~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

2021/7/7~7/21[

祇園祭といえば鱧祭り。

梅雨の雨を飲んでおいしくなると言われる鱧は、脂がのって今がまさに食べ頃! 京都の夏に欠かせないご馳走です。
祇園囃子に思いを馳せ、来年の山鉾巡行を願いながら、存分に味わい尽くしましょう。

2021/07/09

骨切り十年と言われる包丁技。

皮一枚を残し、わずか一寸(約3cm)のあいだに24回とも26回とも言われる包丁目を入れる、鱧の骨切り。並外れた生命力の鱧は、その昔、真夏にも遠い海から京都へ運べる貴重な魚でしたが、呆れるほどに小骨だらけ。抜くことも、そのまま食べることもできず、小骨を細かく断ち切る技が培われました。「骨切り十年」という言葉があり、熟達した料理人の手にかかると、どこに骨が消えたのかと不思議になるほど、ふっくら柔らかく。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈いづう〉

隅々まで一流の技が息づく、
夏限定の名物 鱧姿寿司。

大きく育った鱧は、体を「つ」の字に曲げないとトロ箱(魚の運搬箱)に納まらないことから、つの字鱧と呼ばれます。肥えた鱧を選び、熟練した職人が骨切りし、串を打って白焼きしてから、醤油を塗って焼き重ねる。鱧の選び方、切り方、焼き加減。当たり前のようで難しい三拍子が見事にそろってこそ、ふっくら肉厚で美しく、他を圧倒する風格と味わいが生まれます。いづうではお寿司の包装に使われる、木版画の掛け紙も楽しみのひとつ。京都の景趣を描いた絵柄が季節がわりで6種あり、7月は「祇園祭」の掛け紙です。

〈いづう〉

鱧姿寿司(1本、2人前)税込14,904円
(1人前、6貫)税込7,452円

〈二傳〉
〈二傳〉
〈二傳〉
〈二傳〉
 
 
 

さまざまな趣向や創意で、
余すことなく鱧三昧。

身の長い鱧は、上半身にあたるあたりは肉厚で、尾の近くは肉が薄いかわりに煮るといい"だし"が出ます。二傳では料理によって部位を使い分けていて、肉厚のところを鱧寿司や鱧おとしに、尾のほうはゼリー寄せにしました。写真1枚目・2枚目は、ほのかな山椒風味が味わいを引き立てる鱧寿司。写真3枚目は、これぞ京都の正統というべき、ふわりと純白の花が咲いたような鱧おとし。そして写真4枚目は、鱧煮に夏野菜や香味野菜を取り合わせ、鱧のだしを生かしたゼリー寄せ。ごまだれを添え、フレンチの前菜さながらの華やかさです。

 

〈二傳〉

鱧寿司・波(1包、4貫)税込2,160円
惣菜など各種[2種]税込1,080円から [3種]税込1,620円から [4種]税込2,160円から
鱧おとし(1人前)税込1,080円相当
鱧と夏野菜のゼリー寄せ(1人前)税込540円相当
※惣菜は2パック以上での販売のため、単品販売はしておりません。
※鱧おとしを含めると、[2種]税込1,620円から [3種]税込2,160円から [4種]税込2,700円から となります。

〈京都吉兆〉
〈京都吉兆〉
 
 
 

ハレのご馳走にふさわしい
気品ある姿と味わい。

しっかりと脂がのり、身が引き締った上質な国産鱧を京都𠮷兆特製のたれで焼きあげ、お米はHANA𠮷兆の懐石でも使用している福岡産ひのひかり。口に運べば、鱧の香ばしさとご飯の甘みが一体となり、なんとも言えない味わいです。木箱に納められた品格ある佇まい、涼やかで風趣のある包み紙は、特別な日のご馳走にはもちろん、夏のご挨拶にも喜ばれます。召し上がる際に電子レンジで軽く温めると(耐熱皿に移して500Wで2~3分が目安)、ふっくら艶やかに。

〈京都𠮷兆〉

鱧寿司 木箱(1本10貫)税込6,480円
●予約販売のみ/2日前までにご予約ください。
(お渡しは11時以降、水曜日はお渡しできません。)

〈天ぷら八坂圓堂〉
〈天ぷら八坂圓堂〉
 
 
 

みずみずしい鱧を
職人の技でほろり柔らかく。

柔らかな身が口の中でほろりとほどける鱧の天ぷら。さっくりとした薄衣が包み、梅肉をつけると淡泊で上品な味わいが引き立ちます。色鮮やかな菊菜のかき揚げや紅しょうが、とろり濃厚なアボカドの天ぷらなどと一緒にどうぞ。そして、もう一品は、鱧の天ぷらと鱧の山椒焼きをたっぷり贅沢にのせた丼。二色のコントラストが目にも舌にも幸せを運び、みょうがや絹さや、木の芽や穂紫蘇が爽やかな香りと彩りを添えます。

〈天ぷら八坂圓堂〉

天ぷら各種(1個)
はも 税込450円
菊菜のかき揚げ 税込160円
紅しょうが 税込120円
アボカド 税込120円 など
はも二色丼 税込3,100円

〈下鴨茶寮〉

はんなり美しく、
折詰に広がる京都の夏風情。

どこから箸をつけようかと、目うつりするのも楽しみのうち。左上の升目には、色とりどりの夏野菜や海老真丈、一口にしん昆布巻などの冷製炊き合わせ。右上には、魚そうめんのジュレがけ、ホッキ貝のサラダ、青唐ちりめん、合鴨くんせい、帆立など。そして、右下は、白い花々のような鱧おとしに、梅だれやみょうが、蛇腹きゅうりを添えて。実にバラエティー豊かな味わいが、夏らしく京都らしい風情で彩りよく。

〈下鴨茶寮〉

鱧と夏野菜の季節御膳(1人前)税込3,240円

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。