漬けでさっぱりと。

今が旬の小鮎を揚げ、ほどよく酸味のきいた南蛮漬けに。頭から尾まで骨や内臓も丸ごと食べられる小鮎は、カルシウムやたんぱく質、ビタミンA・E・B12などを含みます。酢は食欲を促し、カルシウムの吸収率を高める働きがあります。南蛮漬けは室町時代から江戸時代にかけて南蛮文化ともに伝来した南蛮料理のひとつ、エスカベシュ(マリネの一種)が原型だと言われていますが、今ではすっかり日本の味として欠かせない存在に。二傳の南蛮漬けは酸味がおだやかで、小鮎の姿が美しく、添え野菜にも丁寧な心配りが感じられます。ひんやり冷やして、さっぱりと。

〈二傳〉

惣菜など各種[2種]税込1,080円から
[3種]税込1,620円から
[4種]税込2,160円から
小鮎の南蛮漬け(1人前)税込540円相当
※2パック以上での販売のため、単品販売はしておりません。

〈下鴨茶寮〉

千年以上の歴史をもつ湯葉を
とろりと上品なあんかけに。

京都の名産のひとつとして知られる湯葉。約1200年前に最澄が中国から持ち帰って延暦寺に伝えたのが日本最初の湯葉だと言われています。その後、比叡山麓の京都でも精進料理や懐石料理といった食文化とともに育まれてきました。淡白でくせがなく、奥深いうまみをもつ湯葉は、炊いたり焼いたり揚げたり、幅広い料理に利用されています。こちらは、湯葉と油揚げ、しいたけ煮に、あんをからめた丼です。だしの風味を生かした、あっさり上品な味わいと、とろりとした口当たり。添付のわさび、ぶぶあられをアクセントにしても美味です。

〈下鴨茶寮〉

料亭のあんかけ丼 湯葉(1人前)税込972円

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。